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決闘の結末は?

お待たせしました。

 男には、やると決めたら、やらなきゃいけない事がある。愛する女性の為に勝たなきゃいけない勝負がある。だけど、男は外に出たら7人の敵が居ると言うが。まさかお嬢様がその刺客になるとは夢にも思わなかった。出来れば女性に手を挙げたくは無いが、立ち塞がると言うのなら。散らせて見せようその花を! 丁度花の名前だしな! 百合? だっけ…。違った薔薇か。




 村の北東。少し開けた人気の無い場所に俺達は来ていた。


 「それでは貴方の力を見せて……もらう前に、年上でもある私が先に披露しましょう」



 気の強そうな釣り目が睨んでくる。綺麗に梳かれた金髪を手で翻らせながら振り返り俺を睨んでくる。唇に朱を差し彼女は不満を満たした口調で言い放ってくる。今は不機嫌を隠しもしないが、これでも貴族の令嬢なのだ。何時もなら澄ました顔して淑女を演じているのだろう。白地に赤の刺繍を施された膝下まであるワンピースに身を包み。首元の青い宝石のブローチを輝かせ。赤く、燃え上がるように紅いマントを羽織り。それで笑顔で微笑んでいればお嬢様にも見えるだろう。今はそう見えないとしてもだ。



 「貴方の様な子供にも分かり易く。身の程というものを教えてあげましょう」



 気の強さは目だけではなく。

 その態度や言葉遣いからも見て取れる。

 一体何が彼女をそこまで駆り立てるのだろうか。



 「まずは火の魔法です。手頃な木々がありますからあれを的にしますわ」



 予め見当を付けて居たのだろう。

 少し大きな二階建ての家程の高さの木を標的に定めた。



 「私はお姉様に教えられた生徒の中では一番の実力なのです。しっかりとその目に焼き付けなさい」



 自信満々で見下して来るのはいいが、何をするのかくらいは聞いておこう。


 「ねー。火の魔法で何をするの?」

 「決まっています。魔法の精度と威力を見せるのです。短い木の枝を一本づつ焼き落とします」

 なんだ丸焼きにしてキャンプファイヤーするとかじゃないのか。


 「いきます」

 お手並み拝見しましょうか。

 ついでに魔眼で視てみよう。



 『火よ、赤く燃える我が願いを聞き、我に従い敵を撃て』



 彼女の夕日の様に赤く染まる魔力が火に変わってゆく。燃え上がる火の玉は彼女の周りをユラユラと漂いながら回る。その火の玉の数は五つ。赤く燃える火の玉は次々と木の枝に襲いかかる。火の玉は一段ずつ左右に下がりながら次々に枝を焼いていった。そして歯抜けの様な木が出来上がった。



 「どうですか? 他の枝を焼き落とす事なく短い枝だけを狙いましたわ。次は水魔法です」



 ローゼマリーは正確に短い枝だけを狙い魔法で排除したらしい。確かに精度は良いみたいで威力も申し分ない。



 『水よ、青く清廉なる我が願いを聞き、我に従い敵を撃て』



 次に放たれたのは水の魔法。青い魔力が水の玉を形作った。そして先程の火の魔法で焼かれた枝に次々と命中していった。この魔法も寸分も狂わずに燃えた枝に当たり枝の火を消していく。更に威力があるのか火を消しながら枝をへし折っている。水と言えばソフトなイメージがあるのに、このお嬢様だと暴力的に見えてしまう。


 「見ましたか? これが私の実力です!」

 「言うだけの事はあるね」

 これで間に土魔法でも挟んでたら信号機みたいなのにな。

 赤、黄、青とさ。

 さて、次は俺の番かな。


 「お待ちなさい。聞き捨てなりませんわね。貴方の物言いでは、物足りないとでも言っているようではありませんか!」

 「そんな事ないよ。十分見させてもらったよ?」

 子供にしては十分じゃないのかね?


