出会いは別れの始まり。
「師弟関係と言っても今すぐ教える事に専念するという訳にはいかない。私もやらなければならない事がある。だから使命を先に果たしてくる。それまでは、みだりに力を他人に見せてはいけない。分かったかな?」
どうやら師匠はヘタレたようだ。
早口で捲し立て、頬を朱に染めながら要件を言い終えた。
「分かりました師匠!」
だが指摘しないのが紳士だ。
「私が来るまでは魔力の練習に専念するように。練習方法は水や風、土に火これらを魔力だけで動かせる様にすることだ」
呪文を覚えるとかじゃないんだ。
「呪文を覚えるんじゃないの?」
「人族は魔力が扱える様になると直ぐ呪文をと言うけどそれは違うんだ。魔力を正しく扱えない内に呪文に移れば過剰に魔力をつぎ込んでしまって直ぐに魔力半減症を引き起こすんだ。人族はそれが理解出来ていない。だから人族は魔力が少ないと言われているけど実は違うんだ。」
長い年月を生きるから蓄積される情報の量が違うんかね?
確かに人は直ぐに結果を求めがちだよな。
前世の地球でもそうだったな。
はえば立て、立てば歩めと急かしたり。
乳離れの出来ききれていない赤子のおしゃぶりを取り上げたり。
あれのせいで鼻呼吸の訓練が阻害されてるとか本で見たな。
口呼吸は雑菌とか口から吸い込んで肺を弱らせる。
だから喘息とか出るんじゃないかな?
ついでに顎の発達阻害をしてるとかも書いてたな。
そして良く噛む事をしなくなり
上顎も弱くなり。
年が経つと蓄膿症を引き起こすとか。
弊害のオンパレードだな。
まあ今はいいか。
それと同じ事が言えるのか。
魔力を正しく扱えない内に魔法を使い。
過剰に魔力を注ぎ込み。
それに慣れてしまうと。
一度付いた癖は抜けないからな。
「そうなんだ! やっぱり師匠はすごいや!」
そして腰に抱きつく。役得だ。
「理解が早いね。素直な事はいいことだよ」
頭を優しく撫でてくださる。
至福の時や。
「私はこれからまた他の村々を調査してくる。一つ月に一度はここに来れるようにする。だから、それまでしっかりと練習しているんだよ?」
「はい! 師匠!」
お仕事ならば仕方ない。
離れる事は寂しい。
しかし甘えてばかりはいられない!
しっかり練習して、次会えるまでに成長して驚かせよう。
頼りになる男にならねば!
だが鞭だけでは駄目だ。飴も欲しい。
おねだりしてみようかな?
「村に来たらまた一緒に寝てくれる?」
「え? あー…うん。それくらいなら良いよ?…」
微妙に頬を染めているのは何でだろうか?
その後、マザーやダディーに別れの挨拶を告げ師匠は調査の旅に赴くこととなる。
「クラウス君には才能があります。ですがまだ幼い、それ故にどう成長するか分からない。そこで私が教えようと思います。だから魔法の事を私に一任していただけないでしょうか?」
師匠がそう言うと。
「あらあら。うちの子が才能あるなんて凄いわねトリス」
マザーは変わらず暖気で朗らかな様子だ。
「そうか。クラウスには魔法の才能があるのか」
ダディも気負った感じが見られない。
二人共、肝の太い人だ。
「それでは末永く。よろしくお願いしますね? 先生」
マザーよ。それでは婚約の挨拶じゃないだろうか?
まあ本望なのだが。
「よろしくお願いします。」
頭を下げたダディの横で、俺に向かって笑顔を向けるマザーの顔は、全て承知ですといった感じの顔だ。流石出来る女は違う。お見通しな訳だ。母は偉大だ。
「こちらこそ出来る限りを尽くします。調査の任務が終わるのは二年程かかると思いますので、終わり次第教えて行こうと考えています」
そう言って師匠は席を立った。
「今日は、これからまた旅にでます。お世話になりました」
「道中は気を付けて下さいね」
「ありがとうございます」
美女が二人並ぶのは絵になるなぁ。
そして俺だけは村の入口までお見送りしたのだ。
「師匠! 必ず来てくださいね? 待ってるから!」
寂しさが顔に出ていたのだろうか? 師匠は俺を優しく抱きしめてくれた。
「必ず。また会いに来るよ」
そして頬に唇を当ててくれた!
「それじゃあ! また会おう!」
そして馬上の人となった…。…エルフか。
その顔は眩いばかりに輝き。
白い頬は赤く染まっていた。
やっぱ行って欲しくねーー!!
師匠ー!! カムバァーックッ!
しばしの別れです。
あのまま居たら確実に主人公はエルフばかりに執心してしまうでしょう。
共存は良いけど依存は駄目です。
また明日も会いましょう。




