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女神は二人いた?

 人と人との出会いは、まさに奇跡と呼べる。少し時代が違えば、住む場所が違えば、もしかしたら永遠に出会えないかもしれない。例え永遠に生きられたとしても、人間が一度に関われる人の数など微々たるものだ。だからこそ人と人との出会いは尊いのだろう。そして出会うべくして出会った二人がここにも居るのだ。




 「好きです! 大好きです! 僕と結婚してくだああさあああいいい!!」

 離さんぞおぉおおっ! これは俺んだあああぁああああ!

 誰にもやらん! 今ここに俺の理想を凌駕する存在がいる。

 今この手を離せば二度と手を触れることもできなくなる。

 俺のシックスセンスがそう叫んで知る!

 俺の直感が身体を突き動かすんだ!

 俺の身体が理解している!

 今しか無いと!

 離すなと!

 そして魂が震えているんだ!

 その震源の源は…。





 なんていい香りなんだ…。

 なんて芳しい香りか…。

 やばい頭が飛んでしまいそうなほどキテる。


 人はフェロモンに…。

 匂いに導かれる。

 空気と共に鼻腔に入り。

 そこから感じ取り。

 頭の中に幸せが満ちる。


 その衝撃たるや。

 まさに雷に撃たれたような衝撃だろう。

 その衝撃は血の流れに乗り。

 身体中を駆け巡り。

 波紋となって隅々まで広がっていく…。



 おっと、人様の股に向けて叫ぶなど不調法であるな。

 ここは紳士にならねば。

 顔を合わせ目を見て話さねば誠意も伝わるまい。

 見れば目の前の女性はあまりの事に慌てているじゃないか。

 失敗、失敗。


 「僕、クラウス・バートンと結婚してください。お願いします」

 今度こそ見上げて、その綺麗な緑色の瞳孔を射抜くように、まっすぐ見詰めるのであった。


 「えっと…その…いきなり結婚を申し込まれても…」

 驚きと戸惑いで凛々しさがどこかへ行ってしまったように幼く見える。

 なんだか戸惑う姿が可愛いな。

 白い頬に朱が入る。



 「どうしたんだ? いきなり騒いで」

 騒ぎを聞きいてダディが奥から出てきた。


 「トリス、お客様よ」

 マザーは楽しそうに見ている。


 「お客様か。じゃあ夕食をご一緒しよう」

 「それはいい考えね」

 夫婦の考えは一致したようだ。


 「えっ? いえ今日はご挨拶と確認を…」

 「もう夕暮れですし。食事をしながらでも良いじゃありませんか」

 マザーは押しが強いな。


 「でも、いきなりごちそうになるのは…」

 「遠慮はしなくていいですよ。クラウスも懐いているみたいだし」

 ダディも言ってるしそうしましょう。


 「ですが村長に…」

 「村長には俺が言ってきましょう。理解のある兄ですから大丈夫ですよ」

 「はあ…」

 「そうと決まればさっそく用意しますね?」

 ダディとマザーの連携の前に標的は撃沈されたようだ。

 なんという連携。

 まさに夫婦。


 その後なし崩しに夕食へと雪崩込んだ。



 「じゃあ兄さんのとこの双子に聞いて来たと」

 「そうなんです。バートン殿のご子息が魔法の才能があると言っていましたので」

 情報源は双子かよ。

 しかし良くやった! 褒めて遣わす。


 「魔法の才能のある子供の調査ですか。それで村々を回っているなんて大変ですね」

 「いえ。私にしか出来ないやりがいのある仕事ですから」

 美女二人の歓談は見てて飽きないなぁ。


 「エルフは魔法に秀でている。だから調査官に任命されるんですね」

 「そうなります」

 ダディが感心した様子で聞いている。


 「もう陽も暮れてきましたし確認は明日やることにします」

 そう言ってそのまま辞してしまいそうな彼女にダディが待ったをかけた。


 「そうですか。じゃあ今日はこのまま泊まっていかれるといいですよ」

 「そうね。もう暗くなっているし泊まってもらいましょうか」

 「うん。幸い空き部屋を綺麗にしたばかりだしな」

 「じゃあ準備してきますね?」

 流れるように事態を流していく。

 この夫婦侮りがたし。


 「いえ、そこまでしてもらうのは…」

 「大丈夫ですよ。遠慮はいりませんから」

 「そうですよ。それにもう暗くなっているので他に泊まることもできないですし、ね」

 マザーがこちらに向けて片目を閉じてみせた。

 流石出来る女。

 ナイスアシストである!


 「それじゃ一緒に寝よう? おねーさん何かお話聞かせて!」

 その好機を掴んでみせよう!

 「えっ?」

 「魔法とかーエルフのお話とかー色々聞きたい!」

 「クラウス。わがままは…」

 しかしダディが止めに入ってくる。

 チィィィー。ダディはマザーといちゃいちゃしてろよ!


 「あら。いいじゃない。魔法の才能を見てもらうんだし。より分かり合うためには親密になることが近道だと思うわよ?」

 マザーよ。貴方が女神か?


 「そう…ですね。故郷を離れて小さい子と触れ合うことも無かったですし」

 おぉ? まさかのお許しが出た!?

 しかも本人から!


 「じゃあ一緒に寝ようか?」




 その時の彼女の笑顔は眩いものであった。

同衾ですよ! 同衾!

羨ましいですねぇ。

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