貴女を見送る者。
旅行の日程を組むのって楽しいですよね。今日は京都。明日は奈良。締めは大阪でお笑いを楽しむ。自分の趣味全開の旅は良い物です。でも何かの幹事を任されて旅程を組むのは苦行以外の何物でもない。一人一人の要望を聞き入れていたら、とてもじゃないが回りきれない。何故三つにバラけるよ? 一緒の意味無いじゃないか! だから旅行の幹事はなりたくない。俺の前世での教訓だ。だが異世界ではどうだろう? 師匠の行く所なら俺は喜んで付いて行くよ!
俺は朝早くから師匠の旅立ちを見送る事になった。
「クラウス。次に会えるのは早くても一ヶ月後だ。私の居ない間は、危険な事は大人の許可を得てからにするんだよ?」
「分かりました師匠。約束します」
危険な事はしません。
危険でない物はやります。
「森の中で危険な生き物を見つけても大人に任せるんだよ?」
「はい。師匠」
誓いましょう。
師匠に抱擁されながら誓いましょう。
危なくない生き物は狩って供物にしますけど。
「師匠。次に行く村は何処なの?」
「次の目的地か。確かアドル村だったかな。北にある都市アスルの西に山を越えた所に位置している」
「山を越えて行くの?」
いくら万能種族超エルフでも山越えは面倒だろ。
「いや、山越えしていたら時間がかかる。トモスト村から北西にあるアマニア村を経由し北に進めばアドル村に着けるよ」
「アマニア村?」
やはり山越えは無理だよな。
てかアマニア村って何処よ?
「トモスト村の次に調査をした村なんだ。海の近くに位置していてね。海沿いの道を行くから丁度良いんだよ」
「そうなんだ。どんな村だったの?」
海の近くか。うちみたいな村なのか?
「あー…。とても活発な子供がいた村だね…。でも、私はトモスト村の方が良いね。クラウスも居るし」
「ありがとう! 師匠!」
師匠が難しい顔をしているから碌でもない餓鬼が居たのだろう。
今度成敗してやるべ。
「それじゃあ早く帰って来てね?」
「ああ。その為の行程なんだよ。一ヶ月の内に行ける旅程を組むとそうなるんだ」
「それ以上掛かる時はどうするの?」
不意にアホ貴族から足止めを喰らったりとか。
「その時は手紙でも出すよ。ふふふ。クラウスは素直だけど甘えん坊だね」
「師匠と離れるのは寂しいから」
甘えちゃいます。崇拝しちゃいます。
師匠の様な女神を崇拝するのは自然の摂理です。
「別れを惜しんでくれるのは嬉しいよ。出来るだけ早く帰ってくるね」
「うん。僕待ってるね」
お土産は師匠で!
「そう言えば手紙って言ったけど紙ってどう作るの?」
「うん? 紙か。エルフが作ってるよ? 知らなかったのかい? ほらこれだよ」
やべえ、やべえ、危うく聞き逃す所だったね。
師匠に目が眩んでな!
「へぇ~。白くて綺麗だね。見せてくれてありがとう師匠」
「どういたしまして。ふふふ」
本当に紙だったよ。材料は木の繊維とかかね?
物作りまでもそつが無いとは。
流石は偉大なるエルフだ。
「そろそろ行くよ。また会おうクラウス!」
「行ってらっしゃい。師匠!」
次に会う時も抱きしめて下さいね!
待ってますよー。
万感の思いを抱き俺は師匠と暫しの別れを惜しむ。
また1ヶ月後に会いましょう。
我が最愛の師匠こと未来の妻よ。
「さて、師匠から言い渡された次なる課題は何だったかな」
師匠は確か反射と反復と仰ってたよな。
これには少し当てがある。そう、ここでも魔力フィールドの出番だ。フィールド内に数個の水の玉を作り出し、その水の玉をランダムに動かしながら自分に向けて動かす。向かってくる水の玉を華麗に躱し反射神経を養うのだ。魔力フィールド内ならプログラムしたみたいに動いてくれるから意識を割かれる心配は無い。だから回避に専念できる。これは魔力操作技術と反射神経強化の一石二鳥の訓練方法なのだよ。訓練場所はドッドの家の裏で良いだろう。近くに川もあるし人目に付かない。最適な訓練場所だ。
「さっそくドッドに相談しに行こう」
この完成した模型を渡しに行くから丁度良い。
俺は次なる使命に心躍らせながらドッドの前に躍り出た。
「ドッドー! 居るー? アレ持って来たよー!」
勝手知ったるドッドの家だ。
「おう! クラウス。待っていたぜ!」
ドッドは待ち構えていた!
ドッドは気力が漲っている!
「分かり易い様に透明にしてみたんだ」
「ほほぉ~。こりゃ綺麗に出来てるじゃねぇか!」
細部まで拘ってみました!
「ここは羽の入る部分か。管が二つ繋がってる部分もあるな。ほうほう。だから羽が三つも要るのか。主に削るのが上の部分で下二つが補助的役割か。中々考えているな」
「刃が一つだけだと直ぐに減っちゃうかなって思ったんだ」
まあ。半分は思いつきだ。
「こりゃ腕が鳴るな! 見ていろよ。ドワーフの底力を見せてやるぜ!」
「期待してるよ! ドッド!」
試作品を作ってから試行錯誤して行けば良いだろう。
まずは形にしてからだ。
「それとね。僕も近くにいれば何か分かるかもしれないから。鍛冶場の裏を貸して欲しいんだ」
「うん? そりゃあ構わねぇが、一体何をするんだ?」
「師匠から鍛える様にって言われたの。ドッドの近くなら危なくないでしょ?」
危険かどうかもドッドに相談すれば師匠との約束も破らずに済むだろう。
「あの嬢ちゃんがねぇ。まあ良いか。クラウスは邪魔にならねぇもんな。構わねぇよ!」
「ありがとうドッド!」
毎度お馴染み男同士の握手です。
共犯者…元い協力者が居ると助かるね。
「それじゃあ俺は鍛冶をする。裏は好きに使ってくれ!」
「はーい! 何かあったら呼んでね?」
「おう!」
物作りの匠に後は任せよう。
「うむ。近くに川があるだけで他に何も無し!」
人の目を気にしないで済むから好都合だ。
「早速修行開始だ。まずは魔力フィールド展開!」
修行とは中二心が擽られる響きだな。
だが俺にはリアルなのだよ。
1個、2個、3個と水の玉がフィールド内に浮き上がって行く。
一つ一つがゆらゆらと煌き漂って居るが中身はスカスカだ。
重さがあったらダメージ大きいしな!
初めは山なりのボールくらいの速度でいいだろう。
それを徐々に速めて行くのだ。
「さあ、かかってきな!」
ちょろいもんだぜ。
その後、水の玉が見事に直撃したのは言うまでもない。
いきなり上と左右から来るのは反応しきれないって。
読んでくれてありがとうございます。
弟子は師匠の言いつけを守りきる事ができるのか!?
まあ怪しいですけどね。
それでは次回も会いましょう




