表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
10/10

10話 フユキの悩みその2

ケミーさんが大炎上した。


それも前回とは比にもならい程の大炎上だ。


何があったかを少し調べてみると、つい先日発掘された過去のアカウントにて、軽度とはいえ犯罪を犯していたと言うことが発信されており、今休止中のケミーさんはネットの中では犯罪者として祭り上げられていたのだった。


結局その件では何もすることができず、ケミーさんはvtuberを引退する事になってしまい、更にはケミーさんと仲が良かった黒斗くんの初配信は荒らされまくり、それに対して黒斗くんがキレた事により、1人は同期を置いて1人で上に、1人はクビで最後の1人は触れづらい人物になってしまい、私達五期生はめちゃくちゃになってしまった。


そして黒斗くんが初配信にてガチギレした事により、元いた登録者も激減してそれは企業勢としては、失敗と言っても良いスタートを切る事になってしまった。


ただそれでも、同期のためにあそこまで真剣に怒った姿を見ると、何か少しスッキリした気持ちと共に、それ以上の後悔や自分が責められている様な感じがした。



その後も黒斗くんは人気回復のために色々とやっている様だが、それもあまり上手くいっておらず、一度姫花ちゃんから頼まれて、2人で黒斗くんの人気を回復させてあげようと、コラボを誘ってみたのだが何故か断られてしまい、正直何で黒斗くんが私達の様な成功者の誘いを断ったのかが全くもって理解できなかった。


だが何故か後日姫花ちゃんとはコラボしており、もしや前回断ったのは、登録者数が20万人しかいない私が邪魔だったのかと少し邪推してしまった。


そしてそのコラボを機に黒斗くんが少し、ほんの少しずつだが実力で登録者を伸ばして来て、そこで一瞬ケミーさんの事を思い出した。


「いや、まさか……」


そう思ったのも束の間、黒斗くんは着実に登録者数を稼いでいき、つい先日10万人耐久配信を行い、その結果大量のスパチャと登録者を得る事に成功した。


出だしを盛大に失敗した黒斗くんでさえ、こんな短期間に登録者を1万人から10万人の10倍にまで伸ばし、姫花ちゃんに至っては120万人と言う私の登録者数の5倍はするであろう数にまでに至っていた。


それに比べて私はと言うと、初動で20万人もの登録者を得る事に成功はしたが、それからの伸びがあまり良くなく、登録者数は25万人から上がらずにいた。


流石にこれには危機感を覚え、何かやらなくてはと思い、今や大人気vtuberの1人となった姫花ちゃんの真似をして先輩とのコラボをやってみるが上手くいかず、それならとケミーさんの真似でゲームでの解説をネット知識やってみるがそれも上手くいかず、最後の手段として黒斗くんの真似で耐久配信をやってみるが特にこれが1番上手くいかず、やってる自分も辛く見ているリスナーもキツいという、誰も喜ばない配信になってしまった。


他にもネットで色々と調べてみるが良い案はなく、あまり話したことはなかったが私達五期生のマネージャーに相談してみた所、ASMRを勧められ機材を運営さんに借りやってみた所、その配信の再生回数は他の配信に比べて劇的に増えたが、それだけでチャンネル登録には繋がらず、恥を捨てて姫花ちゃんに人気の秘訣を聞きましたが、話したく無かったのか「姫そう言うのわかんなーい」とはぐらかされてしまった。


そうしたら色々な試行錯誤のせいで、リスナーは増えるどころか少しずつ減っていってしまい、最初期からフユキ推しだと言っていた人が推し変したところを見た時は、ショックでその日は配信ができないほどだった。


そんな感じでそれから今までやって来ていた毎日配信も続けることができなくなり、配信頻度は2日に1回、3日に1回と徐々に徐々に減っていき、それに比例する様に配信を見に来てくれる人数も目に見えて減って来た。



「私何のためにvtuberやってるんだろう?もうvtuberなんか辞めようかな……」


そうした色々があった結果、今私は電気も付けず1人暗い部屋の中でそう呟くのだった。


そんな時、仕事用のスマホから静まり返った部屋に着信音が鳴り響いた。


最初は最近配信をしていないことを運営さんから注意されるものだと思い、自然と着信音が鳴り止むまで待ってみるが、その着信音は切れてもすぐに何度も掛け直されて来て、初めに音が鳴り始めてから30分経った頃、流石にその音が鬱陶しく感じだフユキは、スマホを勢いよく取りその電話に出た。


