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完成前日のひと工夫?

お待たせしました。

 既製品を改造して強化したり用途の違う物へと作り変えるのは楽しいですね。改造、いい響きだ。だけど日本人はただの改造では満足いかない。魔改造をして縮小したり高性能化を図りますよね。出来上がった物は、もはや別物になるのは仕様です。飽くなき探究心が生み出す結果なので、受け入れて下さい。ご容赦ください。そんな奴が異世界にも一人居たりするのも仕様です。



 俺の目の前には鉄を叩き鍛え上げた何枚もの輪っかが束ねられていた。

 その丸く薄い物は輪っかと言うより円盤と言う方が適切かもしれない。

 束ねた姿は鉄で出来たバウムクーヘンのようだ。

 外側の冷然な滑らかさは歯応えがありそうなメタリックな質感。

 だが熱を与えれば如何様にも姿を見せるのが鉄。

 それが冷めてしまえば何者にも動かされない冷たい威容を見せる。

 匠の技は、そんな我がままな鉄を均等に鍛え上げてしまうのだ。


 「それで? クラウスよ。その輪っかをどうするんだ?」

 「これに刃を付けるのー」

 「は? 刃を付けるだぁ? どういう事だ?」

 匠は理解していない模様。

 そりゃそうだろうな模型の破砕部分も円錐状の物だ。

 あの部分は凝る必要が無かったから簡略化していた。

 破砕部分は『丸のこ』にしてしまおうと思ったのだ。

 この世界の鋸って言えば板状の物しか見ない。

 だからドッドも想像出来ないでいるんだ。


 「まあ。見ていてよ」

 「おう。お手並み拝見といこうじゃねぇか」

 ドッドは腕組みして覗き込んでくる。

 俺は鉄製円盤の束を前にして魔力フィールドを展開する。


 「一枚づつじゃ時間が掛かるから纏めてやるね」

 「ほほう。纏めてか。それで?」

 ドッドが俺の一挙手一投足を見逃さないと眼光を鋭くしてくる。

 ならば期待に応えましょう。

 有らん限り目をおっぴろげて……何か違うな。

 うむ。眼を見開きとくと御覧じろ!


 「行くよ…」

 その言葉を合図に鉄製バウムクーヘンの姿を変えていく。

 その外側を小さな無数の鋭い刃に形作っていく。

 まるで鮫の歯だ。

 刃は獲物を喰い千切る凶暴な歯となるのだ。

 途中ドッドの息を呑む気配がしたけど気にしない。

 そのまま魔力を刃に注入だ。


 「うん。満足のいく出来かな」

 円盤は見事に丸のこの形になった。

 これで一つ目の束は完成だ。


 「こりゃあ……。今まで見たこともねぇ代物だな」

 鮫の歯を並べた様な凶悪な刃を前にドッドの観察は続く。

 納得行くまで見ていたまへ。私は次に移るよ。

 まだ4つも残っているんだよ。どんどんいくよ!


 そして俺は次の作業に掛かりながら自分の考察に思考を割いていった。

 何の考察か? それは自分以外の人が造り上げた物を変貌させられるか? だ。

 何でも自分で作っていたのでは、時間ばかりかかる。時間は有限だ。

 だから何もかも自分でやる必要はない。適材適所と専門化だ。

 オールマイティな人材は確かに有望に見える。

 実際そうだ。

 だけど、敢えて逆を行かせてもらう。

 誰かの造った物を俺の魔力で強化ないし変化させてもらうのだ。

 その為の実験と考察だったのだが、思いの外有効であった。

 誰かが鍛えた武器も俺の魔力で強化可能だということだ。

 この能力を鍛え上げれば例え武器を失ったとしても、鹵獲武器を即座に強化して戦う事ができよう。


 「やっぱり抽出してから形作るより楽だし魔力も減が少ないや」

 最後の束を作り上げても、まだまだ魔力に余裕がある。

 鍛造だから金槌で叩いて余分な物を取り除いているからかね?

