真夏の日の吸血鬼退治。その4
お待たせしました。
夏になると蚊を退治する事に何かの達成感を感じたりしませんか? 憎い血吸い虫を纏めて退治するも良し。文明の利器で一網打尽にせずに1匹づつ手で挟むも良し。退治したら綺麗に手を洗いましょう。色んな方法がありますね。でも近づいて倒すのは纏わり付かれて厄介ですね。刺されます。こちらの蚊は刺されたら終わりです。まさに異世界の夏。緊張の夏です。
師匠と離れ20日目の天の陽が真上に向けて昇ろうとする頃。
「村の南東の林には、殆んど居なかったな」
やっぱり西側が多いな。
居ても4、5匹か多くて7匹だ。
とてもじゃないが徳の値が貯まりそうにない。
まあ今は、それは良いんですけどね!
「人が少ないしな。問題は、これから行く畑の辺りか」
今も村人が農作業に励んでいる頃だろう。
やっぱり人の数を調べるから多いんだろうな。
ここからが本番だな。
今はまだ仮の段階だ。
「狩りの本番。生と死を賭けた本番! 略して生本番だぜ!」
他意は無い。
無いったら無い。
大事な事なので2度確認した。
そして畑に向けて移動したのだが、蚊はいやらしく分散していた。
「うへ。もう魔力が五割切ったぞ」
間隔を空けて配置するとか、やってくれるね!
トータルじゃ70匹くらい倒してるのに、連続で倒してないから、ひとつも徳が貯まりゃしない。
地味な嫌がらせありがとうございます!
くそめ!
「あら? こんな処で何してるの? クラウス」
「あっおはよう。お姉ちゃん」
あんたこそなんでいるのかね? ティアナ君。
「見たところ鞄を下げて散歩かしら? 今の内に遊んでなさい。十歳になったら何かしら手伝わされるんだから」
「はーい」
10歳から村の手伝いに駆り出されるのね。
12歳のティアナは2年前から手伝いをしてるのか。
感心、感心。
「あら。汗をかいてるじゃない。拭いて上げるから動かないのよ」
「うん」
すまないねぇ。
おや? ティアナの後ろの方に馬鹿二人組が見えるね。
うん? なんで少しづつこっちに近づいてくるのかね?
「な、なあ。」
「何ようるさいわね。今忙しいんだから声かけないでよ」
取り付く島もないようだね。
「俺達もさぁ。汗、かいてるんだよね」
「だから何よ? 汗かいたら拭けば良いじゃない。首から下げてるのは何? 飾りなの?」
「いや、だからさ」
なんだこいつら? もしかしてティアナに拭いてもらいたいとかか?
大きな子供か? それくらい自分でしなさい。
俺? 俺は大きな大人が入った幼児です。
「ごらあぁ!! お前ら! 遊んでねーで早く働け!!」
「ひっ!」
「やべ、またどやされる! 逃げろ!!」
そして逃げる馬鹿が二人。
懲りない奴らだね。
「いでぇ!?」
「わっ馬鹿! 何してんだよ!?」
あっ芋の入った籠を倒してら。
「ごらぁああ!! 何してんだ!! 大事な芋さ傷つけたら承知しねーぞ!」
怒り易いオジさんが激怒しちゃったよ。
逃げると余計怒られるだけなのに…。
「やっぱり馬鹿ばっかね。クラウスは、ああは成るんじゃないわよ」
「うん」
所詮、男は小さい内は獣と一緒です。
学習能力が足らんのです。
それじゃあ大きくなったら?
下半身が獣になります…ん!?
「まったく。大事な芋さ放ったらかしで逃げやがって、あとで絞めてやる」
「僕も手伝うよ!」
「お? 小さいのに感心だなぁ」
あぶねー、あぶねー。
籠の影から蚊が出てきやがった。
1匹確保!
「おらだのチッサイ頃はなぁ。言われんでも素直に手伝ったもんだ」
また1匹! オジさんの首元!
「お前もあんなしょうもない餓鬼になるんじゃねーぞ」
「はーい」
また1匹! 今度はオジさんの足元!
「偉いわよ。クラウス。流石は叔父さんの子供ね。従姉弟として鼻が高いわ」
そんなティアナの左腕の近くにも1匹!
「そうかぁ。村長さんとこの親戚の子かぁ。そんなら納得だな」
どういたしましての1匹! オジさんの股ぐらかよ。
ついでにティアナの左肩にも1匹!
