秘密の小部屋。
お待たせしました。
人は、生きていれば様々な秘密がある。誰にも言えない仕事の秘密とか。人間関係で実は苦手だけど付き合わなければいけない。その葛藤を胸に秘めているとか。好きな人に告白出来ないなど甘酸っぱい秘密とか。そんな秘密を抱えながら誰しも生きている。そんな秘密を押し込める部屋が欲しいですよね。少し他人と違った性趣向も隠したいですよね。私は隠せるのだろうか。
一言で神代の力と言っても色々ある。
「なになに? 千世一無? なにこれ」
文字だけじゃ何が何だか分からないな。
「ほほぅ。それを選ぶか。中々に豪胆じゃな。それは凄いぞ」
「…何か嫌な予感がするので詳細を求む」
この幼女が嬉しそうにしている時は決まって危ない気がする。
「うむ。千世一無これはじゃな。とても恐ろしい力じゃ。世界を…、正確に言えば星を千回破壊できる攻撃を一点に集約して放つ攻撃じゃ。この攻撃を受ける対象は、刹那の間に星を破壊出来る千の攻撃を受けて、この世から消滅するのじゃな。千の世界を一つ残さず無にする。何者も抗うことができぬ、まさに天地開闢の様な力じゃな」
「神様、神様? 危なすぎるんじゃないんですかね? 正気ですか!? 貴女が君臨する前に世界が壊滅するじゃないですか!」
この幼女神は大丈夫なのか!?
「構わん。どうせそこまでの魔力は持ち得ないであろう? 今のお主の魔力量では、そうそう恐れる程でもない」
「そうなのか? なら良かったわ」
いきなり星を千回消せるとか物騒極まりないぞ。
「精々が犬小屋を千回破壊する程度じゃ」
「……何だか程度が低くなったのは理解出来るけど破壊力が分かりませんよ?」
スケールダウンしたのは分かる。うん。
「そうじゃな。お主に分かりやすく言うとじゃな。三階建てのビルを跡形もなく消せる程度じゃな」
「十分に物騒だよ!」
最初からそう言えばいいんだよ!
「大丈夫じゃよ。そうそう放てる力ではない。魔力を九割消費するからな」
「実質一回こっきりの力じゃないですか。どうせ使ったら一日中魔力が回復しないとかのペナルティも付いているんだろ?」
この幼女の用意する力だからな。
「我がそのような粗末な力を授ける訳がなかろう。まあ魔力を九割消費するから? 魔力を回復するまで何も出来ぬがな。何か一つでも魔法を使えば気を失うであろう。今回お主が倒れた様にな」
「変なペナルティが無いならいいけどさ。それと最後さらっと流そうとしたけど、おかしくないですかね? 俺は確か魔力を一割残してた筈だよ? 気を失う様な事にはならなかったんじゃないの?」
そうだよ気を失う筈が無いんだよ。
「お主は神の石に触れたであろう? アレは使えば微弱ながら魔力を消費するのだぞ?」
「だから最初に言ってくれよ! 不親切設計にも程があるだろ!」
「詰めの甘いお主の事だから、どうせ教えても忘れておったであろう? そして未熟な身体を酷使して、魔力の消耗で意識が保てなくなるのは目に見えておるわ」
くっ。的を射ているだけに反論できん。
やっぱり幼女は容赦ないな!
「それで? この力にするのか?」
「いや、他も見るよ。他に良さそうな物が無いか見ないとね」
大地に12mくらいのクレーターを穿つ幼児とか見たくないわ。
「閃空飛翔、胡乱慧眼、現し世巡り、回顧目録、うん。字面から何とか意味は分かりそうだな。ちなみに聞くけどさ閃空飛翔ってどんな力なの?」
「それか、それは空を飛び回れる力じゃな。古来から人は空を飛ぶ鳥の様に、自由に空を飛びたがっていたであろう? それらは人が望んだ力じゃな。お主もそうであろう?」
「まあ、そうなんですけどね。……でも少し納得行かないな。閃って字が引っかかると言うか何と言うか」
何か危険な香りがするんだよな。気のせいか?
「ふむ。お主も意外と慎重なのだな。よろしい、その不安を払拭してやろう。それは文字通り亜光速で飛び回る力じゃ。星の重力を物ともせず一瞬の内に星の衛星軌道上に到達するであろう」
「おい、おい! それ危なすぎね? だいいちに人の身体で耐えられるの?」
「その力が発動している間は力に護られておるから無事じゃよ。まあ大地の上で使えば物に衝突した瞬間に極大エネルギーが発生して大陸が一つ融解するかもしれん。不幸な事故じゃな」
「不幸すぎるだろうが!!!」
阿呆か!? 空を飛ぶ代償に大陸消し飛ばしてたら世界が滅ぶぞ!