 ドッドが鍛えたから不純物が少なく良い物だ。


 「おお? もう出来たのか? やっぱりクラウスは良い鍛冶師になれそうだな」

 「嬉しいけど、僕は師匠の弟子だからね」

 「ああ。惜しい事したな。今すぐ大親方に紹介したくらいなのにな」

 すまないね。私は師匠の物なのだよ。

 師匠。今すぐ貰ってください。

 もちろん返品は不可です。

 僕泣いちゃうよ?


 「そんじゃあ組み立ててやろうか。明日のお披露目が待ち遠しいな!」

 「そうだね。そうだ! 村長さんも呼んで良いかな?」

 危なく忘れるとこだった。

 あんなチョイ悪村長でも俺の伯父さんだ。

 村の責任者にも立ち会ってもらおう。


 「いいんじゃねぇか? 俺達二人だけじゃあ結果が分かるから驚きようもねぇしな!」

 「分かったー!」

 ですよねー? 新しい物を作ったら誰かに驚いてもらいたいよねー?

 そうだ。双子もついでに連れて来よう。


 「おーい! ドッドは居るか?」

 おや? お客か?


 「いるぜ! なんだいつもより早えぇじゃねぇか!」

 「へっ! 大親方からの手紙もあるしな遅れる訳にはいかんだろ?」

 「おお!? やっと返事が来たか。待ってたぜ」

 なんだかドッドに似たような厳いおっさんだな。

 もしかするとドワーフか?


 「おう。クラウス。こいつは同じ時期に修行に出た仲間でダッダって言うんだ。ダッダ。この小さい子供が俺の友クラウスだ」

 「初めまして! ドッドの友達でクラウスと言います。よろしくね」

 「ダッダだ。小さいのにしっかりした挨拶だな」

 でかい手で掴まれたよ。

 ごついな。俺の手が小枝のようだ。


 「挨拶も済んだ所で荷物を検めてくれ。次の場所に行かなきゃいけねえんだよ」

 「そうか。ゆっくりしていく暇もないか。クラウス少し待っててくれ」

 「はーい」

 二人して外に出て検品か。

 一緒に見てみたいけど邪魔しちゃ悪いし待つか。



 幼児休憩中。



 「待たせたなクラウス。悪かったな」

 「んーん。お茶飲みながら待ってたから気にしないでいいよ」

 「はー。こんな小さいのに他の子供と大違いだな」

 伊達に転生してませんぜ。

 指先一つでお茶を沸かすなんてわけないぜ。

 火種に向けて周りの酸素を供給し続けるだけだしな。

 まるでポンプのよう……だぜ? ポンプ…。

 空気を送る。空気を吸い出す。空気を圧縮して打ち出す。

 思い出した! ドッドに作ってもらう物があったんだ!


 「それじゃあ俺は行くぜ! またな! ドッド。クラウス!」

 「おう! 気を付けて行けよ!」

 「またねー!」

 思い出したが、挨拶は欠かせないな。


 「どれ! 組み立てるか」

 「ドッド。組み上がってからでいいから一つ作って欲しいんだ。」

 「なんでぇ? 藪から棒に」

 「鉄の棒を一つ作って欲しいんだ」

 「うん? まあ構わねぇよ? どれくらいの長さが良いんだ?」

 「僕の背丈くらいでいいよ」

 鉄棒の長さは100cmもあれば十分だろ。


 「分かった。組み上げれば作ってやるよ」

 「ありがとうね!」

 ふふふ。空気を自在に操る偉大なエルフの弟子。

 魔法幼児クラウス君の武器を作るのだよ!

 ステッキの様に作るのも素敵だな。

 まるで仕込み杖だ。





 鉄製のステッキで敵を屠る魔法幼児の誕生か?

読んでくれて、ありがとうございます。


主人公の必殺武器?

どうなるんでしょうね。


次回も会いましょう!

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