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未知との遭遇。

 朝靄の中佇む人影が見える。

 その影は二つ。

 影は寄り添っていた。

 小高い丘にその二つの影が朝日を浴び丘に影を映していた。


 「ようやく…約束が果たせそうだな」

 「そうね…。こんなに早く結果を出すなんて。…そんなに私が好きなの?」

 その人影は男と女だった。

 男は万感の思いを込めたように。

 女はそんな男を試すように互いに言葉を紡いでいた。


 「早くと言っても、もう十五年も経っているんだけどなぁ。」

 「私にしてみれば早い方よ? こんなに立派になって…」

 男がどこか拗ねた様な感じで返せば。

 女は慈しむように、大事なものを優しく包むように男の手を握っている。


 「昔は見下ろす方だったのに、今じゃ貴方を見上げる方になったのよ?」

 「君に釣り合う男になりたかったから必死に成長したんだよ」

 「確かに大人にはなったけど、肝心な言葉を忘れてるわよ?」

 女が拗ねた様に男に迫るが、その顔は罠に嵌めた相手をいじるような顔をしていた。


 「うっむぅ。大人になると恥ずかしくなることもあるんだ」

 「あら。昔はあんなに素直な良い子だったのになぁ。あんなに熱烈に私に愛の告白を繰り返してきたのに。もう言ってはくれないの?」

 男が昔を思いだし背を向けて顔を赤らめた。

 女はそっと男の背に手を添えている。


 「言わないとは言ってない。心の準備が必要なんだ」

 「あら? 私はもうずっと前から準備は終わっているのよ?」

 尚も言い募る女は楽しそうに微笑んでいた。


 「そんな意地悪な口はこうしてやる!」

 「あっ!」

 男は女の虚をつくように女を抱き寄せた。

 そして二つの影は重なった。

 暫らくの後二人は離れた。


 「こんなことでは誤魔化されないわよ?」

 頬を朱に染め、唇を濡らしながら女は見上げている。

 そんな女の肩を男はしっかりと両の手で掴んでいる。


 「今までも、そしてこれからも君だけを愛し続けるよ。アデリーネ」

 男は薄緑色の綺麗な瞳を真摯に見つめ囁く。

 男の言葉に女は綺麗な瞳を涙に潤ませていた。


 「私もよ。私もクラウス『君朝だよ? 起きなさい』

 あっあれぇー? アルェー?



 ――――………・………――――




 「クラウス君、抱きついていられると私が起きられないんだけど?」

 「へ?」

 柔らかい枕に抱きついていると思ったら。

 お胸様でした。

 しかも赤く跡が付いていらっしゃる。

 もしかして俺が付けたのか?

 いわゆるキスマークである。

 「お母さんの様に思って抱きつくのはいいんだけど。その…吸い付くのは遠慮してもらえないだろうか?」

 女神が真っ赤になりながら抗議している。

 「ご、ごめんなさい」

 俺は即座に謝った。

 土下座で謝った。


 「うん。分かればいいんだ」

 お許しが出たようだ。

 女神が背を向けて下知を下された。


 しかし俺は見ていた。

 謝りながら見ていた!

