箱の中身は愛のしるしか?
その箱には何が入っているのか。希望か? 絶望か? だが箱の中身は何が入っているかより。それをどう使うかが肝心だ。薬も過てば劇薬に変わる。毒も使い方次第では人を救う。慌てることなく対処してこそ人の真価が問われる。まあ物には限度があるので、支え切れない絶望の時は諦めよう。伯父さん。
今朝は起き抜けに石英で指輪を作っている。
そう、伯父さんに渡す指輪だ。
「んー。攻撃力ありそうな指輪だな」
リング部分は細工無しにして、台座部分には菱形の塊が乗っている。
適度に尖っていて、これで殴られたら痛いじゃ済まないかもしれない。
だけど、これも身から出た錆だ。甘んじて受け入れてもらおう。
今回の指輪の作りも悪くない出来だ。
あのチョイ悪伯父さんも奥さんの機嫌が直って、悪癖も直るし本望だろう。
「次は模型作りか」
石英鉱石が多ければ羽部分をそのまま作っても良いんだけどね。
石英の在庫が、そんなに無いらしい。
鏡だけで我慢しとくか。
「クラウス? 朝食の時間だよ? まだ起きてないのかい?」
「おはよう! 師匠!」
俺よりも早く起きて身嗜みを整えた師匠が起こしてくれる。
まるで新婚のようじゃないですか。
エルフ妻! 良い。
惜しむらくはエプロン装備じゃ無い事か。
俺の辞書に不可能なんて文字ねーよ! って言ってそうな人みたいな軍服なんだよな。
でも、師匠は嫋かな肢体であるから? スレンダー(一部大きい)なスタイルの男装の麗人ぽいんだよな。
まあ、綺麗なエメラルド色の軍服も良いんですけどね。
「今日も師匠の服装は綺麗だね」
「ありがとうクラウス。この服は我々エルフが作った至高の逸品なんだ。縫製好きのエルフが三百年の研鑽の末に縫い上げた品でね。危険から身を守ってくれるんだよ。剣でさえ断ち切る事は出来ない」
俺が服を褒めたと思ったのか師匠は饒舌に語ってくれた。
俺は師匠を含めた姿を褒めたつもりなんだけどな。
だけどそんなに凄い装備なのね。
どれ、魔眼で視てみるか。
……。
……確かに凄いな。あまり服を意識して見ていなかったから解らなかったけど。
この服にも魔力が通っているぞ? 繊維段階から魔力を注いで紡いだとかか?
もしかすると防御力だけじゃなく魔法に対する抵抗値もかなりあるんじゃないか?
打ち消すとかは無理でも半減させるとか出来そうだ。
「凄い服なんだね~…」
「クラウス? あの…少し恥ずかしいから。そんなに見つめないでもらえるかな?」
穴があきそうになる程見詰めてしまったようだ。
ついでに触っていたみたいだ。
「はーい! 朝食を食べに行こう?」
「うん。そうしよう」
師匠と手を繋ぐのも違和感なく受け入れられてきたな。
うむ。良い傾向だ。
「おはようクラウス。今朝も仲良しだね」
「おはようお父さん。お母さんとお父さんみたいに仲良しになるんだ」
「あらあら。私とは仲良くしてくれないの?」
ダディの挨拶に返していたらマザーが少し拗ねた様に聞いてきた。
「みんなと仲良くするよ?」
そしてマザーの腰をホールドです。
「ふふふ。クラウスは優しいわね。お母さん嬉しいわ」
マザーはそのまま母性溢れる微笑みで撫でてくれるのです。
「クラウス君は優しい良い子ですよね」
次いで師匠も撫でてくれる。桃源郷はここにあり。
オラに元気が集まってくるぜ!
「そろそろ朝食にしましょうか」
「はーい!」
そしてマザーの一声で朝食が始まるのです。
今朝の朝食はスクランブルエッグもどき? が出てきた。
香草が刻まれた物が入っていて塩味が効いた物だ。
何時ものパンとスープに一品追加された。
師匠の分を多く追加したのかな?
「それじゃあ二人共、今日は海まで行くのかい?」
「はい。ここに来て、まだ海を見ていなかったもので、クラウス君を連れて見に行こうと思います」
「師匠と海を見てくるね!」
「そうなの? 昼食までには帰って来れるのかしら?」
朝食も終わったしダディとマザーに今日の予定を話しておかないとね。
「昼食には間に合いますよ。待たせたりはしません」
師匠が引率の先生のようだ。
「それじゃあ海まで行ってくるね?」
「気を付けるんだよ? クラウス」
「波にさらわれないでね? クラウス」
ダディとマザーも心配性だね。師匠がいるから大丈夫さ。
「はーい! 気をつけます」
「それでは行ってまいります」
その後、師匠の馬を預けている村長宅まで歩いた。
「クラウス。その箱の中身は何が入っているんだい?」
「これはね。伯父さんに頼まれた物が入っているの」
「大事な物が入っているのか。それなら聞かないでおこう」
師匠は気配りも出来る。
出来たエルフである。
そして目的地に到着だ。
「おはようございます! 伯父さん居る?」
「おお! クラウスおはよう。よく来てくれた」
伯父さんが縋る様に挨拶を返してきたよ。
「はい。この箱の中に入ってるよ」
「もう出来上がったのかい? やはり優秀な師のお陰かな?」
それほどでもある。
「おはようございます。バートン殿」
「おはよう。良い弟子をお持ちのようだね。グリューン殿」
すかさず女性を間接的に褒める。
まこと如才無い伯父さんだ。
何故これでヴェラさんに怒られるかが不思議でならん。
「ありがとうございます。所で預けてある馬を使いたいのですが、よろしいですか?」
しかし師匠は柳のようにやり過ごす。
「おや? 何処かに遠出でもなさるのかな?」
「はい。少し海まで行こうかと思います」
「分かりました。今朝の世話も済んでいます大丈夫でしょう」
「ありがとうございます。それでは早速、海に向かいます」
うん。双子に絡まれる前に行こう。直ぐ行こう。
「それじゃあ行ってくるね! 伯父さん」
「ああ。気を付けるんだよ」
そして俺達は、伯父さんに別れを告げた。
一つの箱を託して。
果たして、その箱の中には何が入っているのか?
希望か? 絶望か? それは箱の所有者次第だ。
願わくば幸いであらんことを祈る。
そして俺と師匠は、馬上の人となった。
しかし衝撃緩衝材は、前に付いているべきじゃないだろうか?
まあ、疑問はあれど不満は一切無い!
毎度読んで下さりありがとうございます。
二人で遠出に行くお話でした。
下見はしなければ後で困りますからね。
それでは次回も会いましょう。




