3-7
サーベラスはわざとらしくあくびをした。
「こんなにいい天気だから昼寝でもしようかと思ってたところだぜ」
俺はスライムをその場に降ろす。
『エンチャント』はまだ使わない。
サーベラスは用心深い男だ。俺の槍に幻獣が憑依したら警戒するだろう。あいつが大きな隙をさらしたところで『エンチャント』し、一撃で葬る。それが今回の作戦だ。
サーベラスに聞こえないよう、小声でスライム型幻獣に言う。
「……俺が合図したら『エンチャント』を頼む」
――わかったよー。
「さあ、今度こそ戦おうぜ、サーベラス」
俺は槍を構えた。
「おいおい、それって初期装備の槍じゃねーか。俺さまもナメられたものだな」
サーベラスは愛用の剣だと言っていた、氷をまとった剣『アイスセイバー』を構えた。
アイスセイバーは氷属性が最初から付与されているレア武器だ。物理属性と氷属性の複合攻撃のため、防御しても氷属性の分のダメージ20%は貫通してくる。さすがに初期レベルに等しくても20%のダメージ即死することはないだろうが、防御は三回が限度だろう。
だが、俺はサーベラスの攻撃を槍でいなせる自信があった。
サーベラスの職業はフェンサー。
セレナと同じ。
戦いかたはまるで違うが、使うスキルは同じだ。
「勝負!」
俺はバックステップし、槍の間合いを開いた。
そして『通常攻撃』を放つ。
通常攻撃だから当然、前方に向かって槍で突くだけだ。
サーベラスは一歩も動かないまま身体をそらして俺の攻撃を回避する。
「通常攻撃なんかで俺さまに勝てるかよ」
サーベラスが前に出る。
俺は後ろに退く。
そして通常攻撃。
「……チッ。ザコがセコい戦法使いやがって」
サーベラスがいら立っている。
それでいい。
ダメージは与えられなくてもあいつの心を乱している。じゅうぶんだ。
そして俺はわかった。
サーベラスは動きがのろい。
少なくとも、セレナよりかは断然動きが鈍重だ。おそらく自身の遅さをフェンサーの素早いスキルで補っているプレイスタイルなのだろう。
剣の間合いまで詰められたらおしまいだが、間合いを離すことは容易くできる。
ランサーでフェンサーに勝つには、いかに槍の間合いを保つかだ。
俺はサーベラスの前進に合わせて後退し、絶対にヤツの間合いに入らないようにした。そしてがむしゃらに槍の通常攻撃を繰り出し続けた。
槍がサーベラスの頬をかする。
HPバーがわずかに減少する。
「クソが! こんなザコにアイテムを使うなんてもったいなかったが……」




