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愛の鎖の価値は?

お待たせしました。

 私は常常思う。イケメンは調子に乗り過ぎじゃないかと。いつか女性関係で痛い目を見るぞと。だから世界は違えど同じイケメンの居るこの異世界で、俺は一つの鎖を付けてやろうかと思う。なに、自分から望んでいるのだから本望だろう。なあ? 伯父さん。




 「ようこそお越しくださいました。グリューン調査官殿。今日はどのようなご用件でしょうか?」

 「こんにちは。バートン殿。そう畏まらず。グリューンと、お呼びください。」

 「そうですか? それでは失礼して、グリューン殿と、呼ばせていただきます。して用向きはなんでしょうか?」

 「ええ。本日お邪魔したのは、東の開拓村……アンリカ村の事です。クラウスに聞きました。竹が増え過ぎて困っていると、その解決法になればと思い。それをバートン殿に伝えに来たのです」

 「ほう。エルフ自ら知恵を授けて下さると、これは光栄なこと。クラウスには感謝しなければいけませんな」

 「えへへ。師匠は凄いんだよ? 師匠は優しくて、物知りで、綺麗なんだよ!」

 「こっこら! クラウス。それは今はいいの」

 「はーい!」

 このクラウス。エルフの偉業を称えるためならば三千世界も飛び回る所存です。

 そりゃあもうカラスの足に便箋括りつけてでも飛ばしてみせましょう。

 殺るよりも有効活用できましょう。


 「アンリカ村の村長グロッソ殿も心労で顔色も優れず頭を悩ませていました。これが吉報となれば心休まることでしょう」

 「いえ、まだ直接的な解決法になるかは、話してみなければ分かりません」

 「そうでありましょうな。申し訳ない。少し気が急いていたようだ」

 伯父さんも色々考えて悩んでたんだろうな。

 他の村から人足を雇って伐採出来ないかとか。

 でも費用ばかり増えて何も見返りが無いんじゃ誰も頷かないよな。

 うん。だから身を乗り出すのは分かる。

 だがそれ以上近づいたらアウトだ。

 だから俺が促して距離を離してから話そうか。


 「師匠! お願いします!」

 先生! お願いしやす!


 「そうですな。少し腰を落ち着けて聞くことにします」

 「分かりました。三つ程、案があります。まずは一つ目。これはクラウスが考えついた事です」

 ありゃ? 師匠? 俺の名を出すの?


 「竹の特性を生かした良い案でした。竹は中が空洞になっています。ご存知ですよね?」

 「ええ。中が空洞になっている。節で区切られていて、よくしなります」

 「そうですね。その空洞と節を使って一つの入れ物を作るのです」

 「入れ物……ですか。何を入れるのですか?」

 「水です。竹で出来た水を入れる筒を作るのです」

 「なるほど。しかし既に皮で出来た水袋があります。果たして既存の物より良い物と言えるのでしょうか?」

 うむ。最もな意見だ。流石村長やってるだけあるわ。

 果たして既存の物より有効なのか?

 この課題をクリアできなければ絵空事で終わる話だ。

 だがクリアする材料は既に師匠に託してある。


 「分かります。既にある物より優れていなければ誰も見向きもしないでしょう。安心して下さい。竹はとても優れた植物です。竹の葉を使って食べ物を包めば腐りにくいのはご存知ですか?」

 「ああ。確かグロッソ殿が、私が帰る時にと食料を包む道具としていましたな。……なるほど」

 伯父さんも何か気付いたようだな。悪い顔になってるぜ? そして何故俺を見る!


 「お分かりになりましたか。竹には腐敗を抑える物があるのです。これを使えば水が腐る事も抑えられましょう」

 「なるほど。納得がいきました。確かに有効ですな。今までは、長距離の移動は樽を使っていました。ですが、最近では長距離の移動などおいそれと出来ませんしな。少し移動するのに大きな樽では嵩張る。かと言って皮の水袋では水があまり持たない。そこで水の腐りが軽減出来る竹の筒を使えば良いと。本数を調節すれば嵩張る事も無い。中々の慧眼、お見逸れしました」

 「加えて、皮の水袋は縒れて余計嵩張ります。それに生き物を使いますよね。処分しきれれば良いですが、出来なければ腐ります。腐らせない為には火魔法で焼き尽くすしかありません。人族の貴重な魔力なら極力無駄を省ければ尚の事有効になりますでしょう」

 「なんと。そこまでお考え下さいますか。このバートン己が浅慮を不覚に思います。申し訳ない」

 伯父さんも師匠の偉大さが理解出来たようでなによりだ。

 だからその手を早く離せ。ヴェラさんに報告するぞ?

