その瞳に映る物は?
お待たせしました。
暑さが厳しい日は、水辺で水遊びと洒落こもうじゃないですか。冷房や乾いた空調の中では身体が鈍ってしまいます。まあ、文明の利器が無いので使えませんけどね! だから俺達は水辺で遊ぶのです。寧ろ遊んで上げている状態です。昔は親戚の子供の面倒なんか見てましたね。異世界に来ても然程変わらないようです。これなら師匠と一緒に水遊びしたいです。サービス回はまだかー!! ……失礼。取り乱していました。これも夏の暑さのせいですかね……。
師匠と離れ29日目の午後の昼下がり、俺は双子と共に魔法の練習をしていた。
「……少し分かったかも」
「むー…。分かんないわ」
双子といえど感じるものに違いはあるのだろう。
俺の教えた通りに感じるアンネ。
俺が教えて無いから分からないカレン。
彼女達が双子だとしても同じには出来ない。
「今日はここまでにしようか」
根を詰め過ぎるのも逆効果だろう。
「はーい! アンネ川であそびましょう!」
「……うん。今日も暑いから丁度いい」
暑い日には川遊びもいいね。
やっぱりドッドの家の近くで練習して良かったよ。
子供は川遊びしてて下さい。
俺は俺で日陰で休むから。
「ここらでいいかな」
日陰だし壁に寄りかかれるしな。
「ふう。双子と一緒に練習して、もう一週間くらいか」
少しは成長したのかね?
「あーあ。あんな白のワンピースで川遊びして大丈夫かね」
汚したらヴェラさんに怒られるんじゃね?
「無邪気だね」
スカート部分を少し掴み上げて川に足を突っ込んでいるよ。
「……その筋の方々には大興奮なんだろうな」
俺には正直ピンと来ない。
「俺はもっと成長して大きく実った方がいいと思うんだ」
たわわに実った形とか。
そう形……だ。
「形と言えば人の魔力の形がロウソクの火の様なのはなんでだろな…」
他の人達の魔力の宿る形が俺とは全然違うんだよな。
そう、俺の魔力だけは球体状の形になっているのだ。他の人が燃え上がるロウソクの火の様な形なのに対し、俺の魔力の形は丸い球の様なのだ。これは全村民の魔力を見たから確かだ。誰一人として同じ人が居なかった。無論、師匠の魔力もそうだった。
「そりゃ一人一人の魔力は微妙な違いは有るよ。だけどな……」
俺のだけ形が異常とも言えるんだよな。
その原因は何かって言ったら。
「やっぱり魔眼のせいなのかね?」
それしか考えられないよ。
俺は、俺の持つ魔眼の特性を正確に把握しては居なかったのではないかと思い始めている。魔眼は魔力を視るだけでは無いのではないか? まだ推測の域を出ないが一つの仮定を考えついた。
「魔眼は魔力の本質を視る目じゃないのかね」
だから蚊の化け物の考えが見えたんじゃないのか。
そうじゃなければアノ現象が説明出来ない。
断片的にとは言え視える筈がないよ。
この魔眼は魔力の本質を見抜く。だから真理を理解した俺は魔力を球体状に維持出来るんじゃないのか。だから新しい魔法を次々と作り出せているんじゃないのか。だから、この間の卵駆除の帰りの時も、みんなは何も言わなくても俺を中心にして固まって帰ったんじゃないのか。
「あの時、俺はショックを受けて咄嗟に身を守りたいと思った…」
そうじゃなけりゃティアナが後ろに付く筈がない。
普通ならカレンかアンネの手を取って並んで歩く。
だけど、そうじゃなかった。
真理を紐解いた俺の魔力は相手との同調や共鳴と言った事も可能にしていたんじゃないか。だから俺の魔力フィールド内に居た4人は俺を中心にして集まった。まるで訓練された兵士の様に。少しの乱れ無く流れる様に行動出来た。歩幅も間隔も一挙手一投足に至るまで全て統率が取れていた。
「もしかしたら俺を中心に全員の意識や行動が同期していた…とか」
だから、さっきもアンネだけは理解出来た。
大気中にある酸素だけを認識出来た。
そしてリンクを切っていたカレンは理解出来なかった。
「まさかゲームじゃあるまいしパーティーを組んで言葉が無くても意思疎通できるとか?」
それなら俺を頭にしたら完璧な集団戦が出来るぞ?
