20-2
俺もセレナも、ルンもアサギさんもぽかんと口を開けてあ然としていた。
俺を貸してほしい?
どういう意味だ?
「えっと、えっとね……」
クラリーチェはなおももじもじ恥ずかしがりながら言葉を続ける。
「わたし、今日はトキヤくんと二人で街をまわりたいの。いろんなお店に行ったりして……」
「それはデートでありますか?」
ルンが直球で訊いてくる。
クラリーチェは途端に顔を真っ赤に染めて「ちちちちち違うよっ」と早口で必死に否定した。
「そういうのじゃなくて、その、えっと――」
「わかったわ、クラリーチェ」
セレナが納得入ったふうにクラリーチェの肩に手を載せる。「あのっ、そのっ、えっとねっ」と焦っていたクラリーチェはそれで肩の力が抜けて落ち着きを取り戻した。
「今日一日、トキヤと遊んでらっしゃい」
「いいの? セレナちゃん」
「アタシに許可をもらう必要ないでしょ」
「で、でも……」
「アタシはアタシでがんばってくるから。トキヤもそれでいいわよね」
「俺は別に構わないぞ」
そういうわけで俺は今日一日、クラリーチェと過ごすことになったのであった。
セレナ、ルン、アサギさんは大会の会場へ向かい、その場には俺とクラリーチェの二人が残された。
クラリーチェが俺の前に立ってお辞儀する。
「トキヤくん、よろしくねっ」
「そ、そんなあらたまる必要ないんじゃないか?」
「そうかも。えへへっ。今日はトキヤくんをひとりじめだねっ」
クラリーチェは照れ顔になった。
二人きりになって、なんだか俺も照れくさくなってきた……。
「ひとつ質問していいか?」
「なあに?」
俺とクラリーチェは職人街を歩いていた。
目的地はマルガレーテさんの装飾品店。俺が「どこから行こうか」と尋ねるとクラリーチェが「アクセサリーを見たいな」と言ったからそこに決まったのだった。
「どうして今日に限って俺と出かけたいって言いだしたんだ?」
「そ、それは……」
クラリーチェが頬をほのかに染めてうつむき加減になる。
そして小声でこう言った。
「チャンスだって思ったから――トキヤくんと二人きりになれる」
上目づかいで俺の顔を覗き見てくるクラリーチェ。
胸が急に高鳴る。
「ほら、いつもわたしたちって三人いっしょでしょ? トキヤくんとわたしの二人きりになることってあんまりなかったから」
思い返せばそのとおりだった。
俺とセレナが二人きりになることは割とあるし、セレナとクラリーチェが二人きりになることはしょっちゅうだ。しかし、俺とクラリーチェが二人きりになった記憶はほとんどなかった。彼女といるときはたいていセレナもいっしょにいる。現実世界でもゲームでも。
「わたし、トキヤくんと仲良くなりたいの」
「今までは仲良くなかったのか?」
「そうじゃないよ、もう。もっともっと仲良くなりたいの。セレナちゃんに追いつけるように」
セレナに追いつく、か。
クラリーチェはもしかして、俺とセレナに置いてきぼりにされていると思っていたのか。友情という意味で。もしくは恋愛――いや、それはうぬぼれすぎか。
俺にとってはセレナもクラリーチェも大切な友達だぞ
と言おうと思ったところで目的地に着いてしまった。