 師匠も苦笑いして困ってるじゃないか。


 「あれ? ヴェラさん……」

 「なに!? いや、これは違うんだ! 感動のあまりつい」

 「は、今日は居ないの?」

 伯父さんが慌てて後ろを向きながら謝罪してら。

 ふん。師匠に悪い虫は付けぬ!


 「ぷっふふふ」

 師匠も可笑しくて笑い声が少し洩れている。このクラウス貴女の事は守ります。

 だから安心召されよ。


 「では続きを話しましょうか?」

 「醜態を晒し申し訳ない。お願いします」

 師匠が余裕を持って切り替えしたようだ。だから伯父さんも悪い癖を引っ込めろ。


 「二つ目は、竹炭です」

 「竹炭ですか? 煮炊きなら他の乾いた枝木や炭で事足りますが、何か他に利用出来るのですか?」

 「ええ。竹の炭は、燃やす以外にも利用価値があるんですよ? バードン殿の弟、トリス殿なら既に知っているでしょう」

 「そうなのですか? 過分にして聞き及んではいませんが、何かあるのですか?」

 「ええ。小屋がどうとか聞いてはいませんか?」

 「そう言えば、物置小屋の臭いがどうとか聞きましたな」

 「そうなんです。竹炭には臭いを吸い取る作用もあるのです」

 「本当なのですか!? いや、確かにそれなら話が繋がる」

 「そして臭いだけでは無いのです。部屋の中の水気も吸い取るのです。これにより鉄が錆びる事を防いでくれるでしょう」

 「なんと!? そんなことまで? なら農具を置く小屋に竹炭を置けば、拭くだけでは不十分だった部屋の水気も吸い取ってくれると」

 「ふふふ。そうですね。それと部屋に置くだけでも良いかもしれませんね。長雨の時期は部屋の中が湿る事を防いでくれますよ」

 「竹とはそれほど優れているのですか。何やら急にあの竹林が宝の山に見えてきましたよ」

 流石だな利に敏い。それでこそ村長の器だ。


 「まだ三つ目が残っていますよ?」

 「これ以上の案がまだあるのですか。これは早急にアンリカ村と協力関係を築かなければいけませんね」

 「それは良い案ですね。これがまだ実用に耐え得るかは、この村で試す事をお勧めします」

 「確かにそうですな。アンリカ村は微妙な位置にありますからな。北東の都市には魔獣の脅威が見え隠れしています。それに近隣のラグア村は人が不足しています。都市アスルの中継に位置しているとは言え。傷跡の癒えぬままでは、余裕もありませんでしょう。まさか山を超えて魔獣が襲うなど夢にも思いませんでしたしな」

 「そうですね。ですから海沿いの道があるトモスト村とアンリカ村が一番協力関係を結べるということですしね」

 「今のところ海から魔獣が出たと言う知らせはありませんしね。安全でしょう」

 へ~。その辺の事情は知らなかったから聞けて良かったな。


 「話が逸れましたね。戻しましょう」

 「お願いします」

 いよいよ三つ目の話に入るか。これが本命だ。


 「最後の案は、竹を砕いて肥料に混ぜるのです」

 「はい? 竹を砕くんですか? 砕くだけでいいのですか?」

 「そうです。これは今まで出した案その全ての集大成ですよ」

 そう。今までのは前座です。余興です。本番が始まりますよ!


