幕間―ある開拓村の日常―
お待たせしました。
これは、大陸最南端の開拓村。トモスト村の何時もの日々のお話。村は、朝から平和な時を迎えていた。その裏側で誰かが戦っていたとしてもだ。
トリスとクラウディアの場合。
「んー。ねぇトリス」
「なんだい? ディアもう起きたのかい?」
「ええ。今起きたわ。それよりクラウスの部屋から何か聞こえない?」
「確かに物音がするね。多分、先生に言われて早起きをしてるんじゃないかな?」
「そうかしら? ……そうね。あの子も大好きみたいだもの言われた事を守っているのね」
「そうだね。僕もディアの事を愛してるから君を守るよ」
「ふふふ。トリスったら」
「ディア…」
「だーめ。もう少し寝ましょう」
「分かったよ。もう少しゆっくりしようか」
「ふふふ。ありがとう。トリス」
いつでも、何でも、愛に変えて愛し合う夫婦であった。
カレンとアンネの場合。
「クラウスにぃと、もっとあそびたかったわ。お話だけじゃたりないわ」
「……そうね。でも兄さんもやる事があるから仕方ないわ」
「家のまわりだけじゃなくって、村の中もいっしょにいたかったのに」
「……それでも一緒に居てくれたから私は満足」
「そうね。こんどおちついていっしょにいればいいわ。なんだか今日のクラウスにぃは、そわそわしてたもの」
「……そうね。少し落ち着き無く周りを見ていたわね。時々立ち止まったり。魔力が少し動いてたり」
「そうなの? ぜんぜん気づかなかったわ。アンネは魔力にびんかんなのね?」
「……兄さんのだけは分かる。後、顔に出やすい」
「そうね。クラウスにぃは分かりやすいわね」
それでも自分達が護られていた事は、分からなかった様だ。
畑仕事をしていた村人達の場合。
「あんれ? 穀物庫の近くで遊んでるのは、どこの子だぁ?」
「んー? なんかあったんだか?」
「ほれ、あそこに居るべ。あっ今、穀物庫の下さ入っただ」
「ほんとだなぁ。あっづいから涼んでるんでねぇーの?」
「んだがもな。まあ、子供のする事だぁ分かんねぇなぁ」
「おらだも、あっづぐなる前に仕事さ終わすべ」
「そだな。これから、もっどあづぐなるべ。やるべ、やるべ」
その後、収穫物を穀物庫に運ぶ事になるのだが、危険から護られた事に気付く事は無かった。
ティアナの場合。
「あら? こんな処で何してるの? クラウス」
「あっおはよう。お姉ちゃん」
相変わらずクラウスは小さくて可愛いわね。
ディアさんの子だから少し女の子っぽいのね。
大きくなったらトリス叔父さんの様になるのかしら。
「見たところ鞄を下げて散歩かしら? 今の内に遊んでなさい。十歳になったら何かしら手伝わされるんだから」
「はーい」
鞄が少し大きくて不釣り合いだけど可愛く見えるからいいわね。
それに素直な所もいいわ。
あら? 汗をかいてるわね。
「あら。汗をかいてるじゃない。拭いて上げるから動かないのよ」
「うん」
ふふふ。
やっぱり良いわ。
素直で大人しく可愛い。
他の男の子なんて獣にしか思えないわね。
「な、なあ。」
「何ようるさいわね。今忙しいんだから声かけないでよ」
人がせっかくクラウスの事を見ているのに。
本当に邪魔ね。
「俺達もさぁ。汗、かいてるんだよね」
「だから何よ? 汗かいたら拭けば良いじゃない。首から下げてるのは何? 飾りなの?」
「いや、だからさ」
馬鹿じゃないの? 女の子に頼むことじゃないでしょう。
しつこい男は嫌われるのよ? 分からないのかしら。
「ごらあぁ!! お前ら! 遊んでねーで早く働け!!」
「ひっ!」
「やべ、またどやされる! 逃げろ!!」
しつこくて、悪さばかりして、意気地もない。
論外ね。