 「お嬢様。既に十分な程の習熟かと思われます」

 「お黙りなさいアルフォンス! これは決闘です! 私が侮られる事は、即ち私の負けを意味します! シュミット家の娘として恥じない戦いをしなければなりません」

 もう十分じゃないかね? 護衛の人も、ああ言ってることだしさ。


 「ローゼお嬢様。これ以上は貴女の魔力が持たないでしょう。無理をする必要はありませんよ」

 「お姉様。お気遣い嬉しく思います。ですが、お姉様と離れてからも私は日々鍛えてきました。ご心配には及びません」

 師匠が言っても聞きそうにないな。

 一度火が付いたら手が付けられないって感じだな。

 プライドが高く、実力も有る。

 厄介だねぇ。


 「見ていなさい。貴方が反論の余地も無い程に差を見せ付けて上げますわ!」

 勝手にヒートアップしだしたよ。

 炎の少女、だなこりゃ。

 そう言えばあの本の続きはどうなったんだろ。

 あれにもエルフが出てたよな、最後まで読みたかったぜ。



 『火よ、かくと燃える我が願いを聞け、我が前に集いて至大なる焔となり――…』



 「詠唱が長いだけあって大きいな……」

 大人程もある大きさの火だな。

 最初に見た火が松明くらいだとしたらその差は有に5倍はありそうだ。

 でも、大丈夫なのかね? 維持出来るのか? 見てて辛そうだぞ?



 『…全てを焼き尽くせ!』



  そして炎は解き放たれた。その猛り狂う赤は、触れる全てを焼き尽くそうと木に向かって猛然と突き進む。その炎は確かに焼き尽くすだろう。だが、余りにも大きな魔法は使用者の魔力を根刮ぎ奪う。それはローゼマリーでも例外ではない。本来で有れば万全の状態で撃ち出される魔法なのだろう。しかし既に2度、魔法を行使している。ローゼマリーには既に幾らも魔力は残ってはいなかった。――だから魔法が制御仕切れないのも自明の理なのだ。そして炎が術者に向かって牙を剥く。



 「くっ。力が抜けてしまう……」

 やっぱり無理してんじゃん……ってヤバイぞ。

 魔力が途切れて炎が暴れだしてんじゃないの!


 「お嬢様!!」

 おい! 騎士の兄さん前に出て庇うだけじゃ無理だろ一緒に燃えるぞ!


 「ローゼお嬢様!」

 だぁー! 師匠も危ないから前に出ないでぇー!!


 「師匠危ないよ!」

 「しかしクラウス! 二人を見殺しには出来ない!」

 「ここは僕に任せてよ!」

 師匠の手を煩わせたりしませぬ!

 この様な火など今日、会得した能力で片付けてやるぜ!

 魔力フィールド全開!


 「これは火の魔法だ。それなら……」

 あの炎は魔力により形作られている。ならば普通に水で消そうとしても消しにくいだろう。だったらその魔力をどうにかしてやろうじゃないか。俺は魔力を視れる者だ。そして魔力の真理を掴んだ者だ。その俺に掴めぬ魔力など……無いっ!!! 俺の魔力が真っ赤に燃える!



 そして俺は前に出て荒れ狂う炎の魔力に自分自身の魔力を共鳴させた。赤く燃える魔力を同じく赤い魔力で強引に掴んだのだ。



 「危ない火遊びは……終わりだ!」

 こんな物騒な物使いやがって!

 こんなのは、っポイ! だっ!



 俺は掴んだ魔力を自分の魔力フィールドに沿って螺旋を描きながら振り回した。そのまま遠心力でも効かせる様に炎の魔法を引っ張っていく。そして全ての火を二人の前から剥し終わった直後に天高く撃ちだした。



 「ふう。危なかった」

 どれくらい危ないかと言うと。

 線香花火を纏めて100本燃やしたくらいに危なかったぜ。

 良い子は真似しちゃいけないよ?

