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古傷
水を汲む折、袖がわずかに滑り落ちた。
ほんの一瞬。
だが見えた。
腕の内側――古い傷が、幾筋も走っている。
浅いものではない。
刃が入った軌跡。
躱しきれなかった証。
(…戦った人の、傷だ)
農の手ではない。
木を切る者のものでもない。
獣にやられた痕とも違う。
あれは――人と刃を交えた者の、傷。
ミナギは気づいているはずなのに、何事もなかったように袖を戻した。
隠すでもなく、誇るでもなく。
ただ、そこにあるものとして扱っている。
アサの背筋に、わずかな冷えが走る。
ミナギは一体――どこで、何をしてきたのだろう。




