20-3
店のドアを開けて中に入ると、正面奥のカウンターに座っていたマルガレーテさんが笑顔で俺たちを出迎えてくれた。
「いらっしゃませー。あっ、トキヤくんたちじゃん!」
「こんにちは、マルガレーテさん」
「アクセサリーを見にきましたっ」
「今日は細工の依頼じゃないんだね。うんうん、好きなだけ見てってよ、三人とも――って、あれ? セレナちゃんは?」
マルガレーテさんが不思議そうにつま先立ちになって俺たちの後ろを見てくる。
「今日は俺とクラリーチェだけなんです」
「へぇー、そうなんだー」
マルガレーテさんはにやにやと笑いながら「セレナちゃんを差し置いてデートかい? 隅に置けないね、このこのっ」と俺を肘でつついてからかってきた。
やっぱり他人からすればデートに見えるんだな……。
「いつ見てもきれいだねー」
クラリーチェは目を輝かせながらアクセサリーを見てまわっている。まるで花畑を飛び回る蝶々のようにあっちへこっちへ行っている。マルガレーテさんが「さわってもいいよ。着けてみなよー」と声をかけると、クラリーチェはさっそく気になっていたらしいネックレスを身に着けて鏡の前に立った。
「どうかな? トキヤくん」
「いいんじゃないか」
「トキヤくーん、そんなんじゃダメだよー」
とマルガレーテさんが横から言う。
「女の子を褒めるときはもっと具体的に言わなきゃー。ねー、クラリーチェちゃん」
「そうだよー、トキヤくん」
「す、すまん……」
俺はたじろいでしまった。
まあ、クラリーチェはごきげんなようすだからいいんだけれど。
「トキヤくん、こっちとこっちのネックレス、どっちが似合ってる?」
クラリーチェの右手にはシンプルな銀色のネックレス。それとは対照的に、左手にあるのは金色の細工が吊るされた洒落たネックレス。
俺はすぐさま彼女の右手を指さした。
「クラリーチェはシンプルなアクセサリーのほうが映えるんじゃないか」
「ウチもそっちをオススメするよ。クラリーチェちゃんは美人さんだからねー。素材が活きるシンプルなアクセサリーが似合うよ」
「わっ、わたしが美人……」
クラリーチェは「にへへ」とにやけた。
「それじゃあマルガレーテさん、このネックレス買いますっ」
「はーい。お買い上げありがとねっ」
「あっ、ちょっと待ってくれ」
クラリーチェがマルガレーテさんのタブレットに自分のタブレットをかざして精算しようとするのを俺が止めた。
「代金は俺が支払うよ」
「トキヤくんが!?」
「俺からのプレゼントだ」
「トキヤくんからの……。ありがとう!」
感極まったクラリーチェは俺にぎゅっと抱きついてきた。
胸が……。やわらかい胸が思いっきり当たってる!
この光景をセレナに見られたら間違いなく必殺技『トライスラッシュ』が俺に炸裂するだろう……。
「えへへー。トキヤくんのプレゼントー」
代金を支払うとクラリーチェはさっそく銀のネックレスを装備した。
その場でくるりと一回転。
長い金髪がふわり躍る。
装飾品のカテゴリだから能力値の上昇は無かったが、彼女の魅力はぐんと上がった。
無邪気にはしゃぐ彼女を見て俺もうれしい気持ちになった。
「今日二人でウチに来たこと、セレナちゃんにはナイショにしといてあげるからね」
マルガレーテさんがにやにやしながら耳打ちしてくる。
俺がうろたえるのを予想していたのだろう。しかし俺はそんな彼女にこう反撃した。
「平気ですよ、マルガレーテさん。今日はセレナ公認なんで」
「ええっ!? 公認デート!?」
思いがけぬ反撃をくらったマルガレーテさんは目玉が飛び出るくらいびっくりしていた。
「トキヤくん……。キミ、顔に似合わずやるねぇ……」
なんだかよくわからない感心をされてしまった。




