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異世界で神を見た日。

お待たせしました。

 時に、物事とは最善や最良よりも少し無駄がある方が良い結果を導き出せる。何でもかんでも便利にしてしまえば良いと言う訳ではない。車輪も遊びの部分がなければ効率よく回らない。余計に力が必要になるのだ。だから無駄な部分も必要なのだ。私は異世界で、それを学んだ。その教えを授けてくれたのは、師匠の何気ない一言だった。その一言で私は神秘との邂逅を果たした。




 「お帰りなさい! 師匠! ししょ~」

 俺は1ヶ月分の気持ちを溢れさせていた。


 「ただいま。クラウス」

 ああ。師匠の声だ。

 この涼やかな響き。優しく体に沁みる。

 この温もり。確かに此処に居る。

 この香り。幸せが頭に満ちる。

 だが! まだまだ満足できぬぞ!

 もっとスリスリしたぁ~い!


 「ししょ~ししょ~」

 「あっ。こっこら! くすぐったいじゃないか!」

 やべ~頭から何か洩れそうだ。

 この胸もやっべー。柔い。温い。いい匂い過ぎる。


 「あっ! 匂いなんて嗅ぐんじゃない! はっ恥ずかしいんだぞ?」

 「師匠は良い匂いだよ? 凄い安心出来る匂いだよ?」

 何時までも嗅いでいたい。


 「すっ少し汚れてしまったんだ。だから川に行って綺麗にしなきゃ駄目なの! だから……嗅がないっで…」

 うっはーっ。何この可愛い生き物。耳まで赤くしてる。モジモジしてる! あーっもう何でここまで可愛いんだよ!

 服装が少し軍服チックなのに。そのギャップにやられちまうぜ!

 見方によっては、男装の麗人なのに!

 何そのギャップ萌え。

 てか、汚れているの? 何で?


 「師匠。何で汚れたの?」

 「ぅえ? あっああ。ここに来る前に少し害獣を駆除してきたんだ。その時に少し服が汚れてしまってね」

 なんと。お仕事お疲れ様です。なら私めが汚れを魔法で綺麗にしましょう。


 「そうなんだ。それなら僕が……」

 いや、まて。先ほど師匠は何と仰ったか。

 川に行って綺麗にすると言われなかったか?

 もしや沐浴をなされるのか。

 なら魔法など無粋と言うものではないか。

 だってそうでしょう。

 ここで俺が魔法を使って綺麗にするより。

 『くっクラウス?』

 師匠が川で沐浴をされる方が絵になるじゃないか。

 『おーい?』

 ならば予定を変更しようじゃないか。


 「僕が、案内するね! 師匠」

 「え? ああ。いいよ場所は知っているから。この前、村に来た時に調べたんだ」

 なん…だと? ……。


 「本当はクラウスに会う前に綺麗にしたかったんだけどね。先にクラウスの様子を見ておこうかと、ね」

 「そうなんだー」

 まて、諦めるのは、まだ早い。

 師匠が沐浴するのは村の西側の川だろう。

 ならば見晴らしが悪いはず……。


 「それじゃあ後で僕の家に来てね!」

 「うん。綺麗にしたら行くからね」

 行ってらっしゃいませ~。

 ふう。

 さてさて、仕事に掛かろうか。

 師匠の周辺に危険が及ばぬように、ワタクシが目を光らせなければイケナイ。

 これは決して如何わしい事ではない。

 要人にはSPが付くじゃないですか。

 そうでしょう?

 そうだよね?

