発明は更なる発明の始まり。
お待たせしました。
蒸気機関。それは蒸気の圧力を利用した機械の一種。発見は古く古代にはその考えがあったらしい。ローマ時代と記憶している。ローマ時代の人間すごいな。その凄い蒸気は現代に至るまで様々な恩恵をもたらしている。様々な人の手により改良され姿を変えて残っている。昔は蒸気の力で列車を動かしていた。現代では蒸気の力で汚れを落とすとか……なんだか途端にグレードが下がった様に聞こえるが気にしてはイケナイ。兎に角凄いのだ。その凄い物を異世界で披露する事に相成った。
俺は伯父さんと双子を連れてドッドの家に来ていた。
「これが竹を粉々に削る道具なのですか?」
「おう。コイツがそうだ。今朝組み上がっただばかりだがな」
伯父さん。これが勝利の鍵だ。
「クラウスにぃ。これなあに?」
「竹を小さく削る道具だよ」
今の聞いてねーのかよカレン。
「……変わった形……動くの?」
「大丈夫だよ。動くって」
アンネ。君は相変わらず疑り深いね。
「「本当に?」」
ステレオで聞いてくるなし。
しかも耳元で息がかかるくらいに近づくなし。
耳がこそばゆいんだよ!
ってか、また双子サンドかよ!
俺は師匠のお胸サンドを所望する!
「ドッド殿。さっそくで悪いのだが動かしてはもらえないだろうか?」
「ああ。任せてくれ。まずは水を温めにゃあならん」
「水を温める? これは水で動くのですか? しかも水を流すのではなく?」
この世界には水車とかはあるようだな。
伯父さんの口ぶりからの判断だがな。
「これが噂の新し鏡ですな? これほど綺麗に映るとは、素晴らしいですな」
「今までの鏡とは比べようもねぇだろ? これからの主流だぜ」
「なるほど。ですがこの鏡が何か関係しているのですか?」
「まあ見ていてくれ」
布が外された鏡を見てやっぱり伯父さんが反応したか。
でも伯父さんも鏡の素晴らしさは理解出来ても熱を生み出すとは思わないようだ。
「「すごい綺麗」」
双子も女の子だ。綺麗な物に目がないみたいだな。
世界は変われど女性の光り物好きは変わらず。
「クラウスにぃ。あれ欲しいわ。わたし欲しいの」
いや、俺に言わないで伯父さんに言ってよ。
「……凄く綺麗。兄さん綺麗だね」
言葉では要求していなくても俺の腕を掴む強さが増しましたね?
「伯父さんに言ってよ」
伯父さんにおねだりしなさい!
「クラウス。物騒なこと言うもんじゃない。ヴェラに知られたら私が怒られるじゃないか」
お高いんでしょう? と威圧されるわけだ。
せっかく指輪(凶器)で機嫌が取れたのに、また怒られるんじゃたまったもんじゃない。
そう言うことなんだろう。
男はつらいね伯父さんよ。
「二人とも大人になるまで待ちなさい」
「分かったわ! (大人になったらもらえるのね)クラウスにぃ!」
「……分かったわ。(大人になってから貰うわ)兄さん」
あれ? 妙に聞き分けがいいですよ?
俺の言う事をここまで素直に聞き入れるっけ?
まあいいか。
「そろそろ温まるぞ」
俺達がアホなコントをしている間にもドッドは黙々と作業してたみたいだ。
すまないねぇ。我侭な親戚で。
「えぇ? 火も使わずに!? どうやって温めたのですかドッド殿!?」
「こいつはな。陽の光を集めて温めてるんだよ」
「なんと!? 陽の光でですか? 私は初めて聞きましたよ」
ここからは未知の世界だぜ? 伯父さん。
「陽の光を大鍋の様な物に当てて温めるんですか?」
「そうだ。そして沸騰した時にでる湯気を使って動かすんだよ」
「湯気で? 本当なのですか?」
「本当だ。それを蒸気と言う。その蒸気が管を通ってこの中にある羽を回すんだ」
ドッドの説明を伯父さんが食い入るように見聞きしているな。
「お? 動き出したぞ」
「本当だ…。本当に動き出した」
「クラウスにぃ。ここから何か出てるよ?」
「カレン。危ないから触らないように」
「分かったわ。クラウスにぃ」
それは蒸気だ触れては駄目だ。
火傷してからでは遅いのだよ。
子供は好奇心の塊だ言い聞かせないとな!
「そろそろ良い頃合か?」
そうだな。刃の部分も凄い速さになってきてるしな。
風を切る音がここまで聞こえてきてるよ。
「はいドッド。この竹を使って」
「ありがとよ。クラウス」
未加工の竹でやる方がいいよな。
伯父さんが貰ってきた5本の内の3本が未加工の竹だ。
1本くらい削っても大丈夫だろう。
「この竹を筒に入れる。それを少しづつ押し出して行くんだ」
「この中で刃が回っているというのですか。見れないんですか?」
「危ねぇから覆ってる所は開けられねぇ。怪我しちまう」
「分かりました」
あんな凶悪な刃が回ってる所なんて見ない方がいい。
刃が回る所なんて見たら目を回すぜ?
