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アマガタリ  作者: ひよりの
第一章
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休息



 ミナギがおうとなってからというもの、わか侍女じじょたちのあいだで、「だれ側仕そばづかえになるか」をめぐり、おおいにめた。


 みなこえげ、われこそがと名乗なのる。


 あまりにめるので、結局けっきょく侍女頭じじょがしら裁定さいていによって、ミナギの側仕そばづかえは彼女かのじょ管理下かんりかかれることになった。


 ――というはなしを、アサは同僚どうりょうわかくおしゃべりな侍女じじょ、ミツからかされていた。



 午前ごぜん雑務ざつむわり、ようやくおとずれたひる休息時間きゅうそくじかん


 アサたちした侍女じじょは、台所だいどころそとにある井戸端いどばた簡単かんたん食事しょくじりながら、雑談ざつだんはなかせていた。


 井戸端いどばたならべられたのは、簡素かんそながらもととのえられた食膳しょくぜんだった。


 のこもの煮豆にまめ野菜やさい煮物にものてにちか雑穀飯ざっこくめし少量しょうりょういたさかなはし――などがいくつかの土皿つちざらけられてかれている。


 アサとミツは、それらを頬張ほおばりながらはなしつづけた。


隼比古様はやひこさまのときは、またちが意味いみめたのよ。ひどい言葉ことばげかけられたり、身体からださわられたり、あげくされそうになったりで、わかたちはみんないやがっちゃってさぁ……」



 隼比古はやひこ――


 ミナギのあにで、ハヤトの父親ちちおや


 さきいくさいのちとしたことだけは、アサもっている。


 宮仕みやづかえのものたいする態度たいど横柄おうへい乱暴らんぼうで、評判ひょうばんけっしてかんばしくなかったらしい。


 ミナギのくちからそのいたことは一度いちどもなく、アサはふと、あんまり仲良なかよくなかったのかな、とかんがえる。


 けれど、ちちあにつづけにくしたミナギのことをおもうと、むねおくしずかないたみがひろがる。


 うしなった家族かぞくおもいを背負せおいながら、なおもおうとしてみや仕切しきかれつよさと、その背後はいごひそさびしさが、こころせまった。


「――それにくらべて、ミナギさまってば、下々(しもじも)ものにも格別かくべつにおやさしいし、いは凛々(りり)しく、とくにあの目元めもとときたら……」


 ミツのこえは、おさえきれぬ興奮こうふんはずんでいた。


 そのあとまらず、ミナギのするどんだ眼差まなざし、すずやかでまれそうなひとみうつくしさ、浅黒あさぐろたくましいはだ色艶いろつや肩幅かたはば手足てあしながさまでふくめた均整きんせいれた体格たいかく――


 まるで宝物たからもの自慢じまんするように、隅々(すみずみ)までかたくそうとしていた。



 ミツの無邪気むじゃき興奮こうふんとは裏腹うらはらに、アサのむねにはかすかな動揺どうよう複雑ふくざつ感情かんじょう交錯こうさくする。


 ミナギが人目ひとめおとこだということは、薄々(うすうす)わかっていた。


 むらにいたころも、わかおんなたちに意味いみありげな視線しせんけられていたのをおもす。


 当時とうじ自分じぶんはまだおさなく、その意味いみふかくは理解りかいしていなかった。


 だが、ここまでとは――


 のいい兄貴分あにきぶんとしかてこなかった自分じぶんおさなさと世間知せけんしらずが、いまさらりになる。


 溜息ためいきとともに、煮豆にまめのどんだ。



 そんなおりみやおくからひくく、重々(おもおも)しいかねおとひびいた。


 そのおと屋根やねつたい、井戸端いどばたすわ侍女じじょたちのみみまでとどく。


 ひる休息きゅうそくわりであることをげるかねだった。


 言葉ことばはなくとも、宮仕みやづかえたちの身体からだ自然しぜん反応はんのうする。


 アサたちも、まだうつわのこった雑穀飯ざっこくめしいそいでくちはこび、れたをさっとぬぐった。


 ひるみじか休息きゅうそくでわずかにゆるんだものの、アサはいきととのがり、ふたた午後ごごからのつとめにかうのだった。


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