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騎士と狂姫は歩く  作者: 御味 九図男
第8章:足を止めて
228/231

228.あ、そうそう…今度は三人で


「…」



 あれから…何時間経っただろうか。


 初めて三人揃っての酒の席という事もあってとても良い雰囲気で酒を飲んでいたのだが…気が付けば店から他の客の気配はなくなり、呑んだ酒の量ももはや覚えてはいない。


 そうして飲み続けている内に愛おしい二人の考えが分かった。


 俺を完全に酔わせようとしている。


 確かに俺は酒に強いが…まぁ酔いつぶれたことは殆どないのだ。


 今までで一番酔ったのは同僚の一人が殉死したときだったか…あの日の弔い酒は流石に効いた。


 だがまぁ…そうだな、そんなに俺を酔わせたいのなら今日は潰れる寸前まで飲もうかと思う。



「うィ~…もッと飲めよカロン…わたしの酒がァ…飲めねぇのかァん?」


「いただこう」



 ジオネがつい先ほどまで飲んでいた杯を受けとり一気に飲み干す。


 それを若干呆けた顔で見つめるジオネだったが照れているのか良い過ぎてなのか顔が赤い。


 そして多分俺の顔も赤いのだろう。


 酔いなのか、惚けているのか…まぁどちらもかもしれない。



「その…カロン。ジオネさんはお酒にはあまり強くないんですの?あまり飲み過ぎてはお身体が…」


「そうですね…弱いわけではないと思いますが…。ジオネ、具合が悪くなったら早めに言うんだぞ」


「ンン~?まァだ酔ッてねェよ…わたしはァこッからが本番なんだよォ…」


「そ、そういうものですの?」



 確かに今のジオネはぐったりとしているが彼女にとっての本番は本当にここからだ。


 酔うまでは早いが酔いつぶれるまでが長いのだ。


 それこそ朝まで飲み続けた翌日にはもうスッキリとしているくらいに昨日アレだけ飲んだことを感じさせない。


 つまりは本当に酔いつぶれるまでは飲んでいなかったという事がそれで分かる。


 それでは酒に強いのでは?とも思うが、正直ここまでべろんべろんになっていると強いと言っていいのか分からない。



「らしいのでサリン様もどうかお気になさらず楽しんで下さい」


「そう…ですわね。ふふ、なんだか楽しいですわ」


「同じ机を囲み酒を飲んで親睦を深める…古くからある交流の一つですからね。今でもこうして行われている理由がよく分かります」


「…確か前にラマルラでカロンとお酒を楽しんだ時も…その後少し気持ちの距離が縮まったものね…懐かしく感じますわ」


「はは、懐かしいですね。スタンがすぐ酔いつぶれて結局二人で飲んでいましたね」



 ラマルラ…本当に懐かしいな。


 あそこの温泉には是非また行きたいものだ、…二人と正式に結婚したら新婚旅行として行くのもありだな…。


 そういえばサリン様のご入浴にご一緒させていただいたこともあったか…いや、今この話はすまい。



「ラマルラ…良いところでしたわ。お湯も良かったですし…あ、そうそう…今度は三人で温泉に入りましょうね」


「………………そ、そうです…ね」


「は?”今度は”?オイオイオイ…聞いてねェなァ…カァロン。そりャあどういう意味だァ?私には前に二人で入ッたし次は三人でッていう風に聞こえるんだがァ」


「………とりあえず土下座させてもらってもいいか」




 ラマルラであったことを洗いざらい話した。


 結局それなら仕方ないという事で土下座はさせてもらえなかったが、それはそれとしてズルいという事で今夜中に三人で風呂に入ることになった。


 やましい気持ちでご一緒した訳では無かったんだ…だが事実一緒に入ってはいるので何も言い訳はしなかった。


 これが騎士のやり方だ。


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