20-4
マルガレーテさんの店を出た俺とクラリーチェは、次はカフェを訪れた。
プレイヤーたちの間でコーヒーがおいしいと評判の店で、前々から行ってみたかったのだとクラリーチェは俺に言った。
「トキヤくんのおかげでようやくお店に入れるよー」
「セレナと一緒に行けばよかったんじゃないか?」
「トキヤくんと入りたかったの。てへへ……」
俺から視線をそらしたクラリーチェははにかみながらそう言った。
俺はどう返事したらいいかわからず「そ、そっか」と頬をかいた。
そうして俺たちはカフェに入った。
ウェイトレスに案内された窓際の席に座って、それからメニューを開いて注文を告げる。飲み物は二人ともホットコーヒー。そして俺はビスケットを、クラリーチェはチーズケーキを頼んだ。
「さすがに人気なだけあって繁盛してるな」
他の席はほとんど埋まっていて店内は賑わっている。とはいえ、酒場のようなうるささの無い、落ち着いた雰囲気だった。内装も凝っていて、クラリーチェみたいな女の子が好きそうな店だった。
「あのウェイトレスさんの制服かわいかったね。わたしも着てみたいなー」
「クラリーチェなら似合うだろうな」
「そ、そう? てへへ」
照れ笑いするクラリーチェ。
「お待たせいたしました」
さっそくコーヒーとお菓子が運ばれてきた。
俺はその人気を確かめようとコーヒーを口に運ぶ。
「おいしい。深みがあるっていうのかな。味わいが――」
「ト、トキヤくん! お砂糖っ。お砂糖入れ忘れてるよ!」
慌てたクラリーチェが角砂糖の入ったポットを俺の前に出してくる。
「へ? ……ああ、俺はブラックが好きなんだ」
「ブラックって、砂糖ナシ!? 苦いよ!?」
「コーヒーって苦いものだと思うんだが」
「すごいねトキヤくん……。わたしはお砂糖がないと飲めないよ」
そう言ってクラリーチェは角砂糖を次々とコーヒーに入れていった。
「うーん、ホントだ。おいしいー」
そんなに砂糖を入れたらコーヒーの味がわからないんじゃ……。
しかし本人はおいしそうに飲んでいるのであえて口には出さなかった。
「ねえねえトキヤくん。ケーキとビスケットはんぶんこしようよっ」
「そうだな。はい、俺のビスケット」
俺は四個あるうちの二個のビスケットをクラリーチェのケーキの皿に置く。
そして彼女はフォークでチーズケーキを二等分し――。
「はい、あーんして」
その半分をフォークで刺して、俺の口元に持ってきたのだった。
いや、さすがにそれは恥ずかしいぞ!
これじゃホントに恋人同士じゃないか!
「クラリーチェ、そのままビスケットの皿に置いてほしいんだが……」
「ダメ。『あーん』して」
彼女は一歩も譲るつもりはないらしい。
俺は覚悟を決めて目を閉じ、口を開けた。
そしてクラリーチェは俺の口の中にチーズケーキを運んだのであった。
「どう? おいしい?」
「お、おいしい……」
正直、味なんてぜんぜんわからなかった。




