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アマガタリ  作者: ひよりの
第一章
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ささやかな宴


 かたむき、こされた。


 むら中央ちゅうおうちいさながいくつもかれ、ものられる。


 いた川魚かわざかなこうばしいにおい。


 なべでふっくらとえるあわ


 ヤマノイモやカブ、ワサビダイコンを湯気ゆげが、湿しめった夜気やきへゆっくりけていく。


 タラのあわぜ、発酵はっこうさせた醪酒もろみざけわれた。


 うたげぶには、あまりにささやかなものだった。


 だが、それでもかこ人々(ひとびと)かおには、どこかかないねつ宿やどっている。


 だれもが、ミナギをていた。


 だが、だれちかづきすぎようとはしなかった。


 まじな


 そうばれたおとこを、村人むらびとたちはまだはかりかねていた。 


 はらうにはしい。


 だが、無防備むぼうびむかれるには得体えたいれない。


 そのまよいが、かこ距離きょりに、そのままあらわれている。



 ミナギはひと中心ちゅうしんにいた。


 背負せおっていたかごわきき、そのなかからちいさないしたましていく。


 みがかれたあおいし


 くろうすけずられた石片せきへん


 色漆いろうるしかざられた管玉くだたま


 簡素かんそまれたかいほね装飾品そうしょくひん


 ミナギはそれらをかる指先ゆびさきで、らし、ひかりかしてせた。


 しなかかげるたび、表面ひょうめんあかきんのようにまたたき、ちいさなひかり人々(ひとびと)ひとみうつむ。


 村人むらびとたちはおもわずいきんだ。


「これはなんかいだ?」


 年寄としよりのひとりがたずねる。


「タカラガイだ」


 ミナギはおだやかにこたえた。


うみみなみれる。みがくと、もっとひかる」


 そうってかれは、指先ゆびさきかい曲面きょくめんでる。


 かりがそこをすべり、れたようなつやかんだ。


「これは縞模様しまもよう面白おもしろい」


 ミナギはべつかいげた。


色合いろあいをそろえてならべると、管玉くだたまほねかざりとわせて、面白おもしろ模様もようつくれる」


 ちいさくわらいながらしめすその仕草しぐさには、どこかあそびがある。


 ひときつけることをっているものうごきだった。


 村人むらびとたちはかお見合みあわせながら、すこしずつせばめていく。


 最初さいしょ遠巻とおまきにていただけのおんなたちも、やがて装飾品そうしょくひんった。


 ほねうすけずってつくられたかざりを、へかざしてながめる。


 わかおとこは、くろひか石片せきへん指先ゆびさきれ、そのするどさに見張みはった。


投馬国とうまこくには、こんなものがいくらでもあるのか」


「いくらでも、というほどではないが――」


 ミナギはかたをすくめる。


うみわたらなきゃはいらんものもある。だから価値かちがある」


 その言葉ことばに、周囲しゅういからひく感嘆かんたんれた。



 うみこう。


 むらものたちにとって、それは想像そうぞうそとにある世界せかいだった。


 らめきとかおりがただよよる広場ひろばで、ミナギの飄々(ひょうひょう)とした存在感そんざいかんは、村人むらびとたちの緊張きんちょうすこしずつきほぐしていく。


 だれかがさけせばり、たずねられればわらってこたえる。


 その口調くちょうかるい。


 だがけっして相手あいてあなどらず、自然しぜん中心ちゅうしん居場所いばしょつくっていた。



 アサは、そのすこそとにいた。


 かりはとどいている。


 だが、なかにははいっていなかった。


 わん両手りょうてち、おなじくでできたさじしずかにあわくちはこぶ。


 あたたかな湯気ゆげほおでても、彼女かのじょ表情ひょうじょうはあまりわらない。


 けれど、視線しせんだけは、時々(ときどき)ミナギのほういていた。


 人々(ひとびと)かこまれながらわら横顔よこがお


 うつしたひとみ


 しなやかにうご指先ゆびさき


 らない土地とちにおいをまとった、その存在そんざい


 むらだれともちがう。


 まるで、べつ世界せかいからたもののようにえた。


 そのときだった。


 ふいに、ミナギがかおげる。


 また、視線しせんった。


 アサのむねが、どくりとる。


 ミナギはなにわない。


 ただ、わずかにほそめた。


 こうで、その口元くちもとがほんのすこしだけわらったようにえた。


 アサは咄嗟とっさ視線しせんとす。


 だがみみおくでは、まだ鼓動こどうつづいていた。


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