20-1
俺とセレナ、クラリーチェ、それとルンとアサギさんの五人で酒場にいた。
「ついにこの日が来たわ! 『ハルベリア・デュエル』の大会! ぜったい勝つわよ!」
セレナは背後に炎が見えるくらい燃えていた。
今日はカードゲーム『ハルベリア・デュエル』のプレイヤー主催の非公式大会が行われる日だった。
その大会にセレナが出場する。
非公式とはいえ、大手ギルドが主催するその大会の規模は大きい。『ハルベリア・デュエル』のランキングに名を連ねる者たちがこぞって参加している、極めてレベルの高い大会になるのは間違いなかった。
大会上位者には賞金はもちろん、戦いを勝ち抜いた名誉が与えられるのだ。
そんな大層な大会に初心者同然のセレナが出場できたのは、『ハルベリア・デュエル』専門ギルドに所属しているルンとアサギさんに誘われたからであった。
「セレナどの、気合入っているでありますね! ジブンも燃えてきたであります!」
ルンも瞳の奥に闘志の炎を燃やしている。
「いつもは対戦相手として戦っているけれど、今日は仲間ね、セレナちゃん」
ギルドマスターのアサギさんが握手を求めると、セレナは「はいっ」とそれに応じてアサギさんの手をぎゅっと握った。
「あの、水をさすようで悪いんですけどアサギさん。どうしてセレナをメンバーに加えたんですか? メンバーの一人が体調不良で出場できなくなって、その代わりとしてセレナが選ばれたって聞きましたけど、アサギさんほどのギルドなら補欠はほかにもいっぱいいたんじゃ……」
そう俺は質問した。
するとセレナが俺をギロリとにらんでくる。
「なぁに、トキヤ。アタシじゃ力不足って言うの?」
「言うだろそりゃ。セレナの実力は初心者の俺と五分五分程度だろ」
「いいのよ、トキヤくん。たしかにセレナちゃんより強いプレイヤーはウチのギルドには大勢いるわ。でも、こういう大きな大会に出てこそカードの腕前は上がるのよ。ある意味、魔物退治と同じね。強い相手ほど経験値はたくさんもらえるの」
アサギさんがそう言う。
「それに、セレナちゃんがね『どうしても出たい』っていうものだから、その熱意を買ったのよ」
「なるほど……。ありがとうございます。セレナはアサギさんのギルドのメンバーでもないのに」
「ギルドのメンバーではなくてもジブンたちは仲間であります!」
「よろしくね、ルン、アサギさん!」
「はい、であります!」
「がんばりましょうね」
大会は3人でのチーム戦。
ルン、アサギさん、セレナで出場するのであった。
「トキヤ、クラリーチェ。アタシたちのこと応援してね」
「ああ。やるからには思いっきりやってこい」
「……」
「クラリーチェ?」
俺の隣でクラリーチェは無言のままでいる。
こういうときクラリーチェなら「がんばってね、セレナちゃん」と応援するはずなのに。
「えっと……。セレナちゃん」
「なあに? クラリーチェ」
「えっと、えっとね……」
どうしたのだろう。
クラリーチェはなにか言いたげにもじもじしている。
なにをためらっているのだろう。
もしかして、「わたしも出場したい!」とでも言いだすのか!?
ところがクラリーチェが発したのはそれよりもっと意外な言葉だった。
「ト、トキヤくんをわたしに貸して! セレナちゃん!」




