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アマガタリ  作者: ひよりの
第二章
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イザナ



 みなみ狗奴国くなこく――


 かつては由緒ゆいしょある王家おうけのもと、おおくの部族ぶぞくたばねる強国きょうこくであった。


 しかし先王せんおうさかい王家おうけ断絶だんぜつし、玉座ぎょくざめぐあらそいはまたた各地かくちひろがった。


 有力部族ゆうりょくぶぞくたがいにへいげ、くにながきにわたる内乱ないらんへとおちいった。



 かれる集落しゅうらく


 うばわれるみのり。


 昨日きのうまでおなくにきたものたちが、今日きょうにはてきとしてやいばまじえる。


 秩序ちつじょうしなわれ、人々(ひとびと)明日あすをもれぬ日々(ひび)おくっていた。



 その混乱こんらんなか一人ひとりおとこ頭角とうかくあらわす。


 山地さんち一部族いちぶぞくひきいる首長しゅちょう――カダン。


 いくつもの部族ぶぞく武力ぶりょくでねじせ、ときに懐柔かいじゅうし、ときに裏切うらぎりを利用りようして勢力せいりょくひろげていった。


 そしてついに――かわききらぬにおいがのこ玉座ぎょくざへとこしろし、みずか狗奴国くなこく新王しんおう名乗なのる。


 だが、その玉座ぎょくざ正統せいとう継承けいしょうによるものではない。


 武力ぶりょくによる簒奪さんだつであったがゆえに、各地かくちにはなお、反乱はんらん火種ひだねえることがなかった。



 新王しんおうカダンは恐怖きょうふちからくにさえつけたが、その支配しはい薄氷はくひょううえきずかれたものにぎない。


 狗奴国くなこくはひとつのくにでありながら、いまだえぬ内乱ないらんきずかかつづけていた。  




 ◇



 そんなあるのことだった。


 王宮おうきゅう奥深おくぶかく、誰人だれびと容易よういにはちかづくことをゆるされぬ祭殿さいでんから、一人ひとりおとこ狂乱きょうらんさけびをげた。


 カダンにつかえる呪禁師じゅごんしである。


 かみみだし、みずからののどきむしりながら、なにもないやみかっておびえ、絶叫ぜっきょうつづけた。


 やがて呪禁師じゅごんしくちからくろずんだき、全身ぜんしん痙攣けいれんさせると、そのままつめたい石床いしどこくずちる。


 二度にどがることはなかった。



 カダンの部族ぶぞくふるくからつたわる禁呪きんじゅ――その秘術ひじゅつをもって、とお投馬国とうまこくおうミナギをのろころそうとしたのだ。


 失敗しっぱいしたのか。


 それとも、のろいそのものがやぶられ、術者じゅつしゃへとかえったのか。


 こたえをかたものは、もはやだれもいなかった。



 そして、カダン自身じしんもまた。


 それ以来いらいわってしまった。


 よるになると寝所しんじょすみにうずくまり、だれもいないやみつめる。


 かつておおくのへいしたがえ、王座ぎょくざうばったおとこ姿すがたは、そこにはなかった。



る……る……」



 なにかにおびえるように、ただそれだけをかえす。



 だれもがくちざした。


 もう呪術じゅじゅつにはれるべきではないと。




 だが――そのなかでただ一人ひとりだけ、しずかにカダンをつめる青年せいねんがいた。


 カダンの第五王子だいごおうじ、イザナだった。



 かれふるえるちちまえにしゃがみむと、おびえきったひとみのぞみ、口元くちもとうすみをかべる。


興味深きょうみぶかいな」


 おだやかなこえだった。


本当ほんとうに、こんなことがこるのか」


 呪禁師じゅごんし亡骸なきがら


 正気しょうきうしなったちち


 そして、そののろいをやぶった――


 投馬国王とうまこくおう、ミナギ。


 歓喜かんきにもひかりが、そのひとみ宿やどっていた。


父上ちちうえ


 ふるえるちちばし、その指先ゆびさきったほおれる。


「あなたはいまなにえているんです?」


 返事へんじはない。


 ただ、カダンはえないなにかからのがれるようにふるつづける。


 イザナはその様子ようすをじっと観察かんさつし、まるでめずらしいものでもるかのように微笑ほほえんだ。


「やはり呪術じゅじゅつ面白おもしろい」


 そのこえは、しずかなやみけていった。




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