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妄想力を全開に。

 昨日は水の上の葉っぱは動かなかったな…。

 焦っていたかもしれない。

 お願いというより。

 動け! 動け! と命令していたと思う。反省。


 一応この練習方法で合っているのかとマザーやダディに聞いてみたら。自分達の教わった方法とは違うと言われた。

 自分達は火の灯った枝とかを使って、『火よ、燃えろ』と念じて練習していたのだとか。成功すると勢いよく燃え上がるらしいが…思うに子供に火の灯った枝など持たせたら危ないんじゃないだろうか?

 聞けば集中しすぎて火傷した子もいたとかなんとか。

 人族は存外馬鹿なのかもしれない。

 人族とドワーフの違いだろうか?

 或いは環境の違いか?


 そして習得期間も1ヶ月と長きに渡るらしい。

 魔法の発動方法の違いか?

 お願いする方が発動しやすく。

 命令する方は発動しにくいとか?


 この辺の疑問は今は後回しだな。

 なんにしても魔力で干渉する兆しも見えないのでは話にならない。

 葉っぱが動かなければ次のステップにも移れない。


 葉っぱがうらめしい。

 股間に付けて遊んでやろうか?

 創世記ごっこと洒落こもう。

 お相手はもちろんエルフで!

 僕が最初の人間で君が最初のエルフだよ! と裸で語らうと。

 …二人きりなら別に構わないが、他人に見られるのは駄目だな…。



 いかん、遺憾。邪念が入り込んでしまった。

 今は魔法を優先しよう。



 「よし部屋も手に入れたし集中して練習できるな。練習開始!」

 水よ浮かべた物を動かして下さい…。




 「……ふう。動かないな」

 5分ほどにらめっこしてたけど動きもしない

 水に触れながらやるか?


 「ふむ。水の中に手を入れてやってみるか」

 うむ。

 ちめたい。

 水だな。

 この状態で試してみるか。

 水よ浮かべた物を動かして下さい…。





 「手がふやけただけで終わった…」

 てか、手入れてたら手で動いたのか水が動いたのか分かんねーじゃねーか!

 誰だ! こんな馬鹿のこと始めたやつは! …俺か。



 俺は手を拭いながら冷静に考えてみた。

 もしかすると具体的に、お願いしないと駄目か?

 例えば、水の上に浮かんだ葉っぱを右に動かして下さいとか。

 葉っぱを回して下さいとか。


 それと重要なことを忘れていた。

 魔眼使ってないや。

 失敗、失敗、てへぺろ!

 可愛くもなんともないウザイだけだった…。



 「気を取り直して、魔眼も発動してやってみるか」

 さあ、水よ我が魔眼の前に理をさらけ出せ!

 ふははははっ。

 …偉そうだが思うことはお願いだ。

 水よ浮かべた葉っぱを右に動かして下さい。

 ついでに水色も思い浮かべよう。



 「…おっ? 薄い水色の魔力が…」

 出たけど手から桶に向かわず散っているな。

 物を認識して指向性を持たせてみるか。


 桶…葉っぱ…水…動く…。


 イメージだ…。


 頭の中に思い描け!

 出来る!

 あの二十年に及ぶ成果を…。

 今こそ見せる時だ!!

 ファンタジーよ!

 日本人の妄想力を舐めるなよ!!!

 空想など凌駕する妄想力を!

 今こそ解き放つ時だ!

 水よ動いてくれ!!



 「はあぁあああっ!!!」

 おぉぉおおっ!?

 動いた! 動いたよ!


 よしよし。次だ!

 上、下、左、右、左、右、くるっと回って次は立ってみよう!



 「立った! 葉っぱが立ってる!」

 やったぁああ!!

 マスターしたぞぉおおおぉおおおお!?



 どうやら俺はいきなり力が抜けていく感覚に抗えずに、ひっくり返って倒れてしまった。

 調子に乗って魔力を使い過ぎてしまったようだ。

 危なかった。

 もしマザーに見られていたら卒倒していたかもしれん。


 ふっふっふっ…。

 やったよ? 遂に出来たぜ!


