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森の中に潜む幽霊。

お待たせしました。

 終わり良ければ全て良し。物事の途中の過程は些細な事で、最後の締めがもっとも大事だとか誰か偉い人が言っていた。確かにそうだ。どんなに勝利を重ねても最終的に負ければ、ご破産なのだ。それは異世界に居ても変わらない事だと、俺は知っている。だから俺達は今回の騒動の結末を迎えに森まで出向いたのだが……。




 俺は伯父さんの家に泊まり、朝食まで頂くことになった。


 「おはようございます」

 「ああ。おはようクラウス」

 伯父さんはいつも通りだな。


 「……兄さんおはよう」

 「クラウスにぃおはよう!」

 双子もいつも通りだ。


 「調子は良くなったようだね。クラウス」

 「うん。元気になったよヴェラさん」

 「それなら私の手伝いをしてもらおうかしら」

 ティアナもいつも通り容赦無い。

 さすがは、ヴェラさんの娘や。


 「あれ? ヘンリックお兄さんは?」

 確か長男が居たはずなのだが? 居ないのか?


 「ヘンリックにぃはね。お爺ちゃんのお家でまなんでいるわ」

 「……長男として教え甲斐があるとか言って連れていかれたの」

 「そうなんだ」

 あの暑苦しい人でも居ないと静というか寂しいというか。


 「さあ、みんな揃ったわね? それじゃあ頂こうかしらね」

 「クラウスにぃはこっちにきて!」

 「……私達の間」

 「貴方たちは本当に仲が良いわよね。お姉さんも混ぜて欲しいな」

 「それじゃあ作物を作ってくれた人達に感謝して頂こうか」

 そして家長の言葉で朝食が始まる。

 まるで、何事も無かったように普通に日常が始まる。

 幼女神との事も夢だったように。

 存在しなかった様に……ん?

 存在しない。

 あれ? 何か忘れてる。


 「あっ! テオお兄ちゃんは居ないの?」

 「「「「「あっ!」」」」」

 ……家族なのに忘れるなよ。



 件のテオは、アンネが部屋から連れて来た。どうやら部屋の中でボーッとして居たらしい。相変わらず何を考えているのかさっぱり分からん。いつもならアンネが連れて来るらしいのだが、どうやら俺に気が向いていたのか忘れてしまったのだ。その後、恙無く朝食は終わり家族の揃った朝の団欒が過ぎて行った。


 そして、俺の前に伯父さんが居る。



 「クラウス。伯父として言う事は一つだ。君はまだ子供だ。子供なのだから無理はしてはいけない。君が無理をしたら君を思う人達に心配をかけることになる。無論。その人達の中には私達家族も含まれる。君なら私の言う事は分かるね?」

 「はい。本当にごめんなさい」

 心配をお掛けして申し訳ない。伯父さんの言葉が胸に少し刺さるね。これも封印を一つ解いた影響かな。後悔ってやつが心に棘を刺すのかね。


 「うん。反省しているようだね。これに懲りたら……と、言いたいけど。男ならある程度は仕方ないとは思う。私も昔はそうだった。だから周りに心配をかけない様に自由に動きなさい。分かったかな?」

 「はい!」

 「それなら、この事はトリスとクラウディアにはクラウスが大人になった時に酒の席で話そう。そして笑える昔話にして御終いだ」

 「伯父さんありがとう!」

 そうだよな言わないなんて出来ない。だけど、言うのは今じゃない。俺が大人になった時に責任を持って怒られなさいって事なんだろうな。流石は人の上に立ち纏める村長だ。落としどころも心得ている。


 「あんたも甥っ子には甘いわね。まあ、男の面子って物を守るのも女の嗜みだからね。あたしからは言わないでおくわ。その代わり後でシッカリと怒られなさいクラウス」

 「はい」

 ヴェラさんお心遣い感謝します。


 「おはよう! 朝っぱらからすまねぇな。クラウスは起きてるか?」

 「どうやら迎えが来たみたいだね? クラウス。ドッドさんにも礼を言いなさい。いいね?」

 「分かったよ! 伯父さん」

 ドッドには世話になりっぱなしだからね。


 「おはよう。それとありがとうドッド」

 「良いってことよ。それじゃあ送ってやるよ。行くぞ」

 「うん」

 マザーとダディにおはようと言わないとな。


 「わたしたちも付いて行くわ!」

 「……付いて行く」

 「そうだね。二人はクラウスに付いて行ってあげなさい」

 何を言っているのかね? 伯父さんよ。


 「そうだねぇ。二人がクラウスの面倒を見たんだから、クラウスは二人の面倒を見なきゃいけないねぇ」

 ヴェラさんまで!?

 それ、なんて等価交換ですか!?


