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彼女からの手紙。

お待たせしました。

 自分の関わっていた仕事が成功していると聞くと嬉しくなりますよね。少しでも自分が役立ったと言われると苦労した分だけ感動も一入でしょう。そうして、人は誰しも何かに関わっているのですから。それも人の生き方の一つですね。仕事に生きるも人生です。私も異世界で一つのライフワークを見出しました。この仕事は偉業となるでしょう。




 ドッドの家で師匠からの手紙を受け取った帰りに、竹の事が気になって伯父さんの家に立ち寄ったのだった。



 「おや? クラウスじゃないか。カレンとアンネなら奥で寝てるぞ?」

 「こんにちは、伯父さん。今日は二人に用があって来たんじゃないよ」

 双子はお昼寝中なんだろ。

 無理に起こさなくても良いよ。

 それに毎日面倒なんか見てられませんよ。


 「それなら私に会いに来てくれたのかしら?」

 「伯父さんに用があって来たんだよ。お姉ちゃん」

 ティアナも居たのね。

 君も相変わらずだな。


 「あら、残念ね。クラウスをお父さんに取られたわ」

 「はっはっは。後でティアに譲るから心配無いぞ?」

 おい、勝手に予約入れるなよ!

 俺は既に三ヶ月前に永遠の予約を入れてるんだ。

 師匠の熱いベーゼでな!

 あれは今思い出しても至福の瞬間であった。

 師匠の艶やかな唇が俺の唇に触れた。

 だけど、恥ずかしいからと俺の瞳を塞ぎ接吻したのだ。

 なんと奥ゆかしい。


 「それで? 今日は何の用かな?」

 「んとね。竹の問題はどうなったのかなって思い出したの」

 おっと。

 危ない、危ない。

 危うく師匠を思って、本題を忘れる所だったぜ。


 「そうか。そう言えばクラウスにも協力してもらったね。それじゃあ、どこまで話が進んだか教えようか」

 「ありがとう。伯父さん」

 「はい。お父さん、お茶」

 「ありがとう。ティア」

 何かしてるかと思ったら、お茶入れてたのかよ。

 中身は薄緑のハーブティーか。


 「まずは、竹林がどうなったかだね。これは三割くらいは伐採できたかな」

 「そんなに竹を切れたんだ」

 前は樵が怪我をして出来なかったとか言ってたよな?

 どうやって切り出したんだ?


 「ああ。私の知り合いの商人に竹の水筒を見せただろ? 売れると分かってもらえてね。お陰で人手が融通できたからな。アンリカ村の樵の代わりに伐採をしてくれたんだよ。今じゃ怪我も治って一緒に伐採しているだろうね」

 「あの時に竹の水筒を持ってきて良かったね」

 「そうね。クラウスのお陰ね」

 あの時はティアナも一緒に居たから納得の様子だな。

 素直に賞賛してくれるぜ。


 「そうだな。お陰でうちの村にも竹が運ばれるようになった」

 「どうやって運んでるの?」

 竹だけを運ぶのは、割に合わないんじゃない?


 「商人達は都市アスルからラグア村を通ってアンリカ村に向かうんだ。荷物をラグア村とアンリカ村に置いて行くから帰りは馬車が軽くなる。軽くなった馬車に竹を積んでこの村まで運んでもらうんだよ。そして、うちの村の食料と変わりに竹を交換するんだ。そうやって竹はこの村に運ばれてくる」

 「そうなんだー!」

 なるほど、なるほど。

 納得だな。

 この村に荷を降ろすついでに竹も降ろして行くと。

 多分、代金は竹の水筒と食料かな。


 「そして運ばれた竹を削って肥料にする。ここ最近になって漸く肥料にできそうなんだ。もう少ししたら良い具合になるから、幾つか畑を使って試そうと思う。これで上手くいけば増えた作物を売って税に当てられそうだ。上手くいったらだけど、ね」

 「本当にね。そうなったら、うちの村も少しは良くなるわね」

 父と娘共に村の責任者らしく将来を見据えてるのかね。

 甘い期待はしていないようだ。

 上手くいけば儲けものくらいに考えてる顔だね。


 「師匠の弟子としては上手くいって欲しいな」

 「ははは。上手く行かせてみせるさ。私に任せなさい。ここの村長だよ?」

 「お父さん。それ、お母さんに言い訳する時のと一緒よ?」

 おい、おい。

 娘にツッコミ入れられてるぞ。

 本当に大丈夫か?




 そして、ある程度の進捗状況を聞き出せた後に家に帰ることにした。竹の事とは別の不安を残して……。その不安とは勿論この村の村長の事だ。まあ、ヴェラさんがどうにかするだろう。




 俺は家に帰ると直ぐに師匠からの手紙を開ける事にした。


 「実に三ヶ月ぶりの師匠に関連する物だ。待ちわびたよ。本当にな」

 しみじみと思う。

 師匠の居ない間は物足りなかったと!


 「さっそく開けて見るか。何が書いてあるのかな?」

 俺への熱い思いが綴られているのでせうか?


 「なに、なに? 拝啓。クラウス様…」

 おお。

 字が読めるな。

 と言うか師匠が弟子に送るのに”様”なんて付けるのかね? 習慣でそうなってるのかな? まあ良いか続きを読もう。


 「お元気ですか。私は元気で過ごしております」

 なんだか随分簡単な挨拶の文だな。

 俺に合わせてくれたのかな?

