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アマガタリ  作者: ひよりの
第一章
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覚悟


 戦端せんたんは、おといてひらかれた。


 もり静寂せいじゃくは、一瞬いっしゅんくだける。


 そこへ、ひと意思いし暴力ぼうりょく一気いっきながむ。



 下草したくさみつぶされるおとひびく。


 そのおとが、はくさだまらぬみゃくのように、ばらばらにつづけた。


 たてがぶつかる。


 かわいた破裂音はれつおんがはじけ、その残響ざんきょうおくへとしみんでいく。


 つぎ瞬間しゅんかんやりまれた。


 空間くうかんくようにされ、空気くうきひくくうなる。


 それらすべてがかさなり、けずられ、ざりいながら――


 戦場せんじょう空気くうきそのものをにごらせていく。


 その合間あいまにだけ、ひとこえちる。


 さけびは言葉ことばにならない。


 のどおくからかれたようなおととなってあふれし、もりまれてえる。


 たおれるものおもみが地面じめんつたわるたび、もりはわずかにふるえた。


 まるでべつもののように。


 

 せい境目さかいめは、はっきりしたせんではなかった。


 ただらぎとしてそこにあり、えた瞬間しゅんかんなにわるのかさえ、だれにもからないほど曖昧あいまいだった。



 ミナギは、その中心ちゅうしんっていた。


 指示しじこえしている。


 だがそのこえは、おおきなながれの表面ひょうめんはじかれ、おくまではとどかない。


 かえってくるのは反応はんのうではなく、戦場せんじょうそのもののうねりだった。



 思考しこうまらない。


 まえへ。


 つぎへ。


 被害ひがいをどうらすか、それだけにかってうごつづける。



 配置はいちえる。


 退路たいろ確保かくほする。


 混乱こんらんを一かしょしとどめる。


 どれもただしい判断はんだんだった。


 それでも全体ぜんたいながれのまえでは、ほそえだ水流すいりゅうあらがっているようなものだった。 



 いくさは、最初さいしょから一人ひとり意志いしれるかたちではできていない。


 それはひとあつまりというより、すでにすすはじめた「現象げんしょう」にちかい。


 タヅマの言葉ことばが、とおくではなく内側うちがわからひびく。 


一度いちどひろがったいくさは、理屈りくつではせませぬ――』


 はただの比喩ひゆではない。


 ひろがりつづけ、まわりをき込み、めようとするちからさえすりらしていくものだ。


 いくさは、まらないのではない。


 めるための手段しゅだんそのものを、すこしずつうばっていく。



 ミナギのむねにあるのはいかりではなかった。


 えたおもさだった。


 えらべるみちっていく感覚かんかく


 ただしさがけずられていく感覚かんかく


 どちらも戦場せんじょうはやさにいつかない。


 まもるためになにかをけずらなければならない。


 けずることで、べつなにかをれなければならない。


 すくおうとすれば、べつ場所ばしょくずれる。


 ただそうとすれば、またべつ場所ばしょきずうつる。


 その矛盾むじゅんなかで、ミナギはつづけていた。



 いくさめられない。


 それはけをみとめる言葉ことばではなく、このそのものがかたちだった。


 それでもいま自分じぶんにできることはある。


 はじまってしまったいくさなかで、すこしでも味方みかた被害ひがいらすこと。


 くずれゆくながれのなかで、わずかでも秩序ちつじょたもつこと。


 ながれにまれながら、なにまもり、どこまで崩壊ほうかいれるかをえらつづけること。


 それだけが、ミナギの覚悟かくごだった。



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