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セレナが一人で規定数のワイルドボアを撃破し、『ワイルドボア討伐』クエストは無事完了した。
俺もクラリーチェに何度か頭上から岩を落とされたが、スライムたちを倒すことができた。
ちょうどいい具合に時間も経って、空は茜色に染まっていた。
クエストホームに帰ってクエストの完遂を報告し、いくばくかの報酬を入手した。経験値もゴールドも大したことのない額だったが、もとより夜になるまでの時間つぶしで受けたクエストだったのでこれでもじゅうぶんだった。
「ねえねえ、トキヤくん、セレナちゃん。宿に行く前にマルガレーテさんのお店に寄ってみない? もしかしたらもうイヤリングできてるかもっ」
「さすがにそれは早すぎだってば。明日の朝って言ってたでしょ」
しょうがないわね、とセレナが苦笑い。
クラリーチェはまるで誕生日プレゼントを待ちわびる子供みたいにはしゃいでいた。
「明日まで楽しみに待ってなさい」
「はーい」
俺たちはクエストホームから宿屋へと向かった。
宿屋へと到着する。
俺たちの他にも、何人ものプレイヤーたちが宿屋の扉をくぐっていく。
夕方になると見られるいつもの光景。
この光景を見ていると、一日が終わるんだな、って感じてくる。
この『ハルベリア・オンライン』のラスボス、魔王を倒して『ログアウト』するため――あるいは別の目的の者もいるだろうが――俺たちプレイヤーは日々冒険を繰り返している。昼間はダンジョン、夜は宿屋。学校や会社に通う日々と比べると、本質的には現実世界の日常生活と大差ない。
あえて違いを挙げるなら『ゲームクリア』という全員一致した目的を与えられていることか。
「宿屋か……。いつか『マイハウス』を建てたいわね」
宿屋の前で屋根を見上げながらセレナがつぶやく。
「宿屋のベッドじゃ不満なのか?」
「不満じゃないけど、自分のプライベートな場所が持てるって素敵じゃない?」
『マイハウス』とは、プレイヤー個人が所有できる家である。
『マイハウス』の機能自体は宿屋のように宿泊ができることなのだが、『マイハウス』所有を夢見るプレイヤーからすれば、その機能はあくまでもおまけ。メインは家を自分好みに改装・装飾して他のプレイヤーを呼んで楽しく過ごすことにある。『マイハウス』所有には高難易度のクエストのクリアが必要な他、莫大なゴールドを必要とするため、上級者の指標にもなっている。
俺は別に『ごっこ遊び』には興味ないから、一生宿屋で構わないけれど。
「もし『マイハウス』を建てられたら、トキヤも住人にしてあげてもいいわよ」
「そりゃどうも」
「わっ、わたしは? セレナちゃん」
「もちろんよっ。アタシとクラリーチェ、とついでにトキヤの三人のマイハウスよ!」
『マイハウス』所有なんて、いつになることやら……。
そんな遥か遠い夢を語り合いながら俺たちは宿屋でチェックインしたのであった。




