表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/12

予兆

 

 ──やはり。

 ミナギの胸の奥で、静かに何かが定まった。

 最初にアサを見たときから、どこか引っかかっていた。

 ただ幼いだけの娘ではない。

 言葉にできぬまま、ただ引き留められるような感覚だった。

 視線が、脳裏に蘇る。

 強い――と思った。

 鋭いわけではない。

 刃のように他を切り裂く類のものではない。

 だが、あの目は――

 幼さに似つかわしくないほど、深く、底に火を宿している。

 そして――

 紋様の話をした瞬間、空気がわずかに変わった。

 誰も気づかぬほどの、微細な変化。

 だがミナギの感覚は、それを逃さなかった。

「見えたか」と問えば、迷いなく頷いた。

 彼女は、まだ何も持たぬに等しい。

 しかし。

 持たぬままに、通じている。

 濁りのない水が、わずかな波紋さえ映し取るように。

 胸の奥に、静かな確信が灯る。

 この娘の内には、何かが通る余地がある。

 それは才と呼ぶべきか。

 あるいは、もっと原初の――

 『器』と呼ぶべきものか。

 ミナギは、わずかに目を細めた。

 胸の奥で、警戒と期待が静かに絡み合う。

 それは希望にも似ていたが、同時に、極めて危うい()()でもあった。

 突然、火が大きく爆ぜた。

 その音に、アサはわずかに肩を震わせた。

 探るのではい。

 試すのでもない。

 ただ、見届けたいと思った。

 その内にあるものが、どこまで澄み、どこまで届くのかを。

 ミナギは静かに言った。

()()は、お前のものだよ」

 何が、とは言わなかった。

 夜は深く、森は動かなかった。

 だがその時、見えぬところで、何かの流れがすでに変わりはじめていた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