 「しかし本当に人族は魔力量が少ないんだな」

 空気中に散ってるし。

 そりゃ余計に少なくもなるか。

 漏れ出てる魔力を戻せないかねぇ?


 空に帰りし魔力よ戻っておいで~。

 ハウス! 魔力戻れ! ハウス!


 「なーんて戻るわけ…ない…か、あれ?」

 軽い気持ちでやってみたけど。

 今まで散っているだけだった魔力がその場に停滞しだした。

 なんで今になって思うように動くんだ?


 もしかして葉っぱを動かせたからか?

 水に干渉して葉っぱを自在に動かせる感覚を掴んだからか?



 「んー…新展開?」

 等と阿呆な事が口から出たが驚いているんですよ。

 昨日の黒歴史はなんだったのか…。


 この日から数日、俺は歴史の闇を振り払うがごとく。

 魔力の操作に没頭していった。

 朝起きた時も、昼飯を食う時も、夜寝る前にもだ。

 留めてみたり、膨らませてみたり、形は…まだ変えられない。

 そして五日後の魔法教室では、早速成果を見せられた。




 「三人とも今日まで葉っぱは動かせたか!」

 「「「はい!」」」

 「そうか三人とも動かせたか。上出来だ!」

 教えた通りに出来た事に、ドッドは満足気だ。

 カレンはどこか誇らしげに。

 アンネは頬を染めて喜んでいた。


 「それでは次の練習に入る! 次は桶の中の水で渦を作るんだ」

 「「うず?」」

 どうやら双子は分からないみたいだ。


 「こうやるんだ。よく見ているんだぞ?」

 「「「はい!」」」

 手を桶に向けてドッドが構えた。


 「水よ、桶の中で回って下さい。と念じるんだ」

 そう言いながら腕を振った時、水は勢いよく回りだした。


 「すごーい! 水が動いてるよ?」

 「…うん。動いてる。…これがうず。」

 双子の反応はそれぞれだ。


 「次は渦か…」

 俺が呟いた時、ドッドはにやりと笑った。


 「クラウス。あまり驚いてないみたいだが自信があるのか?」

 どこか、からかっているのか試しているのか分からない顔で聞いてきた。


 「自信はないけどやる気はあるよ!」

 俺も笑顔で返してやった。


 「それじゃ三人ともやってもらおうか!」

 「「「はい!」」」

 そして双子は桶に向かって手をかざしたり動かしたり。

 色々試していたが小さな波が出るだけだった。

 まだまだ精進が足らんぞ!


 「クラウスもやってみろ」

 「うん!」

 見せてやろう! 水の力を!

 そして俺は水色を思い浮かべ桶の中に渦を描いた。


 「おぉお? クラウス出来てるじゃないかっ!!」

 「ほんとにー?」

 「…うず出来てる」

 三人とも驚いているみたいだ。

 双子なんて鳩が豆鉄砲くらったような顔をしてる。


 「クラウスは水に適正があるのか? なんにしても始めたばかりでここまで出来るんなら末は魔法士にでもなれるか?」

 そう言ったあと豪快に笑い声を響かせていた。

 ドッド笑いすぎ。


 「よし! カレンとアンネは引き続き今の練習をすること」

 「「はい!」」

 双子よ頑張れ。


 「クラウスも魔力切れを起こさない程度にやってよし!」

 「はい!」

 子供だから魔力量が多くないしそうなるよな。

 だが俺は俺で魔眼を持っているから色々創意工夫して魔力量を増やさせてもらうぜ!

 倒れない程度にな!



 もしこのまま魔力が増えれば…。

 ふっふっふっ…絶大な魔力を手に入れればエルフも『キャー抱いてっ!』となるかもしれない。

 ああ妄想は尽きぬ! 何度でも蘇るさ! それこそが人類に許された力だからだ!




 そして俺は悦に浸ってゆくのであった。

妄想の中では既に凄い話は進んでるんです!

でも現実にはこの程度なんです…。


明日も17時にお会いしましょう。

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