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10-5

 牧師が箱を開け、それを俺たちの前に差し出す。

 箱の中には結婚クエストで手に入れたペアリングがあった。

 まずは新郎の俺からだ。

 俺はペアリングの一つを手に取る。


「ほら、セレナ。手を」

「うん……」


 セレナが俺に左手を差し出す。

 俺は彼女の左手の薬指に指輪をそっとはめさせた。

 セレナが呆けた顔をして指輪のはまった自分の左手を眺めている。この結婚式がまるで夢の中の出来事であるかのような面持ちだった。


「次はセレナだぞ」

「わ、わかってるわ」


 セレナが牧師の持つ箱から指輪を手に取った。

 俺は左手をセレナの前に出す。


「おい、だいじょうぶか?」

「だ、だだだだいじょうぶよっ」


 ぜんぜんだいじょうぶそうじゃない。

 指をつまむセレナの手がぷるぷる震えている。そのせいで指輪の穴が俺の薬指になかなか定まらない。ぽろりと指輪を落としてしまわないか心配でならなかった。


「セレナ」

「トキヤは黙っててっ。今、集中してるのよ……」


 やっとのことで俺の薬指に指輪が通った。

 しかし、指輪は手の付け根まではまらず、爪のあたりで止まってしまった。


「ど、どうなってんのよこれ……」

「おい、セレナ。とっとと指輪をはめてくれ」

「やろうとしてるわよっ」


 セレナは俺の手首をぐっとつかみ、力ずくで指輪をはめようとした。

 指輪は磁石の反発みたいに、押し込んでも戻ってくる。セレナが鼻息を噴き出すほど力を入れても第二関節に届くのがやっとだった。


「こ、れ、で……どうっ!」


 セレナの根性で指輪は俺の薬指の付け根まではまった。


「よっしゃ、はまった――ぐはっ!」


 しかし、セレナが指輪から手を離したその瞬間、指輪は俺の指からすさまじい勢いで射出されてセレナのおでこに直撃した。

 かちんっ。

 ころころころ……。

 指輪は礼拝堂の床に落ちて転がっていく……。

 どよめくゲストたち。

 俺とセレナと牧師も呆然としている。

 ど、どういうことだ……・?


「と、トキヤどの! 大変であります!」


 長椅子に座っていたルンがタブレットを片手に俺とセレナの前までやってきた。


「ステータス不足であります!」

「ステータス不足?」

「トキヤどのはペアリングを『装備』するためのステータスを満たしていないのでありますっ」

「な、なんですってー!」


 セレナが叫んだ。

 ルンにタブレットを見せてもらう。

 ペアリングの詳細画面には上昇ステータスと要求ステータスが表示されている。結婚イベント用のアクセサリーだから上昇ステータスは無し。要求ステータスはレベル5もあれば満たせるような大したことのないものだった。

 だが、俺のステータスはレベルアップで一度も上昇したことがないからレベル1同然。

 要求ステータスを満たしていない。

 だからペアリングを『装備』できなかったのだ。


「結婚式は中止ねっ」

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