百合の薗に咲く薔薇?
お待たせしました。
決闘。それは二人の人間が事前に決められた通りに戦う事だ。古来より物事が拗れた場合に用いられる解決法だ。非常に合理的だが、命懸けだから不条理な解決法だと思う。日本では近代化が始まる前に禁止されて久しい。今の日本で決闘したら捕まるからね。やってはいけないよ? ただ見てただけの人も、知ってて場所を提供した人も罪に問われる。不条理だね。もう一度言うよ? 決闘ダメ! 絶対! だけど異世界では、そんな法律はないのでやるしかない。
双子を連れて家に帰る途中の事だ。
「クラウスにぃ~と、いっしょ~」
「……一緒」
君ら嬉しそうだね。
無邪気な5歳児らしいな。
……あんなにバンバン魔法を撃たなければね。
熱中して、俺にまで一発かましたとはとても思えん。
「二人とも魔法は人に向けて撃っちゃいけないよ。僕だから良かったけど」
「分かったわ! クラウスにぃ」
「……ごめんなさい。兄さん」
うんうん。反省してるならいいよアンネ。
……カレンも理解は出来るだろう。
だが、アンネよりカレンの一撃の方が危なかった。
アレを咄嗟に往なせたのは奇跡だったな。
あの能力は……。
「クラウスにぃ! 家の前に馬車があるわ!」
「……今日もお客様が沢山」
「へ? 馬車?」
なんね。
今朝も馬車があったけど昼もですか。
満員御礼ですな。
でも、今度の馬車は品が良いな。
白を基調に所々を赤と金の色彩で彩られている。
今朝のは酷かった。
黒を基調に全面が金ピカ蔦模様で車輪に至るまで金。
御者も黒に金ピカで無駄に偉そうだった。
だが、どうだろう。
この御者の兄ちゃんは上は赤、下は白の軍服を来て毅然とした感じが出てるね。軍人然としている。
「やあ君達、こんにちは。ここの家の子かな?」
人柄も良さそうだ。
「そうよ! わたしたちはここの子よ!」
「……私達のお父さんは、この村の村長です」
「ここの子だよ」
双子は伯父さんの子だ。
うむ。嘘は言ってない。
「そうか。今はうちのお嬢様がお邪魔してるから、少し他の人には遠慮して貰いたかったんだよ。この家の子なら構わないよ」
「「「はーい」」」
ん? お嬢様だぁ? いったい誰が来ているんだ?
少し覗いて行くか。
「誰が来てるのかな~…」
「クラウスにぃなんでかくれてるの?」
「……楽しそう?」
失敬な。
別に楽しんでませんよ。
『それは本当なのですか!? バートン殿』
え!? この声は! まさか!?
「ええ、本当ですよ。グリューン殿」
「なんとも厄介な事をしてくれる…」
やっぱり師匠だ!
「お帰りなさい! 師匠!」
「え? クラウス?」
ししょ~。
「そこの貴方。お待ちなさい」
お~?
誰だこいつ。
俺と師匠の間に立ちやがって。
「誰?」
金髪碧眼のちんまい幼女だな。
俺より少し上くらいか?
さっき聞いたお嬢様とか言う奴か?
見るからに金の掛かった服装してるし多分そうだろう。
「……貴方こそ誰ですか。名乗りなさい」
気の強さそうなお嬢様ですね!
「僕は、クラウス・バートン。師匠の一番弟子だよ!」
そして未来の伴侶でもある。
「バートンですか。それならこの家の子と言うことですか。ですが師匠とは誰の事です?」
「ローゼお嬢様。それは、私の事です。クラウスは私の弟子です」
「お姉様の弟子なのですか!?」
オネエサマ? ナニユッテンノコノコ。
師匠はエルフだぞ? 人族だからどう見ても違うだろ。
はっ!? そっち系の娘なの? 百合百合な人なの?
「私は聞いていませんよ!? どういう事ですかお姉様!」
「えっ? ど、どうしたのですかお嬢様? 何をそんなに怒っているのですか?」
なんだか師匠が分かってない様な感じに見えるな。
異世界には百合な文化は無いのかしら?
