10.乾杯!
「サリン様のご生還を祝して!」
「「「乾杯!」」」
姫様のご生還を祝したパーティーが始まった。戦にて本当に勝利したのかわからない現状ではこれが精一杯だった。勝手に戦勝会でも始めて、もし負けていたらマズイ事になる。
「ささ、おのみになってくだされ。」
酒の入った杯を寄越された。酒なんてここ最近飲めなかったので嬉しい。
「ありがとうございます」
兜の口元を開き酒を呑む
このような時に鎧を脱がないのは失礼かもしれないが、いざという時に困るので仕方ない。
「サリン様もどうぞ」
アド氏のふくよかな奥様が姫様に酒を勧めている
「いえ…お酒は苦手ですの」
「…そんな事言わずに、良いものですよ?」
しつこいなコイツ、姫様は不要と仰っているではないか。
「お気持ちだけ頂きますわ」
姫様はこんな時でも表情を崩されない。そういう教育を受けて来たのだろうか?
「そう…ですか」
しつこいのは諦めたのか食事に戻っていった。初めからそうすれば良いものを…
陽気な雰囲気でパーティーは盛り上がっている。生き残った俺たちより盛り上がっている…。にしても結構な人数がいる、ぱっと見20人は居るだろうか?こんな狭い家に20人は正直狭い。
「……?」
なんだ?身体が痺れて視界が狭くなっていく…
「…やっと効いてきたか化け物め」
ボソッと、そう呟くのが聞こえた。
「あ…グ」
不味い、毒か…
…姫様は!?
「どうなさいました?」
ナイフとフォークはまだ綺麗なままで置いてある。食事に一切手をつけていないのか、良かった。
「失礼し…ます…」
「ひぁん!?」
痺れる身体を無理やり動かして姫様を抱きかかえる。
「っ!動けるのかっ!」
長老の声が聞こえるが無視して自身に強化魔術を施す。あの戦いからしばらく経っているからこれくらいの魔術は問題ない。
「逃げます…姫様」
「お任せしますわね」
長老の家の壁を蹴り破る。身体強化をしなくとも装着している重装鎧のおかげで煉瓦造りの壁程度なら簡単に破壊できるが、とにかく今は姫様を守らなくてはならない為万全を期す。
外に出て本来出るべきだったドアの方を見ると何人もの武装した男達が待ち構えているのが見えた。
「なん…!?おい!追いかけろ!」
男達と兜ごしに目が合うと彼らはすぐさま追いかけてきた。
今は姫様の安全の為にも逃げなくては。
「は…はァ…ぐ…ウ」
身体が痺れて呼吸が乱れる、長くは逃げられなさそうだ、何とかしなくては。
走っていると頑丈そうな物置小屋を発見した、ここなら逃げ回るより安全だろう。
「姫様…この中へ…何も聞こえなくなる…まで…出てきてはなりません」
「………わかりましたわ」
少しの沈黙の後、姫様はニッと微笑んだ。




