表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
アマガタリ  作者: ひよりの
第一章
PR
27/46

戦いの終わり



 狗奴国くなこくへいたちは、一瞬いっしゅんささえをうしなった。


 久志奈くしな命令めいれい喪失そうしつであると同時どうじに、戦場せんじょうそのものの重心じゅうしんくず出来事できごとだった。


 まえしていたあつ途切とぎれると、その空白くうはく混乱こんらんながむ。


 隊列たいれつかたちたもてないまま、たがいに視線しせんさぐり、だれつぎ判断はんだんくだすのかからないままあしめた。


 怒号どごうがるが、統一とういつされない。


 槍先やりさきちゅう彷徨さまよい、たてまもるべき方向ほうこう見失みうしなう。


 もりなかひびいていたいくさねつは、急速きゅうそくはじめていた。



 ミナギは視線しせんはしらせる。


 くずれた戦列せんれつ隙間すきま。  


 まだ抵抗ていこうつづける一部いちぶうごき。  


 みちさが後方こうほうれ。


 すべてがひとつのながれとしてつながっていく。


無理むり追撃ついげきするな。後方こうほう負傷者ふしょうしゃ確保かくほせよ。戦意せんいえたてきにこちらからてるな」


 こえするどくも、ねつふくまない。


 戦場せんじょう余韻よいんまれることなく、せんくように命令めいれいちる。


 そのこえしたがい、へいたちはうごきをえる。



 狗奴国くなこくへいは、もはや「たたか集団しゅうだん」ではなかった。


 あるじうしなったことで、ただの散発的さんぱつてき集合しゅうごうへとわっていく。


 だれかが退しりぞき、だれかが武器ぶきろす。


 どろおとだけがまばらにのこり、やがてそれすらもうすれていく。



 もりのざわめきがもどる。


 それは自然しぜんしずけさではなく、いくさ終息しゅうそくがもたらす不自然ふしぜん静寂せいじゃくだった。


 拮抗きっこうしていたいくさは、両王子りょうおうじという一点いってんさかいに、くずれるようにわりへかっていた。



 ミナギはみじかいきく。


 かたのこおもさは、いくさわりによってえるものではない。


 むしろ、わったからこそ明確めいかくになる。


 うしなわれたもののりょう


 まもれたものの限界げんかい


 そして、これからけるべき現実げんじつ


「まずは被害ひがい確認かくにん、そしてのこったもの安全あんぜん確保かくほする」


 その言葉ことば命令めいれいでありながら、同時どうじ宣言せんげんでもあった。


 いくさわりにのこるのは勝敗しょうはいではなく、整理せいりされるべき現実げんじつだけだとげるように。



 もりには、おとも、怒号どごうえていた。


 のこるのはにおいと、げたくさけむり


 らされたつち生々(なまなま)しい湿しめだけが、いくさ記憶きおく保持ほじしている。



 その静寂せいじゃくなか甲高かんだかおとそらいた。


「キィ――ッ」


 するどく、かわいたこえ


 ひとのものではないひびきが、戦場せんじょう上空じょうくうるようにはしる。


 ミナギは反射的はんしゃてき視線しせんげる。


 もりうえそらうすあおなかを、ひとつのかげすべるようにけていた。


 ムスビだった。


 つばさひかりけてれ、かぜるたびにほそ軌跡きせきえがく。


「キィ――ッ」


 ふたたひびこえは、まるでなにかをげ、なにかをうながすような、はなされたおとだった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