「まあ。既にやったけどな」
双子との協力魔法でな。
昨日の事だ。俺と双子は互いに別系統の属性魔法を『同時』に発動したのだ。カレンとアンネが火魔法を使い。俺は風魔法で圧縮した酸素の塊を的に向けて放った。結果は、標的にされた木が燃え上がった。大人3人分程もある高さの木が全焼したのだ。もちろん燃え移る前に俺が風魔法を使い。二酸化炭素で周りを覆って鎮火させた。
「一人で全部やるより楽で良かったけどな」
あれも合体魔法とか合成魔法とか言えるんだろかね。
威力が半端なかったな。
「そのせいで双子が大はしゃぎしてたっけな。凄い凄いって」
そう、今も川の浅い所ではしゃいでいる様にな。
「ロリコン紳士が絶賛しそうだな」
黙っていれば可憐に見える赤毛の三つ編みのカレン。
大人しく見える寡黙美少女な金髪の三つ編みのアンネ。
その二人が白のワンピース姿で水辺で戯れているのだ。
ああ。これを地球にいる紳士諸君に見せる事が出来ないのが残念でならん。
特にアンネは普段表情に変化が乏しいのだが、今は水の冷たさに喜んでいるのか微笑んでいる。
そのギャップにやられる紳士が多数いるだろう。
「まあ、俺は師匠がいるんで全然気にならないんですけどね」
近所の子供が水遊びしてるくらいの感覚だ。
微笑ましい限りだ。
「……なんだか考えが逸れたな」
なんだっけ?
あっ。魔力の同期か。
そう、今までの数々の事例から導き出された答えだ。そして新たに手にした能力。それは思考同期。これは集団戦の時に、その威力を発揮するだろう。ひ弱な雑兵だらけの集団も俺が統率すれば古兵ような連携を可能とする。そんな夢の様な能力なのだ。
「でも、これって戦争でもないと意味ないんだよな」
寧ろソレ以外での使用は注意が必要だ。
何故なら。この能力にはある種の危険が付き纏う。もしも同期が長く強く続いたとしたら人格に影響が出るのではないか? と言う危惧だ。洗脳や思想統一などの人格を無視した矯正をしてしまうのではないか。或いは情報過多で頭がやられてしまわないか。様々な危険が思いつく。情報過多は例えるなら、100年前の昔の人の頭に100年後の人間の様な膨大な情報をいきなり詰め込む様な事だ。それにより個人の自己同一性の崩壊を招かないとも言い切れない。
「それに人の人格を無視した強制は好きじゃないんだよね」
非常時でもない限りは無理に使いたくない。
「だから簡単な魔法の同期くらいに留めてるんだよな」
限定的な使用だけにしよう。
そして検証と調査を行なっていこう。危険だけを取り除き有用な物へと作り変えるのだ。
「さて、休憩はもういいかな」
俺も少し身体を動かそう。
回避力を上げる訓練でもしよう。
師匠との約束もあるしな!
何時もの訓練の開始。既に空中に漂う水の玉の数は3つを超える。その前に悠然と佇む幼児が一人。その表情は慣れた物と言った感じだ。変幻自在に軌道を変えて襲いかかる水の玉を物ともしない。宙に舞う木の葉の様に、風に吹かれる柳の様に、ヒラリユラリと躱して行く。その目は鋭く見据え。耳は風を切る音を捉え、手は風を感じ、足は大地の上に弧を描く。まるで螺旋を描く様な動きで襲い来る全てを躱し続ける。
「四つでも……躱せる……もんだな」
初めた頃は、二つ相手にするだけで手を焼いていた。それが今では4つ相手でも余裕の表情だ。その姿は自分自身を中空から俯瞰しているような。どこから来るか見えているような。流れるような動きを見せる。
「五つも行けるか?」
その言葉通り。水の玉が5つになっても動きが遅れる事はなかった。時間差を付けた連撃も、左右からの挟撃も、前後左右から来る攻撃も輪舞曲を踊る様に軽やかに回避して見せた。
「最後の一つも!」
半身になって回避だ。
「よし。ここまでで良いか」
これ以上は汗をかく。
「クラウスにぃ! すごーい!」
「……やっぱり兄さんは凄い」
なんね。
君達は水遊びはもういいのかね?
「わたしもやってみたいわ! クラウスにぃ! やって! やって!」
「……その次は私」
「分かった。分かりましたよ」
俺を使って水遊びをしたいのね。
「はやくー! 来て!」
「はいよー。行くよ?」
なんだかな~。
いよいよ子供を相手にの水遊びの様相を呈してきましたよ?
「きゃっー! こっちに来るー!!」
嬉しそうだね。
まあ、これはお遊びだから1個だけなんだよね。
「クラウスにぃ。おそーい! わたしには当たらないわ!」
そりゃ遅くしてますもの。
「あっ! 当たっちゃったわ」
そりゃ後ろを振り返ったら動き止まるからな。
お陰でお尻が濡れてしまったようだ。
可哀想なので乾かしてやろう。
「……次は私。頑張る」
アンネよ。
君は何を頑張るつもりなのか。
水遊びを全力で頑張るのかね?
「アンネ! がんばってー!」
カレンよりかは遅いけど何気に躱し続けてるね。
「あーっ! 当たっちゃったわ」
それでも時間の問題だったか。
「もっとやるわ! クラウスにぃ!」
「……次は二人一緒が良い」
「分かったよ。いくよー?」
君らの気が済むまで付き合いましょう。
その後三人の水遊びは双子の服が透けるまで続いた。
もちろん終わった時に乾かして上げた。
風邪をひかせる訳には行かないからね。
読んでくれて、ありがとうございます。
水着姿のエルフが見たい今日この頃です。
でも、現実は幼女の相手という。
それでは次回も会いましょう!




