5-10
……。
……。
……。
「――きてー。――てよー!」
トントントン……。
声が聞こえる。
あと、木を叩く音も。
意識が夢の世界から現実――じゃなくてゲームの世界に引き戻される。
「トキヤくーん、起きてー!」
クラリーチェの声だった。
トントントン……。
クラリーチェの声と共に俺の泊まる部屋のドアがノックされている。
「起きてーっ。朝だよー」
トントントン……。
寝ぼけ眼をこすりながら上体を起こす。
タブレットのスリープモードを解除し、時間を確認する。
朝の5時。
「ねぼすけトキヤくーん、起きてってばー!」
トントントン……
まさかの朝5時起床でねぼすけ扱いとは……。
俺はのそのそとベッドから出て部屋のドアを開けた。
「おはよう、クラリーチェ」
「おはよっ、トキヤくん」
ドアを開けると、クラリーチェが満面の笑みで朝のあいさつをしてくれた。
金髪の美少女にモーニングコールされるとは俺も幸運だな……。
朝の5時でさえなければ。
クラリーチェの背後にはセレナもいた。
だるそうに肩を落として、しきりに目をこすっている。
めちゃくちゃ眠そうだ……。
「マルガレーテさんのお店に『れっつごー』だよっ」
「開店は朝の9時じゃなかったか?」
「でもでも、職人さんって、仕込み? とか、そういうので朝早くからお店にいるんじゃないの?」
「だとしても、マルガレーテさんの迷惑になるぞ」
「そっ、そうだね……」
それでもクラリーチェははやる気持ちを抑えられないようすだった。
セレナが大きなあくびをする。
「9時になったら起こして。二度寝するわ」
自分の部屋に戻ってしまった。
「あー、セレナちゃん!」
クラリーチェは不満げにほっぺたを膨らませた。
「お、俺も二度寝したいんですけど……」
「わたし、ばっちり目がさめちゃって寝れないよー。あと四時間も待てないよー」
そういうわけで俺とクラリーチェは宿屋のロビーにあるテーブルで時間をつぶした。
この『ハルベリア・オンライン』に実装されているカードゲーム『ハルベリア・デュエル』で俺とクラリーチェは遊んだ。『ハルベリア・デュエル』はいわゆるトレーディングカードゲームで、好きなカード60枚で構成したデッキを持ち寄って二人で対戦する。ゲームのおまけとしては意外と本格的で、冒険そっちのけでカード収集するプレイヤーもいるくらいだ。
俺もクラリーチェも『ハルベリア・デュエル』はめったにやらないから、初期デッキ同士の対戦だった。地味な対戦だったが、お互い勝ったり負けたりといい具合に拮抗した。
こういう対戦ゲームは、どっちかが少しでも強いと友情が破綻しかねないからな……。
「うーん……」
クラリーチェが目をこすりだした。
うつらうつら、頭が上下に揺れ出した。
ぼんやりとしている。
「わたし、ちょっと部屋で仮眠するね。9時になったら起こしてね……」
そう言ってクラリーチェはふらふらと自分の部屋に戻っていった。
やっぱり早起きしすぎだったんだな。
カードゲームにも飽きてきたところだったし、俺にとってもちょうどよかった。
時間は7時。
俺もタブレットのアラームをセットして部屋に戻った。
そして9時になると、俺とセレナとクラリーチェはすぐさま職人街へと向かった。
クラリーチェはわき目もふらず道を歩く。
早足で。
そうして目的地であるアクセサリー加工店にたどり着くや、「マルガレーテさーんっ」と言いながらドアを開けた。
マルガレーテさんはいつもの場所――店の奥のカウンターで肘をついていた。
「あれ? どしたのみんな」
マルガレーテさんは俺たちを見るなり不思議そうに首をかしげた。
【あとがき】
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