 ならばワタクシの行動も何も間違ってはイナイ。

 水が高い所から低い所に落ちるくらいに当たり前の行為だ。


 「師匠の安寧を陰ながら守るのは弟子の勤め。不埒な輩が来ないように監視シナケレバ」

 その為の力も日々の研鑽で会得している。

 まずは危険な生き物が居ないか調査だ。

 手始めに魔力フィールドで消費した分の魔力を回収だ。

 ……よし。順調に魔力を回収出来たな。

 次に現在の師匠の姿を確認だ。

 まず木に登る。魔力を練る。そして望遠魔法発動。

 うむ。林の中を移動中ですな。

 その先は……よし。敵性生物の存在は認められない。

 次は移動だな。先程は焦って無駄に魔力を消費した。

 今度は、焦らず慌てず粛々と気配消失だ。

 ……よし。明鏡止水の境地に至れた。

 ……俺は何をしているんだ? いや、大丈夫これは必要な事だ。

 ここで素面になってはイケナイ。

 さて、いくら気配を消したと言っても不意に見えてしまっては元も子もない。

 光学迷彩魔法の出番だ。

 光を魔力フィールドに沿って湾曲だ。

 ふふふ。これで俺は誰にも気づかれる事なく師匠を護衛できよう。

 そう、師匠にも気づかれる事なく、な。

 日々の血のにじむ様な研鑽で、移動しても光学迷彩魔法が途切れる事は無くなったのだよ。


 「おっと、そろそろ時間か。それでは状況を開始する」

 地球に居るエルフ好きの同士達よ。健闘を祈ってくれ。



 そして俺は人知れず風の様に川へと走った。



 「うむ。ターゲットには未だ気付かれてはいない。警護をケイゾクする」

 師匠は川縁で靴に手を掛けている模様。

 ふむ。まずは靴を脱がれますか。

 む! 音がするな……なんだ鳥か。

 おっと目を離してはイケナイ。

 ほほぅ。足先で水の温度を確かめるのですか。

 水辺で素足を濡らし水遊び。絵になりますなぁ。

 まるで絵画から抜け出た様な神秘です。…はい。

 む! 次は上着ですか。

 なんと……向こうを向かれますか。見えませぬ。

 くっ。回り込むか? いや駄目だ。

 持ち場を離れればターゲットに危険が及んだ場合カヴァーできなくなる。

 まだ焦るな。心を落ち着かせるんだ。

 ……よし。ヲレ大丈夫。

 などと焦りを抑えている隙に着替えが終わってしまったようだ。

 くっ。やはり向こうを向いたままか。

 仕方ない。


 『…少…冷た…かな』

 声が聞こえますな。

 クールが駄目ならホットにしますよ? 師匠。

 女性は身体を冷やしたら駄目だと地球の文献にも載っておりました。

 ですが今は警護の身。迂闊に持ち場を動けません。

 暖かい風呂を所望されるのなら今暫しお時間を下さい。

 この師匠の一番弟子のクラウスめが必ずやエルフが入るに相応しい風呂を建築いたします。

 暫しのご辛抱です。


 『冷た…けど黒…汚れを落と…為だ…』

 しかし…。美しい後ろ姿しか見れぬが美しい…。

 御髪で隠れてはいるのだが、時折見える白い素肌がまたなんとも言えません。

 あの極上の乳のラインがチラリチラリと見え隠れするのが良いね。グッドだ。

 出来れば正面から拝みたいものだな。

 む? なんだ鳥が飛び立った音か。

 お? おお? おおお?

 し、師匠が此方を向かれた!


 『……な…だ鳥か』

 今の鳥に反応したのか! ちょうグッジョブ。

 ふぉおぉおぉ!? なんだあの究極の美乳は。

 白く美しく。瑞々しい潤いを湛えた肌。

 その大きさと思想的な流線型のカタチ。

 その頂点に輝く、綺麗な淡い桜色の蕾み。

 その蕾みも大きさ、カタチ共にグッドです。

 スイカップなど足元にも及ばぬ程の極上の乳だ。

 艶、張り、色、形。これら全てが詰まった奇跡だ。


 「このクラウス目に焼き付けましょうぞ」

 うっ。俺の左手が疼く。

 元いリビドーが溢れそうだ。

 これ以上は此処に居られない。撤退だ。

 師匠の美に被弾した。本部、戦略的撤退を要求する。送れ。

 本部了解した。撤退を許可する。



 では退場だ。



 「ふうぅ。ここまで来れれば大丈夫か……ふっ。ふふっ」

 やはり俺の考えは間違ってはいなかった。俺は異世界で確かに見た。




 神はいるかどうか、それは古代からの人々の疑問だったのだろう。ある者はいないと答えた。またある者はいると答えた。しかしどこに? と聞かれても誰も答えられなかっただろう。仮に答えたとしても曖昧に心の中に等と、お茶を濁すような答えしか出ないはずだ。


 だが私は違う明確な答えを持っている。私は聞かれれば何憚ることなく答えよう。


 Qクエスチョン.神はいるとおもう?

 Aアンサー.異世界で見た。


 ふぉおお!! あ、あれこそが乳神さまじゃあ! 極上の乳じゃ! 神はいた! 異世界の俺の前にいた!

 俺は大興奮で鼻息が荒くなるのを抑えられそうにない!