 「私が右!」

 「……私は左」

 驚いている間に捕獲されてもうた。


 「行くぞ」

 そして有無を言わさず連行されると……。



 俺は双子に心配を掛けたのだからと諦めながら家まで連れて行かれた。その道中…。



 「クラウス。少し良いか? 二人ともすまねぇが、クラウスを少し借りるぞ」

 「分かったわ!」

 「……うん」

 ドッドよ。なんかあるのかね?


 「どうしたの? ドッド」

 「ああ。昨日のアレの話だ。クラウス、お前はアレで全部だと思うか? 俺にはそうは思えねぇ」

 「……確かに。アレの仲間の中に少し大きいのが居たよね。もしかしたら森の中に卵があるかもしれない。」

 「だよな」

 ああ。そういう事か。


 「潰すの?」

 「やっといた方がいいだろ。今日は、このままお前を送ったら森に入ってみるつもりだ。」

 「森にいくの!? わたしも行きたい!」

 「……私も行く」

 げえっ。双子が森に入りたいだと?


 「クラウスは森に入らないんだぞ?」

 「そうそう僕は行かないよ」

 「あたりまえよ! クラウスにぃはたおれたんだから、お家でねるのよ」

 「……私達も魔法の練習をする。だから森に行く」

 俺が目当てじゃないのかよ。

 だけど二人を森に入れたら何があるか分かんないな。

 しょうがない…。


 「やっぱり僕も行くよ。お父さんとお母さんに言ってから森に行こうドッド」

 「お? おう。クラウスがいいんなら構わねぇよ」

 ドッドも双子だけを森に入れるより一緒に行った方がいい事に気付いたみたいだな。


 「それならみんなで行きましょ!」

 「……楽しみ」

 思わぬおまけを伴っての調査になりそうだな。

 先が思いやられるぜ。



 思い立ったが吉日か。俺達は急いで家に向かった。家にはダディとマザーが居て、おはようの挨拶をして伯父さんの家で大人しくしていたのか? とか色々聞かれた。だから大人しくしていましたよ、と言っておいた。大人しく気絶してたなんて言えないからな! 挨拶を済ませてから自室で着替えて準備を整えた。帰ったばかりなのに行ってきますと慌ただしく挨拶をして、マザーに頭を撫でてもらいながら送り出された。




 そして俺達は西の森の入口に立っているのだが……。


 「カレン、アンネ。俺の後を付いてくるんだぞ。決して脇道にふらふらと入っていくんじゃねーぞ? 分かったな」

 「「はい!」」

 双子はドッドに任せれば良いか。

 それなら俺は魔眼でイビルモスキートの卵探しと行きますか。

 魔眼発動!


 「んー…森の外側には無いね」

 「クラウス。俺は二人の事を見てるから頼んだぞ」

 「うん。任せてよ」

 さて、みんな仲良く森の中へと入りますかね。

 その前に……。


 「そんな所で何をしてるの? お姉ちゃん」

 「何の為かと聞かれれば、クラウスを見守る為かしらね?」

 貴女は何とか団か何かですか? ティアナさんや。

 付いて来てるのが魔力でバレバレですよ。


 「本当は、貴方たちが森に向かうのが見えたから付いて来たのよ」

 「だと思ったよ」

 面白そうな事が好きな顔してるもんね。


 「ほら。三人に付いて行くわよ。逸れない様に手を繋ぐのよ」

 「はーい」

 やれやれ、前途多難だな。



 森の中に分け入る俺達の間に一人おまけが分け行ってきたが気にせず探索を続けるのだった。森に入って少しした頃に沼や水たまりの中に卵を見つけた。それらはドッドに言ってから双子の魔法の的になった。火魔法で交互に煮立たせて熱湯消毒したのだ。ティアナもティアナで面白そうだからと仲間入りしていた。意外と上手に焼いていたいたので、彼女は魔法の素質があるのかもしれない。それでも最後はドッドにシッカリ焼きを入れてもらった。俺? 俺は魔眼で卵を探す係りだ。小川の中や、小さな沼に水たまりを隈無く探し出し、奴らの卵の在り処を詳らかにして行った。



 「ふう。これで最後か? 随分多かったもんだな。結局昼までかかったぞ」

 「お疲れ様、ドッド。殆んど森の全部を見たもんね」

 「楽しかったわ! クラウスにぃ」

 「……うん。村の中じゃ中々出来ない」

 「カレンにアンネ。二人ともいつの間に魔法が上手になったのかしら」

 ドワーフじゃ! ドワーフの仕業じゃ!