 「竹を砕き。竹を燃やし。竹炭も砕く。それらを腐葉土の中に混ぜて置けば三ヶ月から半年で有効な肥料になるでしょう」

 「それは…。一体どのような効果があるのですか!?」

 「竹は虫に食われたり弱ったりなどは見受けられませんでしょう?」

 「そうですな。アンリカ村で見た竹林は旺盛に生い茂っていました。弱ったところも殆んどありませんでしたな」

 「それらの力強い生命力が作物に影響を及ぼせばどうなりますか?」

 「なっ。まさか! そうなれば作物も虫に食われたり弱る事が無くなると!?」

 「影響は少なくないと思います」

 「これは、とんでもない事ですぞ! そうなれば今まで出来なかった農地の拡大もできます。今までは人手が足らず収穫が間に合わず弱ったり虫に食われていた物が、そうはならなくなる。ああ。これは金貨何枚分の価値になるでしょうか非才な身であれば予想もできますまい。グリューン殿! 貴女はこの大地に生きる人族全ての救いの神になられる! エルフの叡智はこれほどの物なのか!」

 伯父さんが美食家で目や口からビームだす人くらいに感動してるぞ。

 む! 危機回避シグナル検知! 行動に移る!


 「やっぱり師匠は凄いや! 流石僕の師匠だ!」

 そして俺は師匠に抱きつく! めいいっぱい抱きつく! 他の余地が無くなる程に!


 「こっこら! クラウス! 慌てないの!」

 「あー…。そうですな。少し落ち着きますか」

 ふう。伯父さんの接近をカバー出来た。師匠を抱きしめようとしていただろう。その行き場のない両腕がいい証拠だ。

 いい加減、女性と見れば近づく癖を直して貰いたい。

 これは表明しておいた方が良いな。


 「流石だよ。流石、将来僕と一緒になる予定の師匠だよ!」

 「おや? そうなのですか?」

 「え! あっいえ。その…」

 「将来一緒になるんだもんねー?」

 「そうなのですか。いや、これは失礼を重ねた。甥っ子の婚約者でしたか。お許し下さい」

 「いえ、頭を上げて下さい。その…予定ですから」

 ふふ。言質と外堀埋め確認! トドメと行きますか。


 「その証拠にほら。左手を見て!」

 「あっ」

 そして誇らしげに師匠の左手を掲げますよ。


 「ほお。これはまた綺麗な指輪ですな。約束の品ですな。分かりました。クラウスの事よろしくお願いします」

 「はっはあ。え? よろしいんですか?」

 「何か問題でも? 当人同士が認め合っているのです。良いも悪いもないですよ。このトモスト村の村長ヘルガー・バートンは二人を祝福しましょう」

 いやに素直だな…。何か裏がありそうだ。


 「ところでクラウス。少しいいかな?」

 ほら、おいでなすった。


 「何? 伯父さん」

 「(あの指輪、どうしたんだ? かなりの値打ち品だろ? 何処で手に入れたんだ? あんなに綺麗に透き通る指輪なんて見たことも聞いたこともないぞ? 頼む! 教えてくれ。ヴェラの機嫌を取って置かないと私の身が危ない)」

 「……伯父さん。何かしたの?」

 「(いや、何かはしていないんだがな。どうもアンネ当たりが喋ってしまったらしくてな…私は少し女性の手を引いただけなんだ。この身は潔白だ。だがそれだけでは許してもらえそうになくてな。取り付く島もない。その為の足がかりが欲しいんだ。その為に二人の事は祝福しよう。双子をけしかける事もしな。なあ良いだろう?)」

 やっぱりけしかけていたのかよ。

 そうか夫婦関係の危機か。

 仕方ない人肌脱ぎますか。


 「分かったよ伯父さん。アレは僕が作ったの。内緒にしてくれるなら作ってあげるよ」

 「それは本当か!? 約束する! 誰にも喋らん。…良かった。これで何とかなる」

 ええ。作って上げますとも。

 菱形の先が尖った指輪をな!

 これでヴェラさんの攻撃力も上がって悪い癖を駆逐してくれるだろう。

 これぞ異世界のトロイの木馬なり。




 そして俺は伯父に安寧と鎖の両方をプレゼントするのであった。

読んでくれてありがとうございます。


引き続き竹のお話でした。

そしてイケメンに天の鎖を施します。縛につけばいいよ。


それでは次回お会いしましょう。

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