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アマガタリ  作者: ひよりの
第一章
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ミナギ


 ミナギがむらて、三月みつきぎた。


 最初さいしょは、よそものとしてすこ距離きょりかれていたかれも、いまではすっかりむら馴染なじんでいた。


 村人むらびとたちにとってのミナギは、行商人ぎょうしょうにんであり、まじなであり、すこわったおとこというくらいだった。


 けれど、アサにとってはちがった。



 あにのようで。


 友達ともだちのようで。


 そして――のようなひとだった。



 ミナギは、何気なにげない毎日まいにちなかで、そと世界せかいはなしをしてくれた。



 ――とおうみはなし


 水平線すいへいせんこうで太陽たいようしずときうみえるようなあかまるのだという。


 そのひかりを、船乗ふなのりたちは「かみみち」とぶらしい。


 アサはまるくした。


 まだたこともない景色けしきが、あたまなかひろがっていく。


 むねおくが、すこしだけかなくなった。



 ――ふねはなし


 でできたふねが、かぜけながらなみうえすすんでいく。


 ふねさきものは、海風うみかぜみ、なみうごきをかんじるのだと、ミナギはった。


 アサはおもわずにぎる。


 まるで自分じぶんも、そのふねうえっているようながした。


 むねが、すこ高鳴たかなる。



 ――たこともないものはなし


 虹色にじいろひかさかな


 あまかおりのする果物くだもの


 くちれると、あわみたいにえてしまう不思議ふしぎ団子だんご


 ミナギは、においやあじまでえてくるようにはなしてくれる。


 アサはおもわずつばんだ。


 いつかべてみたい。


 そんなちいさなねがいが、むねまれていた。



 ――ひとらしのはなし


 かこみ、うたっておどひとたち。


 言葉ことばからなくても、わらったりいたりする気持きもちはつたわるのだと、ミナギははなした。


 アサは想像そうぞうする。


 らない土地とちち、見知みしらぬひとたちのに、自分じぶんざっている姿すがたを。


 はなしくたびに、アサのこころすこしずつそとひろがっていった。 



 世界せかいひろい。


 自分じぶんているものは、そのほんの一部いちぶなのだ。


 それをるたび、むねおくちいさなともる。 



 りたい。


 てみたい。


 そんなしずかなねつだった。



 ときには、ふたりで勝負しょうぶをすることもあった。


 ただいしげるだけではない。


 ミナギがかんがえた、ちいさなまりがある。


 もり地面じめんに、えだ十字じゅうじしるしえがく。


 順番じゅんばんいしころがし、できるだけなかちかづける。


 それだけのあそびだった。


 けれど、アサは真剣しんけんだった。 


 いしにぎり、ちからかたきを何度なんどかんがえる。


 まゆせながらげては、いしねてつちちるおとみみませた。



 いしおもさ。


 げるき。


 地面じめんのわずかなかたむき。


 ひとつひとつたしかめるたび、づかないうちにアサの感覚かんかくするどくなっていった。


 二人ふたりいし交互こうごならぶたび、もりにはちいさな緊張きんちょうながれる。


 れるおと


 つちれるいしおと


 かぜにおい。


 その全部ぜんぶが、あそびのなかんでいた。



 最後さいごに、いちばんなかちかいしいたほうが、ちいさくわらう。


 二人ふたりかお見合みあわせ、同時どうじわらごえをあげた。


 そのこえあいだけ、かぜけていく。


 そのときだけの、ちい世界せかいがそこにあった。



 よるになると、まえすわり、いしほねならべる練習れんしゅうをした。


 ミナギはさない。


 ただ、しずかに見守みまもっているだけだった。


 けれど、そのおくにはたしかな期待きたいがあった。


 しんじているひかりがあった。


 アサはそれを感じるたび、むねおくちいさくあつくなるのをった。


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