「いでぇ!?」
「わっ馬鹿! 何してんだよ!?」
それに食べ物を粗末にする。
最悪ね。
「ごらぁああ!! 何してんだ!! 大事な芋さ傷つけたら承知しねーぞ!」
人様に迷惑かけるばかり、人として問題有りね。
「やっぱり馬鹿ばっかね。クラウスは、ああは成るんじゃないわよ」
「うん」
今の内にクラウスに教え込まなきゃいけないわ。
まあ、見た目は女の子みたいに可愛いから野暮ったくはならないわね。
「まったく。大事な芋さ放ったらかしで逃げやがって、あとで絞めてやる」
「僕も手伝うよ!」
「お? 小さいのに感心だなぁ」
本当によく気の利く子ね。
姉さん嬉しいわ、なんてね。
「おらだのチッサイ頃はなぁ。言われんでも素直に手伝ったもんだ」
大人の小言ね。でも素直、なのは賛成だわ。
「お前もあんなしょうもない餓鬼になるんじゃねーぞ」
「はーい」
大丈夫よ。私が育てるもの。
「偉いわよ。クラウス。流石は叔父さんの子供ね。従姉弟として鼻が高いわ」
でも、まだまだ子供ね集中できていないわよ?
手足と視線がバラバラだわ。
やっぱりしっかりとした教育が必要ね。
本格的に教え込もうかしら。
私って小さい子の面倒をみるのが好きなのよね。
思うに小さい頃から子供に色々教えて行けばいいと思うの。
学んで行けば何処かの馬鹿みたいにならないはずよ。
そう、このクラウスの様に……。
あら? もう終わったみたいね。
「うん。もう、いないね」
「そうね。芋は全部入れたわね」
最後まで見るなんて、よく見てるわね。
「さてと、私も次の仕事しなきゃいけないわ」
「何のお仕事?」
「働いた後の汗を拭いた布を集めるの。纏めて綺麗にした方がいいでしょ?」
綺麗にするのは賛成よ。
だけどこれって疲れると思うの。
「誰が綺麗にするの?」
「そりゃ大人が綺麗にするわよ。私達じゃ魔力が足りないし」
「それなら僕に任せてよ!」
「クラウスに?」
どういうことかしら?
「うん。今ドッドと一緒に村の中を回ってるの。ドッドは魔力が多いでしょ? 今は少し暇だから僕から頼めば布を綺麗にしてくれるよ!」
「あら。そうなの? それじゃあ、お願いしようかしら」
あの、ごついドワーフに頼むのね。
「それじゃあ後で家までいらっしゃい。待ってるわね」
「はーい!」
さてと、まだ回らなきゃいけないわ。
村長の娘も楽じゃないわね。
だけど、目の前の幼児はもっと楽じゃない事をティアナは知らない。
怒りっぽいオジさんの場合。
「よーう。どうした? 一人で籠抱えで」
「ああ。悪餓鬼二人がな芋入った籠さ倒して逃げたんだ。だがら俺が運んでんだ」
「まーだあの悪餓鬼どもかぁ。懲りねぇなぁ」
「まったぐよ。だけどな? 村長さんとこの親戚の子が手伝っでくれだんだよ」
「ああ~。トリスんどこの子か。それなら納得だ。ドワーフの鍛冶師に認められたどが聞いたぞ?」
「へぇ~。そら珍しいもんだなぁ。ドワーフ言うたら滅多な事では認めねぇと言うぞ?」
「んだんよ。将来は有望なんでねぇがな?」
「んだな。まあ、まだまだ子供だっだけんどな。どれ芋ば入れるべ」
「おう。すまねぇな今どく」
「大事な芋は穀物庫に入れて、悪餓鬼から守らねぇとな!」
「まったぐだな! あっははは」
その穀物庫も、幼児に護られたとは知る由もない。
馬鹿二人組の場合。
「ひーっ、ひーっ。ふーっ」
「おっ、おい! もうそろそろ大丈夫なんじゃねーか?」
「あーっ? だらしねぇな。ん、もう疲れたのか?」
「ちげーよ馬鹿。後ろ見ろ後ろ。追ってこねーじゃねーか」
「何が後ろ! 後ろ! だよ。いいから走れ!」
「おまえ、ビビリすぎだろ?」
「なっ、ちげーよ。俺はビビリじゃまりません~!」
