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アマガタリ  作者: ひよりの
第一章
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やわらかな壁


 は、ひくたもたれていた。


 まきはほとんどぜることもなく、ただあかく、しずかにつづけている。


 よる気配けはいい。


 だが、その内側うちがわだけが、わずかにられたようにあたたかい。


 かいにすわるミナギの横顔よこがおは、そのかりに半分はんぶんだけらされていた。


 ほお輪郭りんかく


 まつかげ


 らぎにわせてかすかにれるひかり


 それらはしずかで。


 ととのっていて。


 見慣みなれたはずの「行商人ぎょうしょうにん」というぞうに、どこかおさまりきらない気配けはいぜている。


 たたずまい。


 かた


 そして、他者たしゃける視線しせんらぎのなさ。


 それらが、ひとつの「かく」をかたちづくっているように、アサにはおもえた。


 ミナギはふと、まき一本いっぽんくべる。


 すこしだけたかくなり、ふたりのあいだれるかげびた。


「どうかしたか」


 いつもどおりのこえ


 そこに問いといつめる意図いとはない。


 ただ、気配けはい変化へんかひろっただけのようなしずけさだった。



 アサはしばらくだまっていた。


 が、ぱちり、とる。


 そのおといたあと、ようやくくちひらく。


「……ミナギって――」


 一度いちど、そこで言葉ことば途切とぎれた。


 いのかたちさがすように、視線しせんちゅうをさまよう。


本当ほんとうは、えらいひと?」


 が、れた。


 まき先端せんたんくずれ、あかつぶちる。


 ミナギは、わずかにほそめた。


「どうしてそうおもう」


 おだやかなこえ


 アサは視線しせんとした。


 あからぎのなかに、自分じぶんかげゆがんでうつる。


「……なんとなく」


 それ以上いじょうわない。


 えなかった。


 言葉ことばにしてしまえば、いままでかさなってきた違和感いわかんが、はっきりとしたかたちってしまうがした。


 すこしのあいだ沈黙ちんもくちる。


 まきくずれるおとと、よるむしこえだけが、そのあいだめていく。


 やがて――


「ただの行商ぎょうしょうだよ」


 ミナギは、そうってわらった。


 かる調子ちょうしだった。


 いつもとわらない、なにっかけない声音こわね


 そのみは、ひかりけるようにやわらかい。


(……ずるい)


 アサは、わずかにくちむすぶ。


 そこには、ませないためのかべがある。


 だが、それはかた拒絶きょぜつではなく、れればそのまますべちてしまうようなやわらかなへだたりだった。


 わらずえている。


 ただ――


 そのこうにいるミナギの表情ひょうじょうだけが、どうしても輪郭りんかくむすばなかった。


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