するとそのスマホの先から聞こえた声は、運営さんの声ではなくもっと幼い男性、そう私の同期の黒斗くんその人だった。


「どうして?」


私がそう思ってしまうのも仕方と思う。

何故なら私と黒斗くんは同期という割にはほとんど絡んだことがなく、正直裏でしっかりと話した時間よりも、黒斗くんの10万人耐久配信内での凸待ちに参加した時間の方が長く感じてしまうほどに、関係が薄いのだ。


だから私は今何故このタイミングで彼が電話して来たのかわからずそう思ったのだが、それが実は声に出ていたらしく、私のその疑問をなんの迷いもなく彼は答えた。


「どうして?って、そりゃ同期が困ってるって聞いたら助けに来ますよね?普通」


そなのかな?と思いつつも、どうして私が困っていることを、黒斗くんが知っているのだ?と思い聞いてみると、先ほどまでのハキハキとした話し方とは打って変わって、歯切れが悪くなりどうしたものかと悩み始めた。


「いや、それはその……。その怒らないで欲しいんですけど、実はフユキさんが困ってると、姫花さんから相談されまして、で、でもですね姫花さんは本当にフユキさんを心配している様子で、不用意に人にベラベラと話す人じゃ無いんです。そこは信じてください」


なるほどそういうことだったのかと、納得ができたのと同時に、そんなこといちいち心配しなくても私も姫花ちゃんとは交友があるのだから、それくらいわかっているので、言わなくても良いと思った。


それを黒斗くんに伝えると、黒斗くんはそれはそうでしたね、とすぐに納得して話を続けた。


「あの、それで俺が聞いた話だと、フユキさんのチャンネルが伸び悩んでいるという話だったんですけど、それは間違い無いですよね?」


そう聞かれて正直に答えるかどうか少し悩んだ後に、どうせバレているのなら話してもなんの問題もないと思い、私は黒斗くんがしたその質問を静かに肯定した。


「そうでしたか。正直俺から見ても普通に伸びていってると思うのですが、フユキさん的にはもっと劇的に登録者や同接数を伸ばしたいってことですか?」

「それは……」

「とは言っても、俺が知ってるのびる方法もほとんど最近のフユキさんがやってますから、もし本当に劇的に増やしたいとなると、清楚以外の武器をフユキさん自信が新たに手に入れないと難しいんですよね」

「新しい武器?」

「ええ、例えば俺の武器で言えば、配信で結構なんでも言うところとか、最近できた男魂集も武器ですね。そして何よりも1番は耐久配信ですし、姫花さんなら、場をコントロールするって言う持ち前の大きすぎる才能ですね。それに比べてフユキさんの武器って言ってしまえば、今のところ清楚だって言うことしかないと感じるんですよね。最近はフユキさんも新しい自分なりの武器を手に入れようと頑張ってらしたので、こんな話今更かもしれませんがね」


その話を聞いた私の感想は、武器?何それ?正直これだった。一生懸命私の為に話してくれている様だが、いきなり武器の話を持ち出されてもよくわからないし、それにそんなことネットに書いてなかったし、正直私は黒斗くんが言ってくれたことのほとんどを理解することができていなかった。


それを察したのか、その後何度か黒斗くんに説明された結果、なんとなく私の名前を聞いた時に思い浮かぶものと言われて、少し理解することができた。


そしてそれが私には清楚しか無いらしく、それ一つだけだと弱く集客ができないそうだ。


でも他にも清楚売りをしているvtuberもいて、その人達は成功していることを伝えると、黒斗くんはすごく言いづらそうに話し始めた。


「そうですね、清楚売りをしているvtuberはフユキさんの言う通り多くいて、それで成功しているでしょう。でもその人達にはフユキさんには持っていない自分なりの武器を持っていて、他の清楚系と差別化してるんですよ。それに対してフユキさんは清楚1つで戦いに挑んでいるですよ。先程フユキさんは言いましたよね、清楚売りをしているvtuberが多いと、そうです多いんです。その幾つもの清楚の中から自分を選んでもらう為には、他とは違うところを見せないといけないんです。出ないとまず目にさえ付きませんからね」