 もちろん悪い子も、だ。


 「ク、クラウス。今のはいったい……」

 「師匠! やったよ!」

 貴方の一番弟子は無事に炎を退けましたよ!

 だから褒めてー。


 「あ、ああ。よくやった。だけど今のは…」

 「師匠を待ってる間に修行してたら出来る様になったの」

 正確には今朝出来たばかりですけどね。

 カレンの魔法を咄嗟に掴んで往なした事が始まりだ。

 この能力は相手の魔法の魔力を強引に奪い自分の制御下に置く。

 まさに魔力強奪である。

 マギ・スナッチとでも言えばいいのだろうか?


 「くっ。失敗してしまいましたわ…」

 「お嬢様。お怪我は有りませんか?」

 「私は大丈夫です。しかし詰めを誤りました」

 無理はいかんよ。無理は。


 「一応礼は言います。ありがとう」

 それでも高圧的でお礼されてる気がしませんね!


 「ですが、それとこれとは別です。勝負には関係ありません」

 「お嬢様それでは」

 「黙りなさいアルフォンス」

 「はっ」

 飽く迄も事故だったから勝負には関係ないと言いたいのね。

 プライドの高い貴族らしいと言いますか何と言いますか。


 「良いよ。僕は別に気にしないよ」

 どうせ見せないと納得しないだろうしね。


 「それでは見せて貰いましょう。お姉様の弟子に相応しいかどうか」

 「それじゃ風の魔法を使って見せるね」

 「いいでしょう。ですが風など火に勝てる訳がありません」

 勝てない時の言い訳なんだろ? って顔してるね。

 まあ見ていなさい。

 その認識を根底から覆してやるよ。


 「いくよー」

 でも適当な詠唱が思い付かないから詠唱は適当でいいか。


 「風よ、空にある風よ…」

 狙いは同じ短い枝で良いか。


 「ふん。風で何が出来ると言うのですか」

 はい、はい。

 黙って見てましょうね。


 「我が願いの下に集い、火を灯せ」

 そして魔力フィールドで一点に向けて一瞬の内に空気を圧縮、圧縮ぅ!

 そのまま燃え上がれ!


 「え!? どう言う事なのですか! なぜ風を使ったのに枝が燃えているのですか! 騙しましたね!」

 「騙してないよ? 風でも火は点くよ?」

 地球には空気を圧縮して火を点ける道具がある。

 それと同じ事をしたまでよ。



 そう空気というものは、只そこにあるだけでは燃はしない。そして空気とはそれだけで断熱効果を発揮する優れた断熱材だ。これが無ければ地球の裏側など一瞬の内に凍りつくだろう。その優れた断熱材も圧縮されると熱を生むのだ。何故知っているのかと言うと。これもアニメの影響だな。大気圏突入で燃え上がるとか何とか騒いでいたロボットに乗り始めの初心者少年が主人公のアニメだ。あのアニメで空気の摩擦で燃える、とか言ってて本当なのか最初は解らなかったが。後で調べてみたらどうやら少し違うらしい。あれは空気の圧縮された層が熱を生み。その熱と輻射加熱と言ったか。要するに空気の生む熱とその熱が伝わって出来た熱の両方で燃えるということらしい。うむ。よう分からん!



 「こんなの有りなのですか!? お姉様!!」

 「間違ってはいません。確かにクラウスは風を使いました。私はそれを感じましたから間違いありません」

 エルフならではの判定方法ですな。


 「くっ。分かりました。お姉様の言葉を信じましょう」

 俺は信じては貰えないのね。


 「それじゃあ次行くよー」

 燃えたままにしてたら危ないからね。

 次は水芸でございます。


 「水よ、我が願いを聞き集え…」

 近くの川を使うか。

 元々有る物を使えば魔力消費は格段に抑えられるからな!


 「次は水ですか…」

 当然って顔をしてるけど普通に消すだけじゃ味気ない。

 見せてあげましょう。

 師匠の為に会得した技を!