「私は認めません!」
あんたの承認はいらんがな。
師匠は俺の師匠だ。
弟子を決めるのは師匠だろ。
「落ち着いてください。お嬢様」
「落ち着けません! なぜ私は生徒で、こんな小さな子供が弟子なのですか!? 納得出来ません!」
生徒だって? 師匠が前に教えてた貴族の子女とかってコイツか。
「師匠。なんでこの人怒っているの?」
「いや、私にも何が何だか…」
「まだ話は終わってません。貴方はお姉様に近寄らないで!」
なんで師匠との接近まで指示されなきゃいけないのかね?
「お嬢様。場が混迷しております。ここは一旦落ち着かれた方が宜しいかと具申します」
「分かってます。アルフォンス。私はシュミット家の娘ですよ。貴方に言われるまでもありません」
お? そういやもう一人居たな。
騎士みたいな格好した優男が。
お嬢様のお付きの騎士なのか?
「師匠この人達誰なの?」
「私の雇い主であるジークリード・シュミット子爵閣下の御息女。ローゼマリー・シュミットお嬢様だ。それとお嬢様の護衛の騎士であるアルフォンス・ディーツ殿だ。今日は私がトモストに帰る折にご一緒になられたのだ」
「お姉様が絶えず立ち寄る村があるからと見に来たのです」
「へー」
師匠の雇い主の娘と護衛か。
しかし、本人は百合属性なのに名前が薔薇とは、これ如何に。
「それなのに立ち寄って見ればどうですか。お姉様の弟子を名乗る子供が居るなんて……」
寝耳に水だった、と。
そんなこと言われてもね~。
運命の出会いを果たした二人だから仕方ないのさ。
「私は認めません。だから…」
だから?
「貴方。私と決闘しなさい」
「へ?」
決闘? なんなのこの娘。
師匠を賭けての決闘? 手加減しませんよ?
「お嬢様?」
「お姉様、何も言わずに私にお任せ下さい。弟子として相応しいか私に見極めさせて下さい。そうでなければ納得が出来ません」
おうおう。
親の敵みたいに睨んで来ちゃって、そんなに師匠が好きなのか?
悪いがこの勝負は負ける訳にはいかないね。
「師匠。僕は構わないよ。大丈夫だから見ててよ」
「クラウス。そうは言うけどね仮にも貴族の子女に怪我をさせたとなったら大変な事になるんだよ?」
「お姉様。心配無用ですわ。何も野蛮に傷付け合う訳ではありません。魔法による勝負をするのですから」
「魔法で勝負なさるのですか?」
ほほう。あまり私を怒らせない方がいい。
「そうです。魔法による力比べです」
やめてよね。たかが一生徒が本気を出した弟子に敵うわけないだろう。
ボコボコにへこませてやんよ!
「お嬢様。貴族の子女が決闘等と外聞が悪いと思われますが?」
「アルフォンス黙りなさい。貴方は私の護衛でしょう? 貴方はいつから家令になったのかしら?」
「出過ぎた真似を致しました。申し訳ありません」
ご苦労さまだな。
雇い主の娘には逆らえないんだな。
「さあ、表に来なさい。貴方の力を見せるのです」
お嬢様は大層な自信をお持ちの様だ。
「クラウス」
「なあに? 師匠」
「間違っても怪我はするんじゃないよ。もちろん怪我させても駄目だ」
「安心してよ。師匠の弟子なんだから」
グウの音も出ない様にしますよ。
行ってきます。
「……クラウスだから安心出来ないんだけどな」
「グリューン殿。大丈夫なのですか?」
「私にはどうなるか分からないよ。アルフォンス殿」
そして俺と師匠の逢瀬の為に一番弟子の沽券を賭けた戦いが始まる。
女性だからなんだ。俺はエルフ以外ならグーで行けるゾ!
読んでくれて、ありがとうございます。
遂に出ました恋敵。
主人公の明日はどっちだ!
いや~この二人が出会うと収拾がつかない。
話を纏めるのに苦労しましたよ。
激しく罵り合ってしまって文字数が3倍くらいになったんですよ。
でもそれじゃ冗長になりすぎて話がおかしな方向に進むので削ってました。
それでは次回も会いましょう。




