11.もちろん
姫様が物置小屋に隠れた後に扉を閉め、凍結魔術で扉を凍らせて鍵がわりにする。これで俺が死ぬか夜が明けて氷が溶けるまで開かないだろう
村人達はすぐに俺の所まで押し寄せてきた。物凄い人数がいる、女性や若い者まで勢揃いだ。
「サリン様を渡せ、騎士」
顎鬚を結んだ老人…アド氏だ。
「殺す気…だろ…」
「……そうだ。だが理由がある、話を聞かせてやるから、それから判断するといい」
…
……
………
大体の話は分かった。
要約すると…
・魔族に子供達を人質に取られた、子供達の命が欲しければアリスシアの王族の死体を持ってこいと命令された。
・命令されたのは三日前で、死体を届けられなければ毎日子供の身体のパーツが1つずつ送られてくる。
かなり胸糞の悪い話だった。
「酷い話だろう…騎士よお前は無垢なる子供達の多数の命とたった一つの姫の命…どちらを優先するべきか判るだろう」
アド氏も本当はこんな事したく無いって事くらい俺にだってわかる。
「ああ…わかっている」
こんな事悩むまでも無い
「「もちろん…」」
「子供達だ」
「姫様だ」
俺は即座に直剣を引き抜き村長を切り裂く。
「ぐあっ!?貴様!何を馬鹿な事を!」
アドは避けようとするが、避けきれず左手首を斬り飛ばされる。
「魔族に…隷属した反逆者どもめ…!粛清だ…!」
騎士である俺が姫様を裏切る訳がない。村人達は魔族に洗脳でもされたのだろう、姫様を守るためにもここで粛清しなければ。
「ぐ…!戦で精神を病んだのかこやつは!殺せ!子供達の為だ!」
「「おう!」」
村人達が襲いかかってくる。槍やら斧やら包丁やら、武器じゃないような物まで手にしている者までいる。
「ッグ!ハァッ!」
切って切られて、刺して刺される。
鎧を装備しているとは言えこの人数差だ、圧倒的に不利だ。
こんな状態では勝ち目がほとんど無い、もし万全の状態ならば負ける事は無かっただろう、…だが高貴な方を護って死ねるのなら本望だ。
「なぁ…こいつ本当に人間なのかよ…」
視界が霞んでよく見えないが多分男がそう呟いた。失礼な、俺は人間だ。
ー〜ー〜ー
「ハァッ…はぁ…は」
もうどれだけ村人を殺したのだろう。多分ほとんど殺したと思う、男も女も老人も。姫様を襲おうとする者は殺した。
「みんな…みんな死んでしまった!」
槍を持った若い男はよく似た顔の男のそばで泣いている。この男は若い男を庇って死んだ。親父だったのだろうか?
「これが騎士のする事か!姫を守れればそれで良いのかよ!」
若い男は槍を構える
「はぁ…ハァ…はぁ…そうだ。それが騎士…だ」
「そんなの間違ってる!うあああぉぉああ!」
槍を持って突進してくるが、避けれるほどの体力は残っていない。
「グッ…!これが…騎士だよ」
鎧に槍が突き立てられるが、丁度良い距離まで近づいて来てくれたので、直剣の柄で強く殴りつける。
「ごっ……こんなの…嫌だ…」
若い男は崩れ落ちる、気絶したのだろう。
本来ならばとどめを刺すべきなのだろうが、大戦直後にこうなっては流石に限界だ。
「はぁ…」
空を見る。
空は薄っすらと明るくなっていて綺麗な朝焼けの風景が視界に広がっていおりとても美しい。
体から力が抜け落ちる、余りにも眠い。少し仮眠を取ろうか、少しくらい良いだろう。
「…」
俺は廃村となった村が朝焼けに染まるのを眺めながら瞼を落とした。




