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3-6

 サーベラスが俺を指さして笑っている。

 それでいい。

 そのまま一生笑っていろ。

 スライムが俺に語りかけてくる。


 ――おなかへった。ごはんちょうだい。


「お前もそれかよっ」


 思わずツッコミを入れてしまった。

 今までこいつ含めて三体の幻獣と交渉してきたが、全員『食べ物くれ』なのはどういうことなんだ……。


「ごはんだな。干し肉でいいか?」


 俺はタブレットを起動させ、ストレージを開いて干し肉を取り出した。

 干し肉は戦闘職でも生産できる回復アイテムである。材料は魔物か動物の肉と香辛料系アイテムの二つで済み、専用の生産道具も必要ないので、ダンジョンを冒険するプレイヤーは必ずと言っていいほどこれを用意しているのだ。


 ――ハルベリアンナッツがたべたいの。


「なんだそれ!?」


 このゲームに実装されているアイテムだろうか。名前からしてナッツのような食べ物なのだろう。

 残念ながら俺はそんなアイテム知らないし持ってもいない。


「すまん。それは持ってない。干し肉じゃダメか?」


 ――うーん、それなら……。魔石がほしいの。


「魔石!?」


 魔石は魔物がランダムでドロップするアイテムで、使用するとHPを回復する。ただ、その回復量は微々たるもので、ほとんどのプレイヤーはアイテム屋に売却するかその場で捨てるかしてしまう。俺だってもちろん、そんなもの大事に取っておくわけがない。

 役に立たないアイテムだと思ったが、まさか魔物との交渉用のアイテムだったとは……。


「すまん。それも持ってない。干し肉にしてくれ」


 ――うーん、それなら……。宝玉がほしいの。


「宝玉!?」


 宝玉も魔物がランダムでドロップするアイテムだ。魔石と違うのは、使用するとHPが即座に全回復することだ。宝玉はレアドロップアイテムで、もし手に入れたら高値で取引できる。だが、俺はそんなレアなアイテムは持ち合わせていない。以前、何個か入手したことはあったが、既に他のプレイヤーに売ってしまった。

 強い効果を持ったあのアイテムも、まさか魔物との交渉用のアイテムだったとは……。


「すまん。それも持ってない。干し肉食って協力してくれ」


 ――うーん、それなら――。


「いいから食えッ」


 俺はスライムの口に干し肉を突っ込んだ。

 ねじ込んで、呑み込ませる。

 ごっくん。

 無理やり干し肉を食べさせられたスライム。俺はスライムのアゴ(らしき部分)を上下させて咀嚼させる。スライムは半透明で、干し肉が噛み砕かれて消化されて消滅するところまで見ることができた。

 これで交渉成立だ。


「よし、食べたな。俺に協力してくれ」


 ――うーん、それなら――。


「まだ要求するのかよ!?」


 ――それなら、協力してあげるよ。


 驚かせるな!


「よっしゃ! それなら俺についてこい!」


 俺はスライムを抱きかかえてサーベラスのもとへ戻った。


「待たせたな、サーベラス」

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