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平和の鐘を鳴らす時は?

お待たせしました。

 男は女の突然の涙に弱い。それが自分の心を許した女性なら尚更しみてくるんだ。心の中にじんわりとな。だからクラウディアの涙には慌てたものですよ。俺が生まれ変わりの転生者だとしても、母親は母親だ。多分俺が乗り移った命は危機的状態にあったのだろう。幼女神も言っていたしな。もしかすると『徳』の数字は俺が生まれた事で夫婦共に喜んでいたからカウントされたのだろうか? これだけはまさに神のみぞ知る。といったところだろう。また一つやることが増えたじゃないか。二人の為に生き続けるって事が。




 「そろそろ落ち着いたかな」


 俺は涙を流して震えるマザーを、夫婦のベットに横たえてから自室で人心地ついていた。


 「いきなり泣かれた時はこっちが度肝抜かれるかと思ったぜ」


 体の力を抜きながら、俺は自室のベットに身を投げながら思いが口から出ていた。




 「さて、先ほどの実験結果を思い出すかな」

 何故、アレで理解できたかと言うとだな。

 要は化学反応を見たからなのだよ。

 だが、ただ水の中で揉んでも色は出難いのだ。

 そこで、いつか師匠の前で披露した水を温める魔力操作をしたのだ。

 温めた水の中で良く揉んで振ってやれば、鮮やかな紫色になるだろう。

 アルコールがあれば良いのだが生憎無かったので断念した。


 そうして出来た紫色の色水に酸性の液体を入れると化学反応を起こすのだ。

 色水はリトマス試験紙の様にレモンのクエン酸に反応し紫色がピンク色になる。



 「そして先に入れていたレモンの絞り汁に反応しなかった。それが何を意味しているのか?」

 マザーの施した水魔法は、自身が認識していない物までも排除可能という事になる。

 オートで発動し異物を認識したら確実に水の中から排除開始だ。

 更に化学反応が起こらないくらい綺麗に排除したのだ。

 これは、昨日の夕日を遮った魔力操作もある程度関係してくる。

 俺が頭の中で考えた事が、ある程度実現可能だという魔力操作の所作だ。



 「だから空気中の水気を利用して水の膜で出来た球が出来たり。眩しい夕日を綺麗さっぱり遮っていたんだな」

 それも俺が展開した魔力フィールドの中だけ、だけどな。

 魔力を引っ込めて漏れないようにしたらどうなるんだろか? 今度試そう。


 「魔法はある程度指定した事を確実にオートで発動しているって事だ。なら魔力操作は?」

 これは言わずもがな分かる事だがしっかり認識しておこう。

 魔力操作、これはマニュアルで事象干渉を行う、これも魔法の一つなのではないか?

 発動方法が違うから便宜上は魔法と魔力操作に分けて置くがな。

 しかし魔力操作は詠唱も無しに想像だけで魔法の様に事象干渉を起こしている。

 呪文を覚えなくても訓練次第で魔法発動以上の早さまで行けるんじゃないか?

 これはこの世界の魔法事情から見れば大きなアドバンテージになるはずだ。

 魔力に敏感なのは、エルフ、ドワーフ、あとは野生の獣くらいだ。



 「よし。これからも魔力操作を訓練していこう。何があるか分からない世界だ。備えておけば助けになるはずだ」

 一応の実験結果のまとめが出来て疑問解消だな。

 初心も新たにした事だし次の疑問を片付けるか。


 そう次の疑問だ。

 この部屋の有様だ。

 なーんで魔眼で見ると蜃気楼の様になっているのかな?


 「魔眼を消す!」

 スッキリ。


 「魔眼を付ける!」

 ぼんやり。


 「魔眼を消す!」

 スッキリ。


 よし遊びはここまでだ。

 原因もある程度理解した。

 え? 今ので解ったのかって?

 解りますとも。

 魔眼を持つ俺の目は誤魔化せません。

 下手人は…こいつだ!