「そうだったのですね……」


正直そんな感想しか出なかった。


だってそうだろう。今私が言われたことは言ってしまえば、努力が足りないと言うことだろう。


そして現に私は1番有名なvtuberグループに入れば自然と人気になると思って、特に何もしてこなかったのだから。


その後も色々と黒斗くんに説明されたり、こうしてみてはなどの意見をもらったが、正直あまり頭に入ってはこなかった。


だって他の人たちは自分たちで、何とか考えたvtuber像で勝負しているのに対して、今の私はどうだ、同期のそれも年下の男の子に、手取り足取り説明されて、自分でロクな案も出さずに、黒斗くんが一生懸命考えた案を自分の物にしようとしているだけの、人間として最悪なことをやっている卑しい女だ。



結果から言うと、結局良い案は見つかることがなかった。


そして今まで頑張ってくれた黒斗くんは、こちらがいくら感謝しても足りないぐらい色々やってくれたのに、何故か私の解決策を見出せなかった事に、私に頭を下げて来た。


その時私はびっくりするほど、自分の事が嫌いになりそうになった。


「あ、そういえば何だけど、フユキさんってどうしてvtuberになろうとしたんですか?もし好きな先輩とかがいるんだったら、その人の推しってことを公表して、その人のファン兼vtuberってな感じで、ちょっとは見てくれる人増えると思うんだけど。他にも好きな事とかあったら、その事について勉強してみたりとかしてみても良いんじゃ無いかな?」

「好きな事……」

「そうそう、やっぱり人って何かだとしそうにやってるの見たら、釣られて楽しくなっちゃうものだし、その俺が見た感じ、俺個人の感想なんだけど、ここ最近のフユキさんってあんまり配信が楽しく無いのかな?ってのがちょっと伝わって来ちゃって。あ、ごめん流石に失礼だったよね。本当にごめん……」


私がvtuberになった理由……それは、


「……お酒」

「ん?お酒?」


いきなり言われた事に驚く黒斗くんの声が聞こえ、そこで私はやってしまったと思った。だが言ってしまったのは仕方が無いと思い、私がvtuberになろうとした理由を黒斗くんに正直に話した。


すると……


「アッハハハ!!」


正直幻滅されると思いながらも意を決して話したのだが、帰って来たのは失望の言葉ではなく、盛大に笑う黒斗くんの笑い声だった。


「えっと急に笑い出して、どうしたんですか黒斗くん?」

「いややっぱりこの業界の清楚って、こうだよなってのがわかってね」


黒斗くんの言っている事が意味がわからずに困惑していると、先程までの少し落ち込んでいた黒斗くんとは違い、配信で見る様な元気な姿に戻っていた。


「こうってどう言う事ですか?」

「ああ、ごめんごめん。よく配信では見てたけど、こうやって生でこう言う現場を眼にすると、なんかvtuberになったんだなって自覚できて、ちょっと嬉しかったんだよな。」


やはり私には黒斗くんの言っていることはわからなかったが、それが悪いものの様には感じなかった。


「それで、どう言うことかだったよね、フユキさんが知ってるかわからないんだけど、この業界、vtuber業界での清楚って基本清楚じゃ無いんだよね」

「……?それは良いんですか?」

「うーん、良いか悪いかで言われたら正直あんまり良く無いとは思うよ、やっぱりしっかり清楚としてのその子が好きで推してくれてた人もいるんだし」

「なら」

「でも、正直それって俺達には関係ないよね?そら個人でやってる人なら、別にそのまま小さいグループでやって行っても良いかもしれないけど、俺たちは企業に所属している、言ってしまえばこれは遊びじゃなくて仕事だ。顧客の1人がどれだけ文句を言おうとも、他の99人が喜んで金を落としてくれるなら、そっちに行くのが当たり前だ。まぁ、その1人が他の99人を凌ぐ程金を落としてくれるならそのままでも良いかもしれないけど、それは現実的じゃ無いからね。それにvtuberで清楚って言ってる人はその皮が剥がれてからが本番って風潮もあるしね」