 「先生が優秀なんだよ、ね! ドッド」

 「まあ、なんだ。出来が良かったんだろ。多分」

 「そうなのかしら?」

 ティアナさんは半信半疑ですか。


 「おしえかたが上手なのよ! ね! クラウスにぃ」

 「……うん。凄かった」

 双子も何とか合わせてくれるらしい。


 「まあ、そういうことにしましょう。それより早く帰りましょうか。もうすぐお昼よ」

 「お腹がすいたわね! かえりましょう!」

 「……帰ろう。兄さん」

 「うん。もう帰ろっか」

 そして双子に連行されて行くのでした。

 チャン、チャン。

 ん? どうしたのだい? ドッド。


 「……お前ら動くな。…嫌な気配が近づいてきやがる。周りに注意しろ!」

 「どうしたの? ドッド」

 そんな怖い顔して、厳い顔が余計に怖くなってるぜ?


 「魔獣を倒した時に出るゴーストの気配がするんだよ。まさかとは思ったが卵を潰しても出やがるのか。厄介な卵だぜ」

 「何それ? あれ? じゃあ昨日は……」

 「ああ。クラウスが気を失った後に出やがったから俺が焼いて消した」

 マジですか!? じゃあ何? 俺は危機的状況下だったわけ? やっぱりドッドと一緒で良かったわ! 一人なら死んでたかもしれん!


 「来るぞ」

 それが本当なら魔眼で視るか。


 「うわぁー…。何か黒い靄みたいなのが見えるよ」

 「それはゴーストの成りかけだ。何か叫んだりするが気にせずに燃やしてしまえ」

 「何か話すの?」

 「ああ。だが全然訳が分からねぇ」

 ほほぅ。分からないのか。

 だけど俺には神から授かった力がある。

 何か分かるかもしれない。

 だから注意して聞いてみよう。


 「……囲まれているな。お前ら固まって背中を見せるなよ」

 「分かった」

 円陣を組んで周りを見るんだな。

 三姉妹も理解したようだな。


 「来たわ! クラウスにぃ」

 「……気持ち悪い」

 ん? 双子の方に動きがあったみたいだな。

 何か話すかもしれん。

 一言も聞き逃すものか!



 そして俺は無念の念を抱き彷徨えるこの世のゴーストの声無き声に耳を傾けるのだった。果たしてゴーストは囁き出した。俺は異世界で初のゴーストの声を聞くことになったのだが……。



 《ぶひぃぃい! よ、ようじょに罵られたでござるぅうう! 我らの業界ではご褒美です! キリッ!》



 俺は頭を抱えたくなった。割と本気で。


 「……何を言ってるか分からないけど」

 「うん。きもちわるいから消えてほしいわ!」

 俺も双子の意見に賛成だ。

 だから、早く燃えて消えれば良いよ。

 双子も火魔法で消すつもりだな。


 《うわあぁあ! ようじょ……つよい……》


 消える間際まで、やかましいゴーストだな……。


 「燃え尽きやがれ!」

 ドッドの方にも来たみたいだ。


 《ああぁあん。逞しい肉体美ぃぃいい。貴方になら焼かれても構わないわ! 寧ろ一緒に燃え上がりましょう!》


 なんで野太いオッサンの声なんだよ……。


 「こっちにも来たわ。これって燃えるのよね?」

 今度はティアナか。


 《ぐひひ。ようじょ……なんだBBAか。一桁以外は興味ないんで、ちぇんじお願いします》


 「お姉ちゃん。早く燃やせばいいよ。この世界の為に」

 「分かったわ! クラウス! 私も何故かそう思うの」

 そして悪は滅びた。塵も残さず燃え尽きた。


 「ふう。何故か清々したわね」

 だろうね。

 罵られていたんだから。


 《うふふ……》


 どうやら俺の方にも来たみたいだ…。


 《貴方良いわぁ。女装して男の娘になってみない? それで逞しい男の人と絡んで……》


 俺は即座に浄化魔法を発動した。

 光の速さで浄化した。

 最後まで言わさず浄化した。

 腐敗した邪念は光に照らされて消え去った。


 「クラウス。どうしたの? 倒せたのに顔色悪いわよ?」

 「何でもないよ。お姉ちゃん。少し悪い夢を見たんだ…」

 「そお? 気をつけなさいね。苦しかったら言うのよ?」

 ああ。その優しさで忘れられそうですよ。


 「ふう。どうやら片付いたみてぇだな! ゴーストのなり立てだから弱かったようだ」

 ドッドが昨日倒した奴らが何を叫んでたのか聞かなくて良かった気がする。


 「みんな。帰ろう。今日は疲れたよ」

 「さんせいね! 帰りましょう。クラウスにぃ」

 「……うん。帰ろう。私は左」

 そしてカレンは右ね。

 そしてドッドが先頭に立って行くと。

 ティアナは後ろか…インペリアルクロスか?




 そして俺達は強固な陣形のまま村へと帰ったのだった。

 ……少しの謎を残して。

読んでくれて、ありがとうございます。


謎が謎を呼ぶ話でした。

幽霊の正体はいったいなんなのか!?

…知らなくても良さそうな気はします。


それでは次回も会いましょう!

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