表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
アマガタリ  作者: ひよりの
第一章
PR
21/46

戦の炎


 みやそとでは、ごとに景色けしき輪郭りんかくわっていた。


 かつてしずかなだった場所ばしょにはくいまれ、ふとなわ幾重いくえにもめぐらされている。


 それは境界きょうかいであり、同時どうじ意思いしかたちでもあった。


 ひとかれたせんが、土地とち意味いみえていく。


 たおされるたびにかわいたおとて、たおれたみきはすぐにはこばれ、はりへ、さくへ、たて骨格こっかくへと姿すがたえていく。


 もりすこしずつ、いくさ構造物こうぞうぶつへとえられていた。


 鍛冶場かじばではつちおと途切とぎれない。


 火花ひばなとともにちのぼるけむりは、そらえず、どこかにしずんでいくようだった。


 へいたちはれつをなし、歩幅ほはばそろえ、やりかまえる。


 訓練くんれんかえしをえ、身体からだみついた習慣しゅうかんとなっている。


 めいじられずともうごくことが、日常にちじょうになっていた。



 周辺しゅうへん村々(むらむら)から若者わかものえていく。


 わかれは言葉ことばにならず、のこされたものふたたはたけもどる。


 それでもつきは以前いぜんよりおもい。


 火矢ひや油壺あぶらつぼはすでに整然せいぜんまれ、まだ使つかわれていないにもかかわらず、える未来みらいだけを内包ないほうしている。



 そのながれのなかで、ミナギはっていた。


 すべてのおとがひとつの方向ほうこう収束しゅうそくしているはずなのに、わずかな齟齬そごだけがのこつづける。


 その違和いわは、むねおくしずつづけていた。



 

 ヤツガシラは、きわめて微量びりょうでもいのちうばどくであった。


 同時どうじに、慎重しんちょうあつかえば鎮痛ちんつう保温ほおんにももちいられるくすりでもある。


 どくくすり境界きょうかい極端きょくたんうすい。


 ゆえにみや薬庫やっこ厳重げんじゅう管理かんりされ、帳面ちょうめんかぎ薬師やくしによって制御せいぎょされていた。



 ミナギは薬師やくしトグサのもとおとずれる。


 トグサは慎重しんちょう言葉ことばえらびながらこたえた。


帳面上ちょうめんじょう記録きろくでは、しはございません」


 すこしの沈黙ちんもくのちつづける。


「ただし……薬庫やっこ警備けいび担当たんとうしていたへい一名いちめい父君ちちぎみ御逝去ごせいきょ前夜ぜんやより姿すがたし、現在げんざい行方ゆくえれません」


 その事実じじつが、しずかに意味いみえる。


 記録きろくにはない空白くうはく


 現場げんばからえた人間にんげん


 ヤツガシラの所在しょざい証明しょうめいできない。


 だが、偶然ぐうぜんとして片付かたづけるにはせんそろいすぎていた。



 ちち


 ヤツガシラ。


 えたへい


 それでもなお、どの断片だんぺん単独たんどくでは決定打けっていだにならない。


 現状げんじょうでは、隼比古はやひこげることはできない。


 うごけば、疑念ぎねんそのものが政治的せいじてきつみになる。


 それでもミナギのなかでは、結論けつろんだけがしずかにかたまりつつあった。


 ――これは、意図いとされただ。


 だがそれをそと手段しゅだんはない。


 真実しんじつ到達とうたつすることと、真実しんじつ使つかえるかたちにすることは、まったくべついくさである。


 そしていま自分じぶんは、そのどちらにもとどいていない。



 みやそとでは鍛冶かじおとえない。


 てつひびきが、地面じめんおくしずんでいく。


 いくさは、もはや不可逆ふかぎゃく現実げんじつとしてそこにあった。


 それでも、ミナギはそのうごかなかった。


 かぜとおくをとおぎ、かわいた木材もくざいにおいがわずかにじる。


 視界しかいはしで、へいたちがなおもれつととのえ、やりかまえている。


 そのうごきにはまよいがない。


 まよいがないこと自体じたいが、すでにひとつの完成かんせいとして成立せいりつしていた。


 ミナギのむねおくしずんだ違和いわだけが、それにあらがうようにかすかにのこる。


 ――める。


 その言葉ことばは、もはや命令めいれいでも願望がんぼうでもなかった。


 構造こうぞうなかで、かろうじてかたちたも一点いってん抵抗ていこうだった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