「いくぜ? 少し下がってな!」
ドッドが竹を筒の中にセットしながら後ろに下がれと腕を振ってきたよ。
ここは言う通りに下がるべきだな。
「二人とも、もっと下がって」
「分かったわ! クラウスにぃ」
「……うん。兄さんの側まで下がる」
おい? なんで俺の腕を引くよ?
伯父さんはいいのか? 双子よ?
あれ? 伯父さん俺たちよりも下がってね?
「始めるぜ」
ドッドの声を合図に竹は回転する無数の刃の中に入って行く。その音はあの嫌な音に似ている。そう歯医者で歯を削られる時の音だ。昔の歯医者で聞いた嫌な音が辺りに響き渡る。無数の刃は固い竹を見る間に粉微塵に削り取っている。俺の精神レベルもガリガリ削り取られそうだ。思い出したら気が滅入ってきたよ。昔の歯医者は痛かった。俺が死ぬ前のは痛くなかった。極力痛みを抑えて超音波とかで削るんだったかな? 技術の進歩は目覚しいな。
「おおぉお。これは凄い! あの固い竹が見る間に削られてしまった」
俺が嫌な過去を思い出してる間に竹は粉々になったようだ。
伯父さんが驚いているよ。
「まあ。こんなもんだ」
手元まで削れた竹を持ちながらドッドは誇らしげだね。
だが見事だ。ブラヴォーブラヴォー。
流石はドワーフだ。
俺の稚拙な説明でも実用に耐えれる物を作れる。
素晴らしいね。
「終わったら。布を鏡に被せるか。この管を閉めちまえばいい」
「蒸気が羽を回さなければ刃は止まるんですな」
伯父さんも中々鋭いね。
「すごいわ! 見せて! 見せて?」
「うん? ほらよ。危ないから気を付けるんだぞ?」
カレンよ? 削り終わった竹なんぞ見てどうするよ?
「……面白い。ふさふさしてる」
双子は何が面白いのか削れた竹を見てる。
やはり子供の考えることは理解しがたい。
「見てみてアンネ! ほら! おひげよ?」
「……女の子に髭は似合わないわ。カレン」
流石に全部粉々に出来なかったみたいだな。
破片を両手にカレンが変なことしてら。
「それならクラウスにぃは?」
「……似合わないわね」
そりゃ子供に髭は変だろう?
似合う方がおかしい。
それにどちらかと言うと鼻の下に付けるより顎に付けて仙人の様にした方が面白そうだ。
あの顎髭はまるで筆のように見える。
「ん? 筆? そうか竹で筆も作れるか」
でも、細い竹なら叩いて潰せばいいけど大きい竹はどうなんだろ。
細い竹を見つけたら作ってみるか。
「これは凄いですな! 火を使わず水を温めて蒸気の力で動く。ドッド殿凄い発見ですな」
「これは俺だけじゃねぇ。ここに来たエルフの嬢ちゃんの知恵もあってこそだ」
そうそう。偉大なるエルフと物作りの匠のドワーフのお陰ですよ。
ドッドが予定通りに話を持っていってるな。よしよし。
「そうなのですか。エルフとドワーフの叡智を合わせたと。流石ですな」
伯父さんも納得のご様子。
「クラウスにぃ! こっちむいて?」
「なに? カレン」
何の用じゃ?
「はい!」
「へ?」
「……やっぱり似合わないわ。カレン」
まだやってたのかよ。髭はもういいよ。
「そうね! クラウスにぃはこのままでいいわ!」
「……うん。このままでいい」
「なんだかな……」
俺は君らのおもちゃじゃないよ?
「この仕組みを他にも使えないでしょうか?」
「ああ。水を木を燃やさずにお湯に出来るから煮たり食べ物を焼いたりできるだろうな」
太陽の熱は利用価値ありまくるね。
「だが、扱いは慎重にな。鉄すら溶かす程の熱だ」
「鉄も溶けるのですか? 凄まじい熱さですね」
「大鍋に水が入ってなけりゃ大変なことになるからな」
「なるほど。他には――」
その後、伯父さんとドッドが他の利用法を検討していたみたいだ。
俺はというと。双子の相手をしていた。
何故ここまで構って来るのか聞いてみたら。
マイ・マザーがヴェラさんに俺と師匠の仲を話して邪魔しないように言い聞かせていたみたいだ。
親戚に知られるというのは小っ恥ずかしい物がありますな。
だが師匠と一緒になるのは我が誇りなり!
羞恥も喜びに塗り替えられよう。
「本日は大変有意義な物を見せてもらいました。何かあればまた教えて下さい」
「おう。また面白い物が出来たらな!」
「すごかったわね! アンネ」
「……そうね。カレン」
双子も珍しい物が見れて満足だろう。
伯父さんの側で大人しくしてるし。
伯父さんと双子と一緒に帰る時に俺は面白い事を思いついていた。
蒸気の他の可能性を。
読んでくれて、ありがとうございます。
蒸気を使う熱い話を書いていてなんですが。
最近、暑さが厳しくなってきましたね。
皆さんも熱中症などお気を付け下さい。
水分と塩を適度に取りましょう。
それでは、次回も会いましょう。