 形、色、大きさどれを取ってもパーフェクトだ。あれで数百年から千年くらい生き続けるんだろ?

 もはや生きた芸術品じゃないですか。ふふふ…絶対に誰にもやらん。

 ふはっはっはっはっ! テンション上がってキター!


 「む! 音がするな……」

 川とは反対方向から茂みを揺らす音がする。

 師匠を狙う敵性勢力か? 制圧するか?

 いや、まずは確認だ。




 「ほっ本当にこっちに行くのを見たのかよ」

 「間違いねぇよ。だからお前を呼びに行ったんじゃねぇか」

 「へっへっへ。エルフって言やぁ美人なんだろ? それが川で水浴びか。たまんねぇな」

 「だろ? 感謝しろよ。へへへっ」

 「ああ。見た後でならいくらでも感謝してやるよ」

 ……糞餓鬼二人組か。

 愚か者共め。貴様らには師匠は高尚過ぎて見る事など許されぬわ!

 覗きなど許さん!

 やらせはせん! やらせはせん!! やらせはせんぞぉー!!!

 まずは奴等の不意を突くか。

 息を大きく吸います。次に丹田に力を込めます。最後に大声で呼びかけましょう。


 『お兄ちゃん達何してるのー!』

 俺の大音量の声が林の中にこだまする。

 我ながら棒読みもいいとこである。


 「うわぁああああ! なっなっ何だ!?」

 「誰だ! ん? なんだガキか」

 お前らは糞餓鬼だろうが。


 「何してるのー? 遊んでるのー? 林の中に何かあるのー?」

 「わっ静かにしろ! ばれるだろ!」

 「俺達は忙しいんだ。ガキの相手なんてしてられねーんだよ。失せろ」

 『ほぅ。何をそんなに急いでいるんだ?』


 「あ゛? 決まってるだろエルフを見る…た…め」

 「え゛…嘘…だろ?」

 そこに居たのは服を身に纏った師匠でした。

 腕を前で組んで足幅を少し開き見下す様な冷たい視線で二人組を睨んでいました。

 よく言うサン○イズ立ちです。はい。

 美人がするから余計に様になってます。


 「ひっ」

 「に、逃げろ!」

 あ…馬鹿が逃げ出した。


 「逃すわけないだろう?」

 次の瞬間、師匠の体がブレて見えました。


 「わぁ!」

 そして二人組の片割れの衣服の背中側を掴み。


 「え!?」

 そのまま足を払い。独楽の様に回転させました。


 「ぐえぇ!?」

 その右側から払った片割れの足が、左に居た馬鹿の頭を直撃しました。


 「えぇえ!?」

 そのまま勢いよく2回転。着地。10点!


 「はぅ!」

 そのまま手刀で一閃。標的の無力化を確認。

 無事二人組を制圧しました。


 「ふぅ。まったく困った悪ガキだ…。クラウス?」

 「はい! 師匠!」

 「知らせてくれてありがとう。林の手前で見ててくれたのかな?」

 「はい! 師匠の用が終わるまで待ってました!」

 待って居たのは本当だ。ナニモマチガッテハイナイ。


 「ふふふ。クラウスは良い子だね」

 ああ。後ろめたい。でもナデナデも捨てがたい。

 こんな私を神よお許しください。


 「師匠って強いんだね! カッコよかったよ!」

 「そっそうかな? 大した事ないよ」

 謙遜する師匠も美しい。


 「僕にも今の教えて! 師匠みたいに強くなりたい!」

 「うん。クラウスには教えてあげよう」

 よし。このまま勢いに任せよう。


 「さて、クラウスの家に行こうか?」

 おや? この馬鹿共はどうするんだろ。


 「お兄ちゃん達はどうするの?」

 「大丈夫だよ。死にはしないさ」

 放置ですか。

 しかし師匠は強いな!

 うむ。師匠には逆らわぬ様にしよう。

 今日の教訓だ。


 「それじゃあ一緒に行こう!」

 「そうだね。行こう」

 そして二人で手を繋ぎ家へ歩いた。





 馬鹿を残して。

読んでくれてありがとうございます。

ここ二日程1話ずつなのは、この話のおかげです。

感動の再会ぶち壊しな話なので猶予を置きました。

一気に投稿するとどうも良い話が台無しになりそうだったのでこうなりました。

すみません。


それでは次回もお会いしましょう。

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