 さて、ツッコミはいいから全部読むか。



 手紙に書かれていた内容は、どうやらお嬢様に関する事が半分を占めているみたいだ。手紙に拠ると、お嬢様に魔法を教える事は順調に進んでいる様だ。最初の一ヶ月は前に教えた事の復習をし。二ヶ月目には、前に教えきれなかった事を教え。三ヶ月経った今は、その成果を見ている状況だとか。その成果を伴いお嬢様の知人や信用できる友人に魔法を教えるのか。確かにお嬢様だけに教えても余り意味が無い。これは、お嬢様の上達ぶりで実績を積み。その実績で他の人に教える時にスムーズに教えられる様にするのだろう。信用も実績も無い人に教わるより。信用もあり実績もある人に教わる方が変な蟠りも起きないと云う物だな。師匠も苦労している御様子。出来る事なら今直ぐに助けに行きたい気分だ。



 「前に貴族の子弟に教えて辟易してたと言ってたからな。やり方を変えるんだろうな」

 今度その馬鹿貴族のボンボンに会ったら丸焼きにしてやる。

 我が愛しの師匠に余計な苦労掛けやがって。


 「お? やっと俺の事が書かれてるよ。師匠も焦らすのがお上手ですな」

 なんというテクニシャン。

 これは身悶える。


 「クラウス。君は私の教えを守って危ない事はしていないよね?」

 大丈夫ですよ師匠。

 このクラウス、師匠の言い付けは守っております。

 三ヶ月前の様に水素を使って木を吹き飛ばしたりなんてしてませんよ。あの時はやり過ぎたな。木の周りに水素と酸素をドーナツ状に魔力で固定したから爆発のエネルギーで木がロケットの様に打ち上げられたからな。まあ、村の外に向けてバラバラに飛んで行ったから村に被害は出なかったから良しとしよう。うむ。


 「君は私の教えを守っていると思う。それを信じている。君に貰った指輪を見つめながら信じているよ」

 おお! 師匠に信用されているのか!

 何と言う嬉しさか。

 そして然り気に指輪の事も書いていてくれてるし!

 でも何でかな? 信じてるって二度書かれてるのが少し引っかかるよ? 気のせいかな? うん。気のせいだな。


 「今は焦る事は無い。君は君に出来る事をやるんだ。焦って怪我をしたら、ご両親も悲しむだろう。私も悲しくなる」

 師匠の思いやりが文章から伺えます。

 感動で涙が禁じ得ないですよ。


 「だから、健やかに成長しクラウスが大きくなるまでは無理はしないで欲しい」

 しますとも成長しますとも。

 必ずや貧弱なソルジャーからキングへと成長します。

 待っていて下さいね師匠。


 「成長したその時には、私が必ず君を鍛え上げるから楽しみに待っているんだよ?」

 あれ? あれ、あれ? なんか引っかかるよ?

 急に風向きが怪しくなって来ましたよ?

 鍛える、の一文が妙な迫力を発してませんかね?


 「私もクラウスに会える事を楽しみにしている。君に貰った指輪を眺めながら待っています。それでは御身体に気を付けて下さい。無事を祈っています。君の師匠から。大切な弟子へ」

 うん。

 俺も楽しみに待っているよ。

 しかし、指輪って文字が二回も出るって事は相当喜んでもらえたみたいだな。

 やっぱり贈り物が師匠の心に俺の思いを届けてくれたのかね。

 照れるけど嬉しいぜ!


 「俺も師匠の事を待っているよ! この師匠の御髪を胸に抱いてな!」

 あの日。

 師匠を送り出した三日後の事だ。

 俺はベットの中から師匠の御髪を見つけ出したのだ。


 「そして”秘密の小部屋”を使って増やし続けたのだ」

 魔力を消費してな!


 「もちろん。やましい気持ちなど無いです」

 これは来るべき日の為に増やしているのだよ。

 もし、二人の間に子供が出来たとしよう。

 もしかすると俺の血を受け継いで金髪になるかもしれない。だが、それだと母親と髪の色が違うと子供が疑問に思うだろう。それでは師匠の立つ瀬がなくなる。折角の綺麗なグリーンゴールドの御髪を持っているのに子供に受け継がれなかったとなれば。その御髪も悲しみの色に染まり輝きを失うだろう。だから、その憂いを出来るだけ払拭する為に師匠の御髪を増やしカツラを作って上げようと云う壮大な計画なのだよ。グリーンゴールドのカツラが出来たら子供に被せて言って上げるんだ。「ほら、これでお母さんと一緒だろ?」と、そして優しく頭を撫でてやるのだ。その為に師匠の御髪を増やしているのだよ。


 「うむ。何も間違っていない。うん。完璧で壮大な計画だ。絶対に成功させてみせよう!」

 これは、我が聖戦の一助なり!

 これは、我が信念の一助なり!

 ああ、其は我が運命に打ち勝つ為の聖具なり!

 必ずや艱難辛苦を乗り越えて、この幸せを届けてみせようぞ!


 「ふう。この熱い思いよ! 遥か遠い師匠に届け!」

 この真っ直ぐな思いよ届け!

 師匠の御髪の様に真っ直ぐな思いよ届け!

 うむ。

 ベットにあったのは真っ直ぐな髪の毛だけだった。

 曲がった物など一つも無かった……。

 うむ。

 一つも無かったな……。




 そして少年は、今日も真っ直ぐに生きて行くのであった。

読んでくれて、ありがとうございます。


ヒロインからのお手紙でした。

主人公は微妙に信頼されている模様。


今日の話は日をまたぐ前に投稿したかったんですけどね。

話が長くなりすぎたので要らない箇所をぶった斬りしてスリムに纏めてみました。

長くてクドいと読みにくいかなと思いまして。

そしたらこんな時間になっちゃいました。


それでは次回もお会いしましょう!


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