空を飛びたい欲求で世界がやばいとか冗談じゃない。
それに全然不安を払拭出来てないし!
「お主の魔力量なら、そこまでの危険もあるまい。お主が理解出来る単位で言えば時速五百キロと言った感じかの? その速度で六分間は空を飛べる。その際には時間の感覚が引き伸ばされ思考速度が飛躍的に上がり、お主を補佐してくれる」
「それは魔力一割を残した計算なのか?」
「そうじゃな。魔力が残り一割に達する前に自動で解除される」
一応考えられてはいるんだな。
……でもなぁ。
「それって飛んでる最中に解除されたら……」
「もちろん落ちるじゃろうな」
ですよねー。
「もういい。次だ次!」
危なくて仕方ない。
うん? これは……。
「精気性豪……。こっこれはまさか…」
字面からするとアレですかね? いわゆる18禁な。ひ弱な新兵も国を治める皇帝になれるアレですか? 俺のソルジャーもクラスチェンジでエンペラーに成れるのか!? キングを飛び越してエンペラーに! 兵士の夢だね。間違っても英語に直してはイケナイ。
「なんじゃ。お主はそんなものが欲しいのか? 若いうちからそんなものに頼ってはいかんぞ?」
「ベツニイイジャナーイ。それより効果はどうなのよ?」
どんな効果か教えて神様!
「間の抜けた心が透けて見えるが……まあいい教えてやろう。その力は萎える事を知らぬ性に対する豪の者になれる力じゃな。どのような種族の者でも孕ませる事ができよう。この世界には数が少ないが獣人も孕ませる事が出来る。もちろんエルフもじゃな」
「な! なん…だと!? 今なんと申されたか? 神よ!」
最後に大事な事を言わなかったか!?
「ん? じゃからどのような種族でもと…」
「違う! 最後の言葉だよ! エルフがどうとか」
「ああ。エルフも孕ませると言ったな」
「と言うことは、だ。人族ではエルフとの間に子供は……」
「出来ぬであろうな。なんじゃ知らなんだのか?」
「ノオォオオオォオオ!!! ジーザス! なんてこったい!!!! 俺と師匠の間には子供が生まれないのか!! 馬鹿な!!! ありえねぇええええええええええ!!!! 誰か嘘だと言ってよ!!! 神ーーー!!!」
俺の、俺の夢の人生設計があ!!!!!!
嘘だ!!!
「なんじゃ。気でも違ったか? おかしいな……直せたと思ったのだがな」
「嘘だ……馬鹿な……だって師匠は…結婚……俺と……」
そう言えば何だか微笑ましい物でも見るような眼差しだった。
それはあれか? 人族とエルフでは子は生まれないけど添い遂げる事は出来るよね。みたいなそう言う気遣いからくる眼差しだったとでも言うのか? ハハハ、なんてピエロだったんだ。俺は出来もしない事を皮算用していた間抜けだったのか? そして師匠は可哀想と思いながらも優しく接してくれていたのか。周りの人達も子供の夢を壊さない様にと見守ってくれていたのか? なんと惨めなものだろうか。
「お゛っお゛ぅ、え゛っぐ、う゛ぅうぅ」
「何もその様に滂沱の涙を流さんでもよかろう。何か問題があるのならば解決の糸口を探せばよかろう」
「だっでじじょう゛どごども゛がでぎな゛い゛んだな゛んでじら゛ながっだん゛だも゛ん゛」
「まずは涙を拭わぬか。赤子でもあるまいし。ほれ、チーンするんじゃ」
何故か幼女神が母親の様にも見える。
傷心故の気まぐれか。
ふう。余りの衝撃に我を忘れていた様だ。
「それで、お主は射止めたい女子と巡り会ったのか? それがエルフだったと?」
「うん…」
「確かにエルフとの間には子は授かれんな。なら先程の力をと言いたいが……」
「五つ目の封印の解除が必要って書いてありますよね…」
「そうじゃな。それでも授かる事が出来るではないか」
「その時に必要な魂の数は?」
「そうじゃな。その時の値づつ加算されて行くから……千五百と言ったところかな?」
「やっぱりな! こーゆう物の場合は絶対に何かあると思ったぜ!」
玄人設定もいい加減にして欲しいよ!
