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彼を探せ!。

探し人は誰ですか?

 気配。それは生き物が発する存在感。息遣い。それは生き物が生きる上で大切な生理現象。自分はここに居ますよと言うシグナルですね。でもね? 世の中には、そこに居るのに気付かれない不遇な運命を背負った人が居ますよね。彼らも生きているんです。存在価値はあります。……多分。そう、だから誰か気付いてあげてください。



 師匠と離れて23日目、双子が旅に出て8日目の午後。



 朝食後、マザーとのやり取りで思い出した魔力操作の訓練項目だったが、あまり芳しく無かった。

 なんの訓練かと言うと、魔力を内側に縮めて隠す訓練だ。

 いつだったかも試そうと思っていたのだ。

 その時はマザーが泣き出して大変だったので、思い付きは直ぐ露と消えた。

 それをまた思い出させるのもマザーだったりする。

 どちらも母の愛ゆえなので、悪いとは思わない。

 そして思い出した訓練を実践してみたのだが。

 これが、中々に上手くいかないのだ。

 広げられるのだから、縮める事も出来るだろう。

 そう思いますよね?

 でも、そうじゃないんだなこれが。


 当社比6倍強にまで膨れ上がった俺の魔力は、膨れ上がったが故に扱いが難しくなったのだ。

 縮めよう縮めようと懸命に操作するんですけどね。

 何故か集めた端から横に広がるんですよ。

 何を言ってるか分からないですよね。

 想像してみてください。

 自分が風呂に入っているとして、水面に腕で囲いを作って、それを自分の方に向けて集めたとして。

 それはそこに留まりますか?

 脇から洩れるでしょ? その現象が起こるんですよ。

 まるで富のようですよね。

 懸命に集めるけれど実際は横から洩れてる。

 そんな滑稽な事に朝の貴重な時間を費やしたワクタシ。

 ふふっ笑える…。


 「さて自嘲と愚痴はここまでにするか」

 何かアプローチの仕方が違うのかもしれない。

 家にいるだけじゃ何も思いつかないかもしれない。

 ここは外に出て村人を魔眼で観察しよう。

 自分との違いを認識することで何か解かるかもしれない。

 そして俺は、かもしれない症候群から抜け出す様に家を抜け出る。


 「お母さん。外にお出かけしてくるね!」

 「いってらっしゃい。気を付けるのよ? クラウス」

 「はーい!」

 注意しよう。

 もとい注視しよう。

 つぶさに観察しよう。



 一人目、四十代男性。

 今日も真っ赤だ。怒りっぽいのか?

 魔力は太く纏まって空に消えて行ってるね。


 二人目、三十代女性。

 魔力の形は普通ってとこだな。

 細く空に消えて行ってる。


 三人目、いつかのお姉さん。

 淡いピンク色だな。何か良い事あったのかな?


 四人目、トリガーハッピー野郎。

 真っ赤なのはいいとして、なんだあの魔力。

 絶えず形が不安定に揺れている。情緒不安定なのか? お大事に。


 五、六人目、バカ二人組。

 真っ青だ。

 以下略。



 「ふう。色々見て回ったけど魔力って不思議!」

 じゃねーよ!

 何だか色々見たけど、あまり参考になりゃしないな…。

 次は何処に見に行こうかな。

 今居るのは村の中心だから…。


 ん? …今誰か居たか? …。

 今何かを感じた気がするんだが……。

 おかしい。

 何かが今横を通り過ぎた気がしたんだ。

 もしかしてゴーストとかそういう魔物めいた奴が居たのか!?

 いつの間にか村に侵入して危険が危ない状況になっているとか!?

 よし! 魔眼で見るんだ! 平和の為に!


 …。

 ……。

 ………。

 ん? んん? ん?

 何だ? アレ。

 村長さんちを見た時に。

 入口が何かブレなかったか?


 「近づいてから見てみよう……」

 気分は珍獣ハンターですよ。

 そ~っと、そ~っとですよ。

 そして入口から中を観察です。


 そしてそこに居たのは……。

 ヴェラさんだね。


 「どうしたんだい? クラウス。そんなとこで何やってんだい?」

 「こんにちは! 村の中を探検中なの」

 「そうかい。家には今は私とヘンリックとティアくらいしか居ないよ」

 そうでしたか。


 「そうなの?」

 「ああ。ティアは奥で掃除してるよ……。あっ」

 ん? なにそのあっ、は?


 「もう一人居たね。テオが居たわ」

 「テオ?」

 苦笑いでヴェラさんが頭をかいているな。


 「そうさ。うちの家の次男坊さ。たま~に忘れちまうんだけどね」

 ヴェラさんの口から乾いた笑い声が洩れてますな。

 テオさん可哀想に。


 「テオお兄さんって言うんだ」

 「今日も農作業の手伝いに行ってるはずなんだけどね。そろそろ戻ってくるんじゃないかね」

 うむ。存在感がハンパない程に薄いのか?

 生みの親にも忘れられるとか凄いな。

 もしかすると、さっき俺の横を通ったのってテオなのか?


 む! 今視界の端に何か居た!


 果たしてそこに居たのは……テオ本人でした。


 「……母さん。ただいま……。」

 声ちっさ!

 「あら。おかえり。お手伝いありがとうね」

 ヴェラさんが声に反応して顔を動かすけど。

 そっちじゃないよ?


 魔眼を発動してる俺だから、はっきりと違いが解った。

 魔力が内側に内側に縮む様に集まっているのだ。

 魔力の色も無色透明。

 陽炎と言うより。

 淡く光る蛍のようだ。

 陽の光の下で光っても見えないけどな!


 「こんにちは!」

 「……こんにちは……」

 だから声小さいんだよ!

 駄目だこの人。

 風が吹いただけで消えてしまいそうだ。


 「……僕、部屋に行くね……」

 「分かったよ。夕食の時はちゃんと来るんだよ」

 そして幻の様に消えたテオ少年でした。


 「あの子も、ヘンリックくらい元気があればいいのにねぇ」

 「ヘンリックお兄さんは元気だもんね」

 ありゃウルサイくらい元気だ。

 さて、超常現象もネタが割れば不思議じゃなくなるな。

 魔力操作の糸口が見えたぜ。

 そうテオだ。

 これから観察をして、魔力操作の参考にさせてもらおう。


 「僕、そろそろ行くね!」

 「そうかい? ディアによろしく言っといて。あと塩はもうそろそろ届くってね」

 「はーい! バイバイ! ヴェラさん」

 そして俺は魔力操作の極意を極めるべく。

 おうちに帰るのでした。




 極めすぎて存在を消さないよう注意しよう。

存在感のある書き手になりたいですね。

読者の方に忘れ去られないよう頑張ります。

読んでくださり。ありがとうございます。


次回も会いましょう

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