 「磁石が蜃気楼の原因かよ」

 そう、昨日せっせと魔力を注ぎ込んだ磁石の上の空間が歪んでいたのだ。

 磁石のない所は歪みが小さいのだよ。


 「こいつの上の空間が歪んで見えたのか。なんでだ?」

 手に持って見てみるべ。

 うむ。なんの変哲もないただの磁石にしか見えませんな。

 ただし、それは魔眼を発動していない裸眼で見た場合だ。



 「どれ。魔眼で視てみるか」

 うわぁ~歪んで~み~え~る~ぅ。

 まあ冗談はほどほどに。


 「すげぇ。磁石から出る魔力がまるで磁力線を見る為に厚紙の上に置いた砂鉄みたいに歪んでるわ」

 理科の実験でよく見るアレだ。磁石の磁力線に沿って厚紙の上の砂鉄が変化する様子だ。

 これのせいで魔眼で見た景色が歪むのか。

 しかし魔力を注いだ磁石だけしか歪んで見えないみたいだ。

 魔力を注いでいない磁石は魔眼で見ても一つも変化が見られない。


 「でもなんで今頃? 昨日はこんなに顕著に現れなかった変化だ」

 んー…これはアレですかね? あまり確証は無いんだが、そうとしか思えない。

 磁石が、俺の体に触れる時間が多い。

 或いは魔力に触れている時間の長さ故か。

 それしか考えられない。



 「鉄が磁石に影響を受けて磁気を宿す様に、磁石もまた魔力の影響を受けて魔力を引き付ける様に変化した。これしかないな」

 だが、それだけでは部屋の中の歪み具合は片付けられない。

 一つ検証して見るか。

 まずは部屋の片隅に磁石を纏めて置いておこう。


 「磁石を籠に入れまして~部屋の隅に置きませぅ~」

 実験は楽しくやらなきゃね!


 「おし。こんなとこだな」

 さてさて、部屋にある歪み。これの本当の正体を暴こうじゃないか。


 「俺の想像通りなら。『動く』はずだ」

 ではやるか…魔力よ。我が意のままに動け!



 果たしてどうなったのか?



 「やったぜ! 扱う魔力が増えた? 部屋も歪みねぇな」

 部屋に充満していたソレは俺から漏れ出た魔力だったのだ。

 まさかと言う思いと、やはりそうかと言う納得が同居してるぜ!



 「こうなると、もうクズ石なんて呼べないよな。なんせ魔力を引っ張って留めるんだもの」

 将棋の歩が成金になるがごとき大金星ですよ!

 磁石は成り上がって『魔力磁石』となった!

 そのまんまやんけ。


 原理は想像だがこうだろう。

 まず、ただの磁石に魔力を注ぎます。

 これにより魔力との親和性がなされた。

 次に長い時間、魔力を放つ対象と同じ部屋か近い場所に置く。

 そうすると部屋から出ていくはずの魔力を引きつけて部屋の中に対象の魔力を充満させる。

 これにより魔眼で見た時に部屋の中の魔力が歪んで見えた。


 これで一応のロジックとしよう。


 これは科学的見地から言えば、まだまだそこの浅い定義だが今の段階ではしょうがない。

 だって本職じゃないもん!


 「ん? だけど待てよ。もしかするとドッドに見せてもらったあの武器はもしかしたら…」

 あの武器の全身を覆っていたあの魔力は、もしかしたら俺のやった事と近い事があるのかもしれない。

 魔力を留める磁石の近くに置いていたから磁気と魔力が宿ったとか?

 そうじゃなければ、クズ石なんて言われながらも一緒に取っておくハズがない。

 もしかしたらこの事実は大親方と呼ばれる。

 ごく一部の者しか知らない事実なのかも? 疑問を解消したと思ったらまた新たな疑問が生まれた。

 コレも将来調べる事にしよう。



 「そうだ。また新たな実験を思いついた!」

 ひらめいた! ってか今世の俺は意外に冴えているんじゃあるまいか?


