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アマガタリ  作者: ひよりの
第一章
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労働――早朝



 やがて早朝そうちょう――


 みやねむりはゆっくりとかれ、薄暗うすぐら空間くうかんあさ気配けはいむ。


 はまだあかのこり、青白あおじろけむりがゆらりとのぼり、はしら土壁つちかべにかすかなかげとす。


 台所だいどころゆかかためたつちわらがまばらにかれ、あしくたびにかすかにしずむ。


 井戸いどちかくでは、侍女じじょたちが土器どきわんおけならべ、みずおとしずかにひびく。


 はこばれたみずおおきなかめそそがれ、朝餉あさげ準備じゅんびへと、次々(つぎつぎ)まわされていく。



 アサは手早てばやく、わらいただいこめひろげ、指先ゆびさき異物いぶつたしかめながらける。


 おけへとうつされたこめは、つめたいみずしずみ、しろにごったみずがゆっくりとながていく。


 みず何度なんどえながら、こめきよめる。


 やがてちいさな土器どきなべうつし、にかける。


 湯気ゆげちのぼり、あさ空気くうきあたためた。



 となりでは、きざまれた山菜さんさいいたうえならべられ、しおひしお手早てばやえられていく。


 かわいたさかなのそばでかるあぶられ、あぶらちるたび、かすかなけむりこうばしさをのぼらせた。


 そのかおりは土間どま空気くうきけ、あさつめたさをゆっくりとほどいていく。


 木製もくせいさじたけはしられ、土器どきわんしるこめをすくうおとが、小気味こきみよくかさなる。



 アサは手元てもとぬのととのえ、きよめるようにみずひたしてよごれをとす。


 あらいは単純たんじゅん作業さぎょうだ。


 だが、みずつめたさとあさのひんやりした空気くうきは、まだ眠気ねむけのこからだにこたえる。


 みしめるたび、わらゆか足音あしおとかろ反響はんきょうする。


 こすれるぬのおと


 こめおと


 あつかおと


 それらがかさなりって、みや静寂せいじゃくをやさしくやぶっていく。



 アサはまだぎこちないうごきのまま、手順てじゅんをひとつひとつたしかめるようにして、今日きょう最初さいしょつとめを淡々(たんたん)すすめる。


 やがて安定あんていし、土器どきなかかゆがふくらみはじめるころ――


 みや全体ぜんたいが、本格的ほんかくてきあさへとわっていく。


 まだ完全かんぜんには目覚めざめきらぬ建物たてものなかで。


 みずおとにおいだけが、だれよりもさきうごす。


 そうしてしずかに、人々(ひとびと)一日いちにちしていた。



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