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アマガタリ  作者: ひよりの
第二章
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52/108

ざわつき



 一方いっぽう宮中きゅうちゅう賓客ひんきゃくむかえる準備じゅんびわれ、いそがしさのきわみにあった。


 堂々(どうどう)とした木組きぐみのはりたかくそびえる高殿たかどの広間ひろまには、そとひかり隙間すきまからやわらかくんでいた。


 ゆかには丹念たんねん仕上しあげた鹿しか毛皮けがわめられ、はしらあいだには燭台しょくだい整然せいぜんれつをなす。


 侍女じじょたちはひざをつきながら、座台ざだい等間隔とうかんかくならべ、慎重しんちょう位置いちととのえる。アサも祝宴しゅくえん手伝てつだいにわれ、台所だいどころから高殿たかどのまで何度なんど往復おうふくし、いそがしくうごまわっていた。



 ようやく仕事しごと一段落いちだんらくし、侍女じじょたちは台所だいどころそと石組いしぐみの井戸いどわきあつまり、休息きゅうそくっていた。


 ひざうえには土物つちもの小皿こざら木製もくせいわんき、台所だいどころけてもらったあたたかいかゆや、くちはこびながら談笑だんしょうする。


 もっぱら話題わだいは、伊都国いとこくからうつくしい姫君ひめぎみのことだ。


「――あの桃色ももいろころも、なんて繊細せんさい刺繍ししゅうかしら」


「さすがはからころもねえ。布目ぬのめこまかさがちがうわぁ…」


宇良うらさまころもともすこおもむきちがうわよね」


わたしたちでは一生いっしょうかかっても、ることなどできやしないでしょうよ」


「それにお顔立かおだちもうるわしいこと」


伊都国いとこくいち美貌びぼうだってうわさよ」


 その侍女じじょたちは、伊都国いとこくがいかに大国たいこくか。


 そしてそのくに味方みかたにできる利点りてん投馬国とうまこくにとって、どれほどおおきいかを、熱心ねっしんかたっていた。


 アサはり、くちはこびながら会話かいわっていた。


 しかし――


「ミナギさまならべば、美男美女びなんびじょでさぞお似合にあいでしょうねえ」


「これはもう、きさき志摩しまさま決定けっていね」


 はその瞬間しゅんかんのどまった。


 アサはおもわずむせてき込み、っていたわん中身なかみをばらいてしまう。


「ちょっとアサ!大丈夫だいじょうぶ?」


 となりすわっていたミツが心配しんぱいそうに、むアサのたたく。


意地いじってぎるから――」


 べつ侍女じじょ半分はんぶんあきれたようにいながら、みずはいったわんをアサに手渡てわたした。


 アサはいきととのえ、みずしてふぅといきをつく。


 心臓しんぞうみょうはやっているのにづき、手元てもとかない。


 そのさわぎをきつけた侍女頭じじょがしらがやってて、きびしいこえひびく。


休憩時間きゅうけいじかんはとっくにわってますよ!仕事しごともどりなさい!」


 アサはあわててらばったひろげながら、ふたた台所だいどころ仕事しごとへともどる。


 しかし手元てもとうわつき、こころ先程さきほど言葉ことばと、志摩しまうるわしい姿すがた支配しはいされていた。


 侍女頭じじょがしらから何度なんど叱責しっせきけるが、むねおくいたみのせいで、仕事しごと集中しゅうちゅうすることは容易よういではなかった。



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