明かされた過去と嫌な真実。
お待たせしました。出来立てホヤホヤです。
人が幸せを感じるのが食べている時なら。不幸を感じる時とは一体何時なのだろうか? 人の不幸は様々だ。人の数だけあるのだろう。怪我をした時? お金を損した時? 又貸ししたゲームを無くされた時? これは俺の実体験だな。でも俺が現在感じている不幸はそうじゃない。それは…。
「腹は満たせど、知識欲は満たず」
腹いっぱい食べてすっかり頭から抜けてしまったよ。
魔法の検証が、実験が、空腹の前では忘却の彼方だよ。
紫外線、可視光線、の魔法利用の検証を忘れてしまったのだ。
「クラウスどうかしたの?」
マザーの作ってくれた夕食の食い過ぎで腹いっぱいなのです。
「お母さんの作る料理が美味しくてお腹いっぱいになっちゃったんだ」
「今日もディアの作る料理は素晴らしいよね」
ダディも便乗してきましたよ。
流石ですよリア充侮りがたし。
「二人共ありがとうね?」
少し目が潤んでいますね。今日は涙腺が緩くなっているのかな?
「目が赤いよ? どうしたんだいディア」
「大丈夫よ? トリス。私トリスと一緒になれてクラウスが生まれて嬉しくて泣いただけなの」
涙に濡れた女性も魅力的だ。
俺もいつか師匠を嬉し泣きさせたい。
「そうかい? それならいいんだけど。でも無理はいけないよ?」
「ふふふっ。トリスったら心配性なんだから。私がクラウスを妊った時も大慌てだったのよ?」
そんなことを言いながら俺に水を向けてまいりましたよ。
「お父さんはお母さんの事になると心配で仕方ないんだね!」
お父さんは心配なんでしょうね。
「でも本当に今日の夕食は美味しかったよ!」
今日のご飯はトマトのスープでした。
キノコとジャガイモと肉が、それぞれいい味を出していましたよ。
いい仕事してますねぇ。
「いっぱい食べて大きくなるのよ? その為ならお母さん頑張るから」
母の愛は偉大なり。
「そうだ。昨日クラウスが言ってた事を、兄さんに頼んできたんだ。そしたら驚きの情報を耳にしたんだ」
「あら? 何かあったのかしら?」
「何があったの? お父さん」
驚きの情報とな? 一体全体何が始まるんです?
「実はね…。クラウスの言っていた竹に関係する事なんだ」
何だよダディ焦らさず教えてくださいよ。
「竹? 何かしら。」
マザーは知らないのかな?
「竹に関係するお話?」
俺も気になります!
「兄さんが、東に行く理由なんだけどね。その竹が増えすぎて、どうにかならないかって話を相談されたからなんだ」
ほっほぉ~増えすぎたねぇ。やっぱり繁殖力が驚異的なんでしょうかね?
「竹ってそんなに増えてしまうものなの?」
そうなんですよ。マイ・マザー。
「ああ。とても増えやすく成長も早いんだ。他の植物を覆ってしまう程に増えるんだよ」
ダディが身振り手振りで竹の増える様をマザーに教えている。
「なんでも今年は雨が多く降ったからじゃないかって、兄さんが教えてくれたんだけどね」
雨が多く降ると育ちが早いのか?
「それに伐採する人が、怪我をして寝込んでいたのも原因の一つだって、言ってたね」
なるほど放置されている間に増殖したと。
「まぁ。怪我をしてしまったのね。大丈夫かしら」
マザーよ。どこまでも優しいお方よ。
「確かに心配だね。竹林が増えすぎると他の野草や木が育ちにくくなる。そうすると消毒に使っていた薬草まで枯れてしまうかもしれないしね」
なるほど。解毒剤を作る材料も取れなくなると。死活問題になりかねないな。
「大変だね。動物もいなくなっちゃうかな?」
どうなんだろ?
「それは分からないけど。確実にそこに棲む獣は影響を受けるだろうね」
「怖いわね。獣が居なくなれば、それを糧にする人も食うことに困ってしまうわ」
うちも死活問題になりかねないな。
まぁそれでも、そこに棲む動物はいるんだろうけどね。
でも増えすぎて困る程に竹林が拡大しているのか。
「兄さんは頼りになるから。他の村に相談されたりもするんだよ。だから現状を知る為に東の開拓村へ見に行くんだ」
うちの村の村長は若いのに頼りになるんですね。
俺の不幸を見て笑っていた人とは思えませんよ。ええ。
「お義兄さんも。この村の維持や他の村の相談と忙しわね」
「そうだね。今度ばかりはどうなるか分からないって言ってたよ。何か良い解決方法はないだろうか」
二人共難しい顔してしまったよ。
確かに利用法でもあれば分からなくもないけどね。
ただ繁殖力が旺盛で? 馬鹿みたいに成長が早いだけの植物じゃ誰も見向きしないよな。
うん。他に誰も思いつかないよな。うんうん。
だから竹炭にしてどうにか消費出来ないかと考えた訳か。
だけど作るスピードが上回る事が無ければ厳しいよな。
ここからは想像なんだけど。
伐採する人が怪我をして伐採できなくなり。
竹炭にして消費しようと考えたけど。
それを作る人や燃料、時間が無かった。
そうこうする内に竹は増えに増えたと。
気づけば竹林に林一つ侵食されて、さてどうしようと相成った…かな?
「伯父さんも大変だけど。そこに住む人達はもっと大変になるんだね」
「そうだね。今はどこの村も人手が足りないらしいよ。どうしたもんだか…」
だよなー…うん? 他の村でも人が足りてないのか?