「はい。これで最後だよ」
「お、あんがとよ」
そしてオジさんの頭頂部に1匹。
それにしても、オジさんに多く群がったな。
興奮したからか?
「どら。穀物庫に運ぶべ」
「いってらっしゃい」
もう、そこは安全ですよー。
どれ、他に居ないか索敵だ。
「うん。もう、いないね」
「そうね。芋は全部入れたわね」
いや、蚊の話なんですけどね。
「さてと、私も次の仕事しなきゃいけないわ」
「何のお仕事?」
「働いた後の汗を拭いた布を集めるの。纏めて綺麗にした方がいいでしょ?」
なるほどねー合理的だ。
……ん!
「誰が綺麗にするの?」
「そりゃ大人が綺麗にするわよ。私達じゃ魔力が足りないし」
「それなら僕に任せてよ!」
「クラウスに?」
正確には俺じゃないけどね!
「うん。今ドッドと一緒に村の中を回ってるの。ドッドは魔力が多いでしょ? 今は少し暇だから僕から頼めば布を綺麗にしてくれるよ!」
「あら。そうなの? それじゃあ、お願いしようかしら」
是非そうしてください。
「それじゃあ後で家までいらっしゃい。待ってるわね」
「はーい!」
おっとティアナのお尻の辺りに最後の1匹。
見えていなかったのね。
これが魔眼の弱点だ。
そう、魔眼は魔力を視認出来る。だが大きな魔力に隠れていると見え難い。包まれたら判別出来ない。だから魔眼にばかり頼っていると、いざと言う時に見落としてしまう。便利だからと魔眼に頼りすぎるのも問題なのだ。
「さて、これで敵を誘き寄せる道具が手に入りそうだな」
これで何とかなるな。
「しかし何か忘れてるよーな……」
はて? なんだろね?
とても大事だけど、それらはどうでも良い者だったよーな。
オジさんに関係してた気がする。
「あ゛っ。馬鹿二人組だ。アイツらだ」
怒られると思って今も走っているよな。
だとすると、アイツらに蚊が群がる恐れがある。
しかも引き連れて行くかもしれん。
うっわっ最悪だ。
アイツら自体は正直どうでも良い。
だけど向かった先が人の多い処だったら話は違う。
「まったく面倒ばかりかける二人だぜ!」
直ぐに走って追いかけよう。
そして二人組を追いかけたのだが、案の定アイツらの逃げた方向には蚊が1匹も居なかった。二人の吐く二酸化炭素と汗に誘われて、アイツらを追いかけて行ったみたいだ。希に居る蚊を倒しながら蚊の居ない方に向けて俺は走った。
「あ、アイツら。何処まで、走るつもり、だ。幼児を走らせるなよ、な」
師匠の為なら走るが、アイツらの為には走りたくは無い!
走れクラウス。と言われても断固拒否する。
このクラウス、馬鹿の頼みを断る事に躊躇は無い!
「しっかし何処に居るんだ? もう、ここら辺は人が居ないぞ?」
ここら辺は村の南西だ。
あとは俺の家くらいだぞ?
…うん? 何故か嫌な予感がする。
俺の予感は悪い方向に向けては抜群の感知精度を誇るようだ。それともアイツらの行動が予測不能なのか。
「ハッハッハ。なんだっけ? こんな時に言いたくなる言葉があるよね」
とても有名な言葉だ。
「アイツらの場合に限って、常に最悪のケースを想定しよう。アイツらは必ずその少し斜め上を行くからな!!」
確かダディは伯父さんの家に薬草の在庫を調べに行ったよな?
うん。それは良いんだ。
だけどな?
「俺の家が……俺の家が! 蚊地場だ!!」
確か家にマザーが残っていたよな!?
どーすんのコレ!
俺の家の周りが蚊に群がられて炎上してましたってか? これが本当の蚊地場だってか?
あの馬鹿二人組やってくれるぜ!
そう、我が家に辿り着いたら蚊の大群に遭遇してしまったのだ。
俺に残された3割の魔力で何処までやれるのだろうか。
読んでくれて、ありがとうございます。
余計な行動で事態を悪化させる人って居ますよね。
周りをよく見て行動しましょう。
虫退治は次で終わるかな?
それでは次回も会いましょう!




