死んでからが本番です。
霞みがかっていた意識が、誰かの声で覚醒していく。誰だ?
「汝、迷える魂よ。我が声が聞こえるか」
声質は幼い少女の様な声だ。ってか幼女だな。
「…ちんまいな」
俺の呟きに幼女が抗議してきやがった。
「誰が小さいじゃ馬鹿者! 第一声がそれか!? 不敬罪で鞭打ちにするぞ?」
「いや、そんな趣味ないんで勘弁して」
相手は幼女。ここは冷静沈着に対応しようじゃないか。できる大人はうろたえない。
万年平だけどな!
「…なんとも冷めた反応じゃな。話が違うぞまったく…。」
尚も愚痴を零す幼女に向けて挙手をして伺いを立ててみた。これ社会人の常識。
「はい」
「なんじゃ」
「あんた誰?」
「よくぞ聞いた。我こそは女神なり」
ドヤ顔で幼女が胸を張る。やはりちんまいな。
「おぬし。今よからぬ事を考えんかったか?」
「気のせいデスヨ?」
ジト目の幼女から視線を逸らしながら答えた。
「まあいい。我は女神、寛容にして寛大な存在。汝の不敬は横に退こう」
流さないんですね。寛容とは何だったのか。あと意味が重複してませんかね?
ついでに一つ重要なことを聞いておこう。
「一つ聞きたいんだけど、この部屋の有様は何なんですかね?」
「おぬしの部屋じゃろ?」
「いや、そうなんだけどさ。なんで半壊してんの?」
そうなんだ何故、俺の住んでいた部屋がブッ壊れているかが問題なんだ。
ヤバイじゃねーか大家さんに叩き出されるぞ。
賠償もんだ。修理費その他で次の円盤…いわゆる記録媒体のアレが買えなくなってしまうじゃないか!
次の奴はファンディスクにおまけ小説と限定フィギュアが付いてくるのに!
「何故そんなこの世の終わりの様な顔をするんじゃ?」
「部屋の修理費や賠償で散財する未来が見えるからだよ。ふふふ…」
「修理? 必要なかろう」
何をそんな無責任なことを言うのかね? この幼女は。
「だいたい死んだ人間が払えるわけないじゃろ」
「は? 誰が死んだって?」
「おぬしじゃな」
「あははは。死んでたらここに居ないじゃないか」
「残念じゃが事実じゃ」
死んだ? この俺がか? どういうことだよ。まだあの漫画の結末も見てないのに! 死んだ? 馬鹿なありえん。まてまてまだ慌てる時じゃない。落ち着いて素数を数えるんだ。まず1……あとなんだっけ? ハッ! これは死んだ事による記憶の欠落か? そうに違いない。決して必要ないから忘れたとか、頭の容量が少ないとか、そんな事はない。それに童貞のまま死ぬとか、ありえない。おお弘喜よ…魔法使いにもなれずに死ぬとは情けない。俺のキングがお嘆きだ。
「馬鹿がいよいよ可笑しくなって頭の愉快さ加減が際限なくなってきたようじゃな」
失敬な! 確かに底辺高校の出で最低ランクの大学にお情けの繰り上げで引っかかりで入れたとしても! ソコまで馬鹿ではないはず。…多分…必ず…頭の良さは微粒子レベルで存在するはずだ。考えてたら虚しくなってきた。欝だ…。
「何故ここが、この有様なのかだったな。これは、おぬしの記憶から再現した…かったんじゃが色々と抜けているようじゃな。そのせいで再現が不完全なんじゃろう」
「へー。俺が死んで。その記憶を元に部屋を再現して見せて。女神様直々に引導を渡しに来たと? そりゃご苦労なことで」
自暴自棄になりながら現状を整理してみたら自称女神は首を横に振っていた。
「誰が引導など渡しに来るものか。おぬしに渡しに来たのは生きる権利じゃ」
満面の笑顔で自称女神は応えた。
でもなんでかな? その笑顔が逆に不安を煽る。
気づけばそこは白い部屋…ではないですね。
導入部分はまだ続きます。




