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アマガタリ  作者: ひよりの
第二章
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61/108

騒ぐもの



 人払ひとばらいのんだ一角いっかく


 あかりはひとつだけ。


 タヅマはしにおうじ、しずかにひかえていた。


「……おそくにすまんな」


 ミナギはそうって、かいにこしろす。


「いえ」


 みじか返事へんじ


 タヅマは、あるじくちひらくのをった。



 しばらく沈黙ちんもくつづく。


 やがて――


「タヅマ」


「は」


婚姻こんいんとは、なにめるものだ」


 唐突とうとついだった。


 だが、タヅマはまゆひとつうごかさない。


くにとしてのにございます」


 まよいのないこたえだった。


国益こくえきかない、禍根かこんのこさぬ。それこそがあるべき婚姻こんいんかと」


 ミナギはわずかにせる。


「……そうだな」


 かりきっているこたえだった。


 たしかめる必要ひつようもない。 


 それでも、言葉ことばつづく。


「では――それ以外いがいを、理由りゆうえらぶことは」


 そこまでって、言葉ことばまる。


 タヅマはしずかにかおげた。


おうとしては、不要ふようにございます」


 やはりまよいのないこえだった。


 きっぱりとる。


 ミナギはちいさくいきく。


不要ふよう、か」


 その言葉ことばくちなかころがすようにかえした。


「ならば――」


 ふと視線しせんげる。


不要ふようなものが、判断はんだん場合ばあいはどうする」


 そのいだけ、すこひくかった。


 タヅマはわずかにく。


はいすべきかと」


 簡潔かんけつ返答へんとう


 だが今度こんどは、すぐにはこたえなかった。


 ミナギはちいさくわらう。


 かわいた、自嘲じちょうにもわらいだった。


「――出来できれば、苦労くろうはせん」 


 ぽつりとこぼす。



 その一言ひとこと十分じゅうぶんだった。


 タヅマはなにわない。


 だが理解りかいした。


 だれのことなのか。


 なにまよっているのか。


 すべて。



「――おそれながら」


 しずかに言葉ことばえらぶ。


殿とのが、()()だんじたものに、これほどこころかれるのは――」


 一度いちど言葉ことばる。


「それ自体じたいが、もはやかるてよいものではないからにございましょう」


 ミナギのするどくなる。


「……理屈りくつだな」


 ほとんどかぶせるようにかえした。


 てるにちか声音こわねだった。


「はい」


 タヅマはわらず淡々《たんたん》としている。


はかれるなら、最初さいしょからまよわん」


 ミナギはわずかに奥歯おくばんだ。



 沈黙ちんもく


 が、ぱちりとはじける。


 そのおとしずけさにけた。


 タヅマはそこで、ほんのすこしだけこえやわらげた。


「――無理むりそうとすると、余計よけいさわぎますゆえ」


 ミナギのまゆがぴくりとうごく。


 一瞬いっしゅんだけ。


なんはなしだ」


 タヅマはこたえない。


 わりに、わずかに口元くちもとゆるめる。


 そして。


 すこいてからった。


「……以前いぜん、ある御方おかたにもおなじことをもうげたことがございます」


 ミナギの指先ゆびさきまる。


 ほんの一瞬いっしゅん


 呼吸こきゅうあさ途切とぎれた。


 だがすぐに、何事なにごともなかったように視線しせんらす。


 ふたた沈黙ちんもくちる。


 やがて。


 ミナギはちいさくいきく。


「……だが」


 ぽつりとくちひらく。 


さわぐものを、どうあつかうかは――おれめる」


 それは否定ひていではなかった。


 みとめたうえで、自分じぶんなかおさめようとするかただった。


 タヅマはそれをき――しずかにせる。


御意ぎょい


 かえしたのは、その一言ひとことだけだった。



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