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仲裁
怒声が飛び交う。
水場の取り分を巡って、男たちが胸ぐらを掴み合っていた。
女たちは遠巻きに見守るばかりで、誰も割って入れない。
――一触即発。
次に動いた者が、殴る。
その瞬間――
「そこまでにしろ」
低い声が落ちた。
振り向いた男たちの間に、いつの間にか、ミナギが立っている。
近づく足音すら、誰も聞いていない。
だが――それだけで、動きが止まった。
掴んでいた手が、ほどける。
視線が逸れる。
誰も、命じられてはいない。
だが、誰もが従った。
ミナギは、争いの理由を聞くでもなく、淡々と分配を決める。
誰も異を唱えない。
いや――唱えられない。
(…この人は)
従う者ではない。
従わせる者だ。




