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「なんか人が多いぞ!」
半開きの控え室の扉から礼拝堂を覗くと、長椅子の席がすべて埋まるくらいに大勢の列席者が俺たちの結婚を祝いに教会に訪れていた。
ギルマスでもない、単なるいちプレイヤーの結婚式にこれほどまでに人が集まってくるとは……。
ルンが俺のとなりから身を乗り出して席を指さす。
「あのへんに固まって座っているのはアサギさんのギルメンであります。他にもゲストがいっぱいいるのは、ジブンやアサギさんのギルメンたちがトキヤどのとセレナどのの結婚式があるのを宣伝したからでありますっ」
「ちょっ、ちょっと宣伝がんばりすぎじゃないか……?」
俺はアサギさんやルンみたいな知り合いたちだけでひっそりと式を行うイメージをしていたのだが……。この人数はさすがに緊張するぞ。
もはや後には退けない。
俺が着ている衣装は真っ白なタキシード。
もう一つの控え室ではセレナもクラリーチェとアサギさんに手伝ってもらってウェディングドレスを身にまとっているだろう。
「がんばるでありますよ、トキヤどの」
「お、おう……」
「ところで、トキヤどのとクラリーチェどのは本当に恋人同士ではないのでありますか?」
「ちっ、違うに決まってるだろっ」
俺の慌てた返事にルンはふむ、とあごに手を当てて思案する。
「あれだけ仲が良いのに恋人ではないとは……」
「そんな仲良く見えるのか?」
「ええ、とても、であります」
そのとき、礼拝堂のオルガンが音楽を奏でだした。
「結婚式がはじまったであります!」
ルンが俺の背中を押す。
「最初は新郎の入場でありますっ」
うろたえる俺をルンは半ば力ずくで控え室から追い出した。
礼拝堂に入る。
列席者たちの視線が一斉に俺に向く。
俺はゆっくりとした足取りで礼拝堂の中央を歩き、祭壇の前に立った。
それからセレナが礼拝堂に入ってきた。
思わず見とれるほどの美しいウェディングドレス姿。セレナは現実でもゲームでも赤や黒の衣装を好んで着ていたから、純白のドレスに身を包んだ姿がとてもまぶしく映った。
セレナも緊張しているのだろう。ぎこちない足取りで礼拝堂を歩いてくる。
そして祭壇に上がり、俺のとなりに並ぶ。
真冬の雪原に放り出されたかのようにセレナはガチガチに震えていた。
泳いでいた目が俺の目と合う。
「ちょっ。なんでトキヤは余裕な顔してるのよっ」
「いや、俺だって緊張してるぞ」
「そんなふうには見えないしっ。いつものぼけっとした顔じゃないっ。もしかして、アタシと結婚するのをどうでもいいとか思ってないでしょうね」
「しょせんゲームだろ。……って、セレナが言ったんじゃないか」
「い、言ったけど……。でもなんか悔しいしっ」
「なんで悔しいんだよ」
「トキヤがアタシとの結婚をなんとも思わないのが――って、なに言わせてんのよっ」
「勝手にキレるなよっ」
「っていうかさ、アサギさんに結婚式の段取りをおしえてもらったんだけど、式の最後らへんで誓いの口づけとかいうのがあるじゃん!」
「そりゃあ、あるだろ。結婚式なんだから」
「口づけってその……キス、よね?」
「そりゃあ、キスだろ。口づけなんだから」
「マジでするの!? フリじゃなくて? 友達どうしの軽い結婚ごっこでもみんなキスしてんの!?」
「どうだろうな……。たぶんマジですると思うぞ」
「聞いてないわよそんなのっ」
「普通はみんな知ってるぞ!?」
「あ、アタシ心の準備が……。1ミリ! キスする1ミリ手前で寸止めするのよ! いい!?」
「難しい要求するなよ!」
牧師が聖書を読み上げている間、俺とセレナは小声でそんなやりとりをしていた。
こんなときまで口げんかとは……。
ある意味俺たち、相性がいいのかもな。
「コホンッ」
牧師が咳払いで俺たちをとがめる。
「それではトキヤさん」
そして俺に問いかけてくる。
「あなたはこれから夫として、妻となるセレナさんを愛することを誓いますか?」
「はい。誓います」
俺が誓約に答えると、次はセレナの番となった。
「セレナさん。あなたは妻として、夫となるトキヤさんを愛することを誓いますか?」
「ええっ!?」
今更恥ずかしがるなよっ。
俺は心の中でツッコミを入れる。
「あのー、牧師さん。このあとのキスってマジでするの?」
「……誓いますか?」
牧師の眼がぎろりと鋭くなってセレナをにらむ。
んなこと牧師に尋ねるなよ……。
「ち、誓うわよ……。誓います」
もはや逃げられないとさとったらしいセレナは視線をそらしながら小声で言った。
「それでは指輪交換をします」