「お父さん。どこの村も人が足りないの?」
なんでよ?
「クラウスはまだ小さいから知らないわよね」
そうですよ。教えてプリーズ。
「そうだね。クラウスが、まだまだディアのお乳で育ってた頃のことだしね」
そりゃ知らないわ。
乳幼児の頭で知識を詰め込めるのは真の天才児だけだわ。
幼い頃の全ての記憶を有しているとかどんだけだよ。
今はいいか。
「これは昔々のお話なんだけどね。この世に昔、悪い神様がいたんだ」
お? もしかしていつか師匠に教えてもらった。あの神話の話か?
「悪い神様が地上を食い荒らす悪い獣を生み出したんだ」
そこはだいたい同じだな。
「その悪い獣達が、地上を食い荒らしていたんだけどね。エルフ達が力を合わせて倒してくれたんだ」
エルフがその為に生まれたとかは知らないのかね?
「エルフ達はとても強く。悪い獣を退治してこの南の大陸を守ってくれたんだ」
うんうん。そうそう。
「でもね? 全てを倒しきることは出来なかったんだ」
おや? 話が怪しくなってきましたな。
「悪い獣達も、ただ狩られるばかりじゃなかったんだ。穴ぐらに逃げ込んだり。山の奥深くに隠れたり。集まって逆にエルフを襲ったり。とにかくしぶとく生き残った奴等がいたんだ」
そらそうだよな。大人しく狩られるだけなんて旨い話はないよな。
「そして生き残った悪い獣達は、徐々に増えて色んな所に棲家を構えたんだね」
増えたのか。エルフの仕事も万全とは行かなかったのかな?
「その増えた悪い獣達が、つい最近人里近くまで出てきたんだ」
なんと!? エルフが居たのになぜ?
「エルフはどうしたの? どうして悪い獣を退治しないの?」
せっかくの最高戦力がどうして機能しなかったのよ。
「うん。折り悪く北の帝国から待てと言われたんだよ」
北の帝国が? なんでよ。
「どうして?」
「この南の公国を支配している…。そうだね守っているのは北の帝国だって言い張って。それでエルフが動くのを邪魔しちゃったんだ」
あっちゃー。最悪だな。
「国民に、皆にいい所を見せたかったのかな。それで人族の軍が動いたんだ。沢山の人が、ね」
そうか、軍として動く為に徴兵でもされたのかな?
「その時戦ったのが帝国の軍人達だったんだ。だけど…」
ありゃ? 徴兵じゃない? じゃあ何よ?
「守りきれなかったんだね。軍隊は敗走。負けて逃げちゃったんだよ。そして悪い獣達が、村で生活していた普通の村人達を襲ってまわったんだ」
そりゃそうか。時にエルフも襲われるんだ。
人の軍隊じゃ太刀打ち出来なかったのか。
しかしダディの顔に少し陰りが見えますな。
何あったんだろうか?
「それは酷い被害でね。父さんの知人にも…クラウスから見ればお爺ちゃんだね。その知人も被害に遭って亡くなってしまったんだ。人の為に働くいい人だったんだ」
そうか、惜しい人をその被害で亡くしてしまった事が悲しいんだな。
「その後、漸くエルフ達が危機的状況になってから動けたんだ。邪魔をする帝国の軍人達は逃げた後だったからね」
なんだそれ。守れないなら最初からエルフに任せなさい。
「そしてエルフが退治してくれたんだけど…。そこで終わりじゃないんだ」
何よ。まだ何かあったの?
「終わりじゃないの?」
「うん。退治した悪い獣達が残した物があったんだ。病なんだ」
うげっ。疫病か? なんという置き土産。
「その病が蔓延して、広まってね。三つの村が人の数を半分にまで減らすことになったんだ」
「だから人が少ないの?」
そんな理由があったのね。
「そして、さっきの竹の話に繋がるんだ。他の村の人が減ったから他の村から移り住んで助けにいったんだよ」
あーあー。そういう事か。
「だからこの村も人が少ないの?」
「そうだね。本当なら南に進んで海の近くに港町でもって話だったんだけどね。駄目になったんだ」
諸行無常ですな。
これで一つまた理解できたな。
この村の人口が増えないのも。
開拓が進まないのも。
東の開拓村で竹林被害が出たのも。
全ては北の帝国とかいうのが原因だってことだな。
よし、なら俺が一つ知恵を絞ろうじゃないか。
「お父さん。竹をどうにかできれば今、困ってる人達を救えるんでしょ?」
「そうだね。救えなかった人達は救えないけど。今、困ってる人達なら救えるね」
そうだ。今を生きる人達を救おう。
後ろ向きになってちゃ駄目だな。前を向こう。
教訓として胸に刻み。前を向くんだ。
「僕も何か出来ないか考えるよ! だから思いついたらお父さん達に話すね」
「そうか。クラウスも考えてくれるのか。頼りにしているよ」
いくらかダディの顔色も良くなってきたな。
「なんだかクラウスが急にたくましくなったみたいで、お母さんは嬉しいわ」
おや? 今まで静かにしていたマザーが褒めてくだされた。
「えへへ。」
「でも。あんまり急いで大きくならなくてもいいのよ? まだ私達の側に居てね?」
ああ。マザーの抱擁ですよ。
そうだな。家族で寄り添い。支えあって生きていこう。
二人から見れば。まだまだ俺は小さな二人の子供だ。
いつか飛び立つ日まで、一緒に生きよう。
明かされた過去はほろ苦い味だったな。
人族の暴走が生んだ悲劇でした。
人の人生には時に思わぬ横槍ってありますよね。
では次回をお楽しみに。