だけど、まだ何かありそうだ……。
もしも集めた魂で鍵を作ると言うなら…。
「残り合計で三千四百…と言う事だろ?」
「正解じゃ。規定値まで集めれば零に戻る事も考慮されておる。中々に鋭いな」
「どちくしょうめ!!! 何が鋭いな? だ!」
何が母親に見えるだ。こいつは邪神だ!
上げてから落とす邪神なり!
「これじゃ五つ目の封印を解くまでお預けじゃないですか!!! 師匠との間に子供が出来ないじゃないですか!!」
「なら諦めるとでも言うのか?」
「絶対に諦めねぇえ!!!」
諦めてなるものか!
「それなら精進致せ。さすればお主の望みも叶えられよう」
「おう! ぜってーに叶えてみせる!」
待っていてくれ師匠! 俺はやってやるぜ!
「あれ? それならこの世界にはハーフエルフとかってのは居ないの?」
「うむ。この世界に居る人族は元々はこの世界の生き物じゃが、エルフは少しばかり事情が違うな。元々は神が生み出した別の存在じゃ。更に、その存在に生み出されておるからな。別種族との繁殖なんぞ考えてもおらんかったのじゃろう」
「初まりのエルフか」
「おお。そうじゃ、それじゃな。その初まりのエルフが生み出したのが今この世界に生きるエルフの原型じゃな」
色々と複雑なのね。
「そろそろ頃合じゃな。決めたか?」
「あっ! 忘れてた」
「早う決めぬか」
衝撃の事実で忘れてたんだよ!
「んー…。これにする」
「ほう。ソレにするのか。何故と問うてもよいか?」
「一番危険性の低そうな能力に見えるから」
「お主も少しは学んだか」
「他のが恐ろしいだけじゃないですかね?」
他のが物騒なのだよ! 星を消すとか、飛んでいる間に落ちるとか。
「ぬ? どうやらあの娘が、お主を起こしに来たようじゃぞ。早く鍵と力を受け取れい!」
「え? ちょ、いきなりの急展開はもう勘弁して欲しいんだけど!?」
心休まる暇も無い!
「それと詳しい事聞いてないんだけど!」
「詳細は力を使った時にでも分かる様にする。じゃから早く受け取れ!」
「分かったよ! それじゃあ有り難く頂戴しますね!」
「うむ。また次の時にはゆるりと会おうぞ!」
時間があればな!
そして俺は慌ただしく力を授かり、そのまま周りの光が消えていく。
――――………・………――――
身体が揺さぶられているようだ…。
「ク…ウス。起き…さい」
「んー…。お姉ちゃん?」
眩しいわ。めっちゃ光が射して眩しいわ。
「ようやく起きたわね。二人とも、もう起きて食事の手伝いしてるわよ。クラウスも早く起きなさい」
「はーい」
双子は既に起きているのか。
「私も手伝いに行くわね。二度寝なんてするんじゃないわよ?」
「うん」
もうバッチリ目が覚めたからね。
大丈夫よ。
それに…。
「よし。誰も居ない。試すなら今だ」
あの力を使わないとな。
「本当に授かったのかね?」
来たれ! 神代の力よ!
「うっわ。本当に出来たよ」
あっ文字が浮かんで見える。
なになに。
「能力、秘密の小部屋の詳細を記する。この能力は魔力の量に応じて別空間に部屋を作れる力だ…」
ほほう。やっぱりそう言う能力か。
「今のお主の魔力量であれば……コインロッカー六個分程の大きさの別空間を作れるだろう?」
例え方がいちいちカンに障るね!
「…この能力で作った部屋は、お主の思う通りに設定出来るから試すがいい」
そんな素晴らしい能力なのか。
「追伸。魔力が切れれば中の物が溢れるので注意が必要……」
最後まで油断ならねえな。
「しかし。本当に新しい力を授かれたようだな!」
ふふふ。荷物の持ち歩きが楽になるのだな!
「この力で天下取ってやるぜぇ!」
そして師匠と結ばれるのだ!
ハーッハハハ!
俺が新しい力を授かる事に浮かれて、能力の特性に気付くのは随分後になってのことだ。
読んでくれて、ありがとうございます。
待望の新能力です。
私も欲しいです。
色々と詰め込んで置けそうで便利かな。
片付けるのが面倒じゃなくて良い。
それでは次回も会いましょう!