 女神が御霊峰の頂上を押さえながら抗議していたことを。

 そういえば夢の中での口付けで何やら少し硬い物を口に感じた様な気がする。

 童貞の想像力を遺憾なく発揮して。

 これでもかと吸い付けていたような気がする。

 吸ってアマガミして舌でぐるんぐるんやった気がする。

 舌にしては、すこーし硬いかなーと思ってはいたがアレは…。



 「私は先に行っているから。君も遅れずくるんだよ?」

 そう言い残して女神は去って行った。

 朱に染めた横顔は可憐だ…。


 そうかあれは夢か。夢なら仕方ない。うむ。

 俺も着替えるか。



 しかし昨夜は有意義なひと時であった。

 収穫もあった。

 女神は独身であらせられる。

 チャンスだ。

 俺の真摯な告白は確実に届いている。

 女神のハートを射止めるチャンスだ。

 ならば後は掴むのみ! こう、ぐわっし! と掴んで…。

 …あの胸もぐわしっと揉みしだきたい。




 改めて思うが。

 俺の人生でここまで、アグレッシブになれたことなどあっただろうか。

 いいや無いな。


 生前を含めても有りはしないだろう。

 生前は真夏の朝に消えかかった蚊取り線香のごとく。

 希薄で凪いだ無風状態の中の煙みたいな人生だったはずだ。


 それが今じゃ目を合わせて即結婚を申し込んでいる。

 人間変われば変わるものだな。


 さて支度も済んだし飯にしますか。




 「それでは、今朝は適性の確認をしようと思います」

 朝食後、女神は事務確認の様に話している。


 「よろしくおねがいしますね」

 「お願いします。」

 マザーとダディは頭を下げながら頼んでいる。

 俺もそれに習う。

 「おねがいします!」


 「それじゃあ何で調べようか? 得意な物があればそれでいいよ」

 「水でいいかな?」

 むしろ水しか使えませんがね。

 見栄を張りたいんですよ!


 「水かぁ。君は水を操るのが得意なのかな?」

 「…最初に教えてもらったのが水なので」

 見栄など張れるわけもなし。


 「構わないよ。人族にしては目の付け所がいいね。水は素直だ。火など気性が荒くて扱い難いんだよ」

 あら、そうなんですか?


 「ドワーフのおじさんに教えてもらったんだ」

 「ドワーフか、それなら納得だね。彼等は火を使うが水もよく使う。いい先生に教えてもらったようだね」

 「うん」

 女神が頭を撫でてくれる。


 「外に出て桶に水を入れて試すとするか」

 頭を撫でながら確認の為の算段をつけている。


 そして外に出た訳だが、さて水で何しようか?

 ここは無難に水を回すか?


 「水を桶の中で回してみるね?」

 「うん。それでいいよ」

 女神も納得の様子。


 よし。精神集中だ。ついでに魔眼も発動。

 うむ。オールクリア。

 練習の成果か俺の周りに魔力が漲ってきている。


 「おや?」

 女神が訝しんでおられるな。


 まあいい。今は目の前の水だ。

 水よ踊れ、桶の中で踊れ! ぐるぐる回れ! ロンドのように!


 「えっ!?」

 水が勢いよく波打ち、次第に渦を巻いていく。

 あれ? ちょい勢い付きすぎたか?

 ここまでにするか。

 魔力も引っ込めよう。


 「そんな…この歳で? これじゃあの貴族の…いやいくら同じ子供でも…比べたらあちらが可哀想か…」

 何か呟いてますな。

 もしやありがちなあれですか?

 俺凄いとか?


 「うん。クラウス君の歳にしては出来が良い方だね」

 「えへへ」

 女神がお認めになられた。


 「ただし、力を多く注いだようだね。魔力の気配が薄くなっているよ」

 ありゃ引っ込めたのをそう捉えられますか。

 てか本当に魔力を感じる事が出来るのか。

 見えてはいないようだけど。


 俺には見える。

 女神の周りの魔力が!

 少し赤いピンク色だ。

 興奮状態とか?

 おや? 胸のあたりが濃い桃色ですな…。

 正確には頂上が…。

 まあいい。


 さてこれで終わるのも味気ないな。

 何か試そうかな。

 水、水ねぇ…。

 そうだ。

 温めてみるか。

 「もう一つやってみてもいい?」

 「何かな? 無理しない程度ならやってみてもいいよ」

 「はーい!」


 さて、せっかく魔力なんて不思議パワーがあるんだ。

 そこに科学的な物も混ぜてみようじゃないですか。

 水の分子を振動させて水を温めてみよう。

 水の分子、酸素と水素。

 よし魔力を桶に向けて~。

 互いを擦るように~。

 んー? 上手くいったか?

 手を入れてみるか。



 うむ。水だ、ちめたい。

 何が違うのやら?

 擦るんじゃない?

 運動エネルギー…。

 振動…。

 揺れる。

 魔力を動かしてみよう。

 魔力を高速で振動させるような…イメージ。

 そして分子が互にぶつかり合うイメージ。

 『えっ?』

 妄想しろ…俺にできるのは頭の中で描くだけだ。


 互いに激しくぶつかり合う分子。

 『そんな…』

 今こそ解き放てっ!!!


 「クラウス君!!」

 はい?


 「なーに?」

 呼ばれたので女神を見上げてみた。


 「君…いったい何をしたの?」

 なにって水を温めようかと…。

 あれ?





 桶から湯気が出ていますがな。



主人公やりすぎ。


中々にフリーダムなやつで困りものです。


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