その後も、黒斗くんからギャップの話やら何やらをされたが、やはりその辺の詳しい話はよくわからなかったが、最終的には……


「まぁ、俺が何だかんだ言っちゃっけど、フユキさんには楽しんで配信をするって事だけ覚えていてくれたら良いから。」

「そうなんですね」

「うん。まぁ、そう言う事だから、俺はこれで……あ、あと俺達は企業勢何だから、運営にもっと色々話してみるのも良いかもね。それじゃあ」


そう言うと、黒斗くんは電話を切り、私の耳にはツーツーと言う音が静かにこだました。


翌日マネージャーに私が色々悩んでいたことを話してみると、親身に聞いてくれて社内で少し会議をした結果、私の清楚売りを変えても良い事が決まり、私は新たに酒飲み系清楚もどきとして、運営は売り出す事に決定し、後日配信で念願だった飲酒配信をした時には、やはり騙されたなどの心無い言葉も投げつけられたが、それ以上に私が本当に楽しそうにお酒を飲んでいる様子を見て、最近の配信で元気がなかったのを察していた人たちもそんな様子を見て安心し、更には黒斗くんが少し言ってた様に、色々なお酒の話をしてみると、私を見ている層はお酒を飲むのが好きな人が多く、コメント欄と凄く話があったりして配信自体が楽しく感じる様になり、更にはこの事がバズり登録者も1日で30万人を突破する事ができた。


他にもマネージャーさんがお酒の案件を取って来てくれたりと、お酒好きなキャラを運営さんが強く売り出してくれたり、お酒好きな先輩と一緒に飲酒配信なども行った結果、今までの足踏みは何だったんだと思えるほどに、私のvtuber活動は快進撃を続けて行った。


そして私は行き詰まっていた時に手を差し伸べてくれ、さらには解決までしてくれた黒斗くんにお礼も込めて、コラボを誘う事にしたのだった。



そしてコラボに誘うことを決めて3日経ち、ようやく誘う決心をし、実際に会う訳でも無いのにタンスから昔着ていた様な少しお高めな服をまで出し、更にはずっと汚かった部屋の掃除まで済ませ、何度も深呼吸をした後にゆっくりとスマホを手に取り、黒斗くんにメッセージを飛ばした。



いつもの様に配信を終えると、仕事用のスマホに連絡が入っている事に気づき、また男魂集でのコラボでもあるのかと思い、メッセージアプリを開くとそこには予想もしていない人物からメッセージが来ていた。


「フユキさん?」


どうしたんだろう俺なんかに連絡して、別に俺とフユキさんは仲がいい訳でも無いし、それにしっかりと関わったのだってこの前ちょっと相談に乗っただけだし、それ以降向こうからも特に連絡もなかったし、本当に何の様だろう?


そう思いながらも俺はフユキさんから来たメッセージ見た。


フユキ「あの、この前は相談に乗っていただきありがとうございました。そしてそのお礼と言うのは変なのですが、もしよろしければ私とコラボしていただけないでしょうか?」


まさかの連絡に少し戸惑ったが、なるほどコラボのお誘いだったのか。


けどせっかく誘ってもらったのは嬉しいんだけど、路線変更したとしてもフユキさんは一応清楚と銘打ってるし、もしそんなフユキさんとコラボしたらまたガチ恋勢に燃やされそうなんだよな、それに俺まだ19でお酒も飲めないし、もしコラボするとしても、出来れば俺の前に誰か他の男性とコラボしといて欲しいんだよな。


そうしたらまだ燃えにくいと思うし、それに燃えたとしても炎上の勢いは分散できるだろうし。


そう考えた瞬間、俺の脳裏に1人の男の顔が思い浮かんだ。


そうそれは万場先輩の顔だ。


万場先輩はこの前コラボしてくれた時に、困った時はいつでも頼ってくれてもいいと言ってくれたし、何より自分で酒好きと言っていたことを思い出した。


黒斗「誘ってくださったのは大変嬉しいのですが、今回はお断りさせて頂きます。代わりと言っては何ですが、万場先輩とコラボしてみてはどうですか?あの人は配信でもお酒好きと言ってましたし、何より一緒にコラボしてみてわかったのですが、とても話を回すのが上手く、一度コラボをしてその技を目の当たりにしてみると、今後の配信活動でも大変助かると思いますよ。」


っとこれで完璧だな!


俺がそう返すと、初めに送って来たメッセージの様な熱量は無く、そうですかと一言帰って来た。




後日、俺の言った通りフユキさんと万場先輩がコラボして、炎上しないように気を使いながら配信していたが、それでも万場先輩がプチ炎上したのはまた別の話だ。

【★読者の皆様へ お願いがあります】

作者のなべたべたいです。


ブクマ、評価はモチベーション維持向上につながります!


ページ下部↓の☆☆☆☆☆を★★★★★にして頂けたら嬉しいです。


よろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