 魔力を注いだ磁石を部屋の四方に置いてその中で寝れば魔力の回復を手助け出来るかもしれない。

 この実験は魔力回復の実験以外にも検証すべき事がある。

 それは…。


 「人族の魔力量増幅方法っか…」

 冴えてはいるんだけどさ。

 これにはあまり乗り気になれない。

 気付いておいてなんだけどさ。

 これ絶対に門外不出の知識にしなきゃ駄目だ。

 これだけは生涯の秘密として墓場まで隠匿すべき事だ。

 なぜならば…。



 「あーあ。これ戦争の火種になるんじゃね?」

 そう…お分かりの方も居るでしょう。

 人族の魔法取得方法が火などと言う危険極まる習得方法からも知れる。

 いい気になった馬鹿がこれを知れば確実に独り占めして戦争の原因になるわ。

 トリガーハッピーよろしく火魔法を使いまくって自然あふれるこの世界を焦土に変えること間違いなしだ。


 「気付きたく無かったぜ…。」

 だけどこれについては一応のセフティーを設けられそうだ。


 「引き付ける力が増すなら~反発する力も増すっしょ」

 俺が磁石に魔力を注いだ時の事だが、面白い現象が起きていた。

 一つだけある事を想像しながら魔力を注いだ磁石があったのだ。


 「それが…これだ」


 そう俺は、磁石を床に敷いている。

 その上に件の磁石を置いてみた。

 すると…。


 「なんということでしょう。俺が浮いている」

 反発する様子を想像しながら磁石に強く魔力を注いだのだ。

 その結果、浮いている磁石に板を乗っけて見たら浮いているじゃあーりませんか。

 その上に重心を取りながら乗ってみた。

 すると、俺も浮いてしまったのだ。


 俺は今、五歳児だから20kgもないよな。

 手の平に乗る5センチ四方もない磁石の上に乗れてしまったのだ。

 どんだけ反発力が強まっているんですか?

 誰か計算してプリーズ! 頭の出来がよろしくないので分かりません!

 まあ今はいい。降りよう。


 「よっこいせ」

 ジジ臭。


 「しかし反発するだけじゃないんだな! これが」

 そう、ただ反発するだけじゃない。

 なんとこの魔力磁石はだね。

 一度付与した反発する魔力のイメージが上書き不能なのだよ。

 反発するイメージで魔力を注ぎに注いだ結果。

 引き付く様子を強くイメージしながら魔力を注いで見ても上書きできなかったのだ。


 しかもこれ魔力まで弾いている。

 魔眼で見ると解かるが、魔力も弾くんだよ。

 だから部屋の中が余計に歪んでたのだ。

 引き付ける魔力磁石と反発する魔力磁石のお陰で蜃気楼の様に歪みに歪んでいたのだ。


 「と言うことはだ。世に出すのは魔力を弾くだけの磁石にすれば、そういうものだと認知されるってことさ」

 戦争は回避された。

 また一つ世の中に貢献できたのではないだろうか?

 え? 魔力弾くなら魔法の障壁になるだろって? そうそう上手くいかないのが世の中ですよ。


 「魔力は弾いても。完成された自然現象までは弾けないんだよな」

 だって俺が作り出した水の球を弾けないんだもの。

 びしょびしょですよ。

 土を固めた物も普通に当たります。



 「あくまでも魔力を反発するだけの磁石って事だな」

 やはり発明は戦争じゃない事に使いたいじゃないか。

 かの発明王もそうだったんじゃないかな。

 だから賞を与える事にして、発明は平和の為に有効利用できないかと資産を残したんじゃないかな。


 甘っちょろいと笑わば笑え。

 だけど人の世が続かなければ栄華なんぞ砂上の楼閣もいいとこさ。

 誰かを騙し唆し、欺けたとケツをまくって逃げてる奴等も実は幻の中を逃げ惑っているだけなのだ。

 哀れなもんだよ。

 やっぱり平和が一番さ。

 だから俺の平和を確認しにいこうじゃないか。


 マザーよ。そろそろ起きて夕餉の支度をしよう。

 俺も手伝うから! 腹減った!




 人間の一番平和な時は飯食ってる時だね!

やはり腹が空くと人間怒りっぽくなるんですよ。

だから腹を満たして平和になりましょう。


私もご飯を食べて平和になってきます。

次回もお待ちくださいませ。

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