「はいはい。嘘言わなくてもいいから。誰もビビリだからって馬鹿にしねーよ」
「あ? それが馬鹿にしてるって言ってんだよ!」
「なんだ? やるのか? あ?」
「望んところよ! やってやんよ!」
「おし。男なら一度言った……って、おい? 後ろ見ろ」
「あ? その手には乗らねーよ」
「違うし馬鹿! お前の後ろに虫がいっぱい来てんだよ!」
「はぁ? そんな訳ないし。俺、綺麗好きだから? だけど別に女の子に好かれたいからって訳じゃないんで、そこんトコロヨロシク」
「いや、そんな事どーでもいいんで。そうじゃなくてよ。後ろから虫の大群来てんだけどさ見ろよ!」
「何言ってんだよ。お前こそ虫にビビってんじゃねーか?」
「けっ! 勝手言ってろ! 俺は逃げるね!」
「はーっ! 負け犬め。なーにが虫の大群だよ。虫なんて俺がボコボコにしてやんよ! へっ。何が虫だよ。そんなの後ろに居るわけ………」
「……よう。ビビリ犬。なんだ? 逃げねーんじゃなかったのか?」
「ひーっ、ひーっ。違うし? お、俺は、これは、あれだ? そう、お前が寂しいと思って? 付いて来てやっただけだから! 感謝しろよ!?」
「お前の言い訳もそこまで行くと凄いな。」
「そ、そんな事は今はいいんだよ!! 早く何処かに逃げ込もうぜ!」
「無理やり後から付いて来た割には態度がデカイよな」
「いっ、いーから! 早くしろ! 俺の足が間に合わなくなっても知らんぞー!」
「そん時は置いていくだろ? 常識的に考えて」
「さっ、最後は道連れにしてやる…」
「わーったよ。今、居るのは村の西だろ? じゃあこのまま進んで林近くの狩人の家あるじゃん。そこに小屋あったの覚えてるか?」
「あ? あったな。あんの憎たらしいガキが居る家だな」
「おう。いや、それは今はいいから。とにかくそこに小屋あるから逃げ込むぞ!」
「わーった! 俺の身体よ! 最後の力を出しきれー!」
「くだらない事喋る暇あったら足動かせよ」
その後、逃げ込んだ小屋の中で疲れに負けて眠るのだが、その幼児に縛り上げられるとは夢にも思うまい。
最終決戦時のドッドの場合。
「やったな! クラウス。全部倒しちまったな!!」
「うん。今ので最後だね。もう近くには一匹も居ないよ」
「へ? なんだこれ?」
「どうした? クラウス?」
「何でもないよ」
「ん!? どうした! クラウス! おい、しっかりしろ! ……駄目だ意識がねぇ。戦いで魔力を使いすぎて気を失ったのか?」
「しょうがねぇな。俺が村長んところに連れてってやるか。親に知られればクラウスも怒られるだろうしな」
「ん? なんだこの魔力の気配。……くそ! 魔獣を倒した後に出るゴーストか!? あの蚊の化け物もそうだってことか!」
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「へっ! なーに言ってるか分かんねーんだよ! 燃え尽きろ!」
『火よ、我が意に従い燃え上がれ!』
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「ふう。燃え尽きたか。しっかし何言ってるかさっぱりだな」
「おっと、クラウスを連れてってやらないとな」
そしてドッドは、クラウスの後始末をしてから村長宅へと連れて行くのであった。
こうして村の1日が終わりを迎える。一部、平和で無かったかもしれないが無事に終わったのだから良しとしよう。
読んでくれて、ありがとうございます。
最近、時間が不定期ですみません。
今回のは真夏の日の吸血鬼退治の裏側です。
楽しんでいただけたでしょうか。
それでは次回も会いましょう!




