午後からは糸紡ぎと機織りの手伝いだった。
作業場には、穏やかな光が茅葺の屋根から差し込み、機織りの木材が軋む音で満ちていた。
アサの指は、糸を紡ぐために紡錘を回していた。
まだ見習いの身なので、経糸を張った機の前には立たない。
紡錘が手のひらの上で静かに回転し、麻の繊維が少しずつ糸となって軸に巻き取られていく感触は、指先に微かな振動となって伝わる。
糸の細さや均一さを確かめるため、時折指でつまみ、ねじれ具合を調整する。
隣で先輩侍女たちが杼を滑らせて経糸を打ち込む音を聞きながら、アサは手元の糸に集中する。
織り上がっていく布の縦横の交差は、麻の淡い生成り色に、時折染めた糸の赤や藍が差し込まれ、規則的な美しさを持っている。
織り進むたびに木の杼が木枠に擦れる音、糸の摩擦音が耳に重なる。
自分の手から生まれる糸と、まだ見ぬ布へと繋がる作業の流れを思うと、胸に小さな誇らしさが広がる。
傍らでは、染料の準備も進む。
赤い丹の粉を土の碗に取り、水を少しずつ注ぐと、土と鉄の匂いが立ち昇る。
丹の粉は、火にかけて煮るとさらに濃密な匂いを放ち、熱せられた甕の表面からも、鉄分を帯びた赤い香気が立ち上る。
植物性の染料もまた、生き生きとした匂いを運ぶ。
楮の皮や蓼の根を砕き、水に浸すと、土に混ざる淡い青や黄色の香りが立ち、宮の空気はひそやかに彩られる。
葉や根の香りは湿った木の香と混じり合い、低い茅葺屋根の屋根裏にまで届くようだ。
手仕事がもたらす充実感は、アサにとって、宮仕えの合間に訪れるささやかな幸福となっていた。