 「我は求める、霧となりて火を覆い尽くせ」

 霧魔法ですよ! 霧魔法!


 「な!? そんな馬鹿な! なんなのですかこれは!!」

 はっはっは。霧に隠れて一寸先も見えまい。

 霧魔法で枝の燃えた木ごと包んであげたよ。

 これぞまさに五里霧中なり。


 「やっぱりこうなったか……」

 師匠? お気に召さなかったのですかな?

 然らば霧を打ち消しましょう。


 「くっ。ようやく見える様になりましたか」

 「これでどうかな? 火は消えたよね」

 「確かに消えましたね……」

 そうでしょう。そうでしょう。


 「ですが…」

 なんね? まだあるんかね?


 「こんな物は小手先だけのことでしょう! もっと凄い物を見せなければ納得しません!」

 やれやれ。

 なんだか最初から認める気がないみたいな言い方だな。

 しょうがない。

 見せて上げましょう。

 これ以上ない力の差を!


 「お嬢様。既に十分かと」

 「いいえ。私は認めません! 認めてなるものですか!」

 苦労してるね護衛の兄さんよ。


 「見せても良いけど。もっと下がってくれる?」

 「クラウス? もう少し穏便に済ませてくれないかな?」

 「んー。でも見せないとダメって言うと思うよ?」

 師匠が言っても聞きそうにないんだからさ。

 一回ガツンと見せた方がいいよ。


 「分かりましたわ! 下がればよろしいのでしょう! アル下がりますわよ」

 「はい。お嬢様」

 そうそう。

 危なくなるから下がって下さい。


 「それじゃあいくね!」

 どでかい花火を上げて見せよう。

 水に濡れた木を使ってな!


 「水よ、漂う水よ我が願いを聞き二つのことわりに分かれよ…」

 水を酸素と水素に分けましょう。


 「一体何をするというのですか」

 簡単な理科の実験です。

 良し。

 酸素と水素に分かれたな。

 それを木の周りに留めよう。


 「風よ、空にある風よ我が願いの下に集い、火を灯せ」

 そして着火です。




 そして自然の摂理に従い燃え上がるのだが、少しやり過ぎてしまった様だ。魔力フィールドにより分解された水が水素と酸素になり。そこに火を点けたのだ。何時もより余計に燃え上がってしまうのは言うまでもない。一瞬の轟音と爆炎と熱風が辺りを震撼させた。木は上に向かって粉微塵に吹き飛び。衝撃波が周りの木々を揺らし、へし折り。一時の惨劇を見せることになった。そして退避していたにも関わらず衝撃で俺以外の者は皆ひっくり返っていた。




 「ふう。実験は成功だ」

 清々しい気分だ。

 見たまへ。

 お嬢様が無様にひっくり返って居るではないか。


 「ク、クラウス……」

 おや? 師匠の様子が……。


 「君って子は!!」

 ひぃ!? 怖い!




 この後、無茶苦茶怒られた。




 「まったく! これに懲りたら二度と使っちゃ駄目なんだからね!!」

 「すみません…」

 追記。

 師匠は怒ると鬼怖い。


 「……悔しですが。認めるしかないで様です」

 ん? 俺が怒られてる間に、ずっと俯いてたから何をしてるのかと思えば悔しがっていたのかね?


 「認めましょう。貴方は確かにお姉様の弟子として相応しいと」

 漸く認める気になったのか。


 「ですが、お姉様と一緒に居るのは私です。貴方はお姉様とは一緒には居られないのです」

 はい? 負け惜しみですか?


 「そんな事ないよね? 師匠」

 「いや、ローゼお嬢様の言う通りかもしれないんだ」

 ナシテ? ドウシテ? ソウナルノ?





 そして勝負の後の俺には、受け入れ難い現実が待って居た。

読んでくれて、ありがとうございます。


勝負には勝ちました! これ以上無い程の圧勝です。

でも?



それでは次回